- アカウントは作った。数本投稿もした。でも「このまま続けて意味があるのか」わからなくなってきた運用担当者の方
- 投稿がだんだん止まりがちで、再生数も一緒に落ちてきている気がする方
- TikTok運用を「何を・どの頻度で・何人で・どう改善するか」という実務レベルで知りたい方
いきなり、うちのいちばんカッコ悪い数字から見せます。
2025年、弊社のTikTokアカウント(@beem_official)は月17〜24本投稿していた時期、1本あたり平均50〜84万回再生されていました。ところが投稿が月7本に落ちた10月の平均再生数は7.6万回。ピーク時のざっくり10分の1です。
累計4.27億再生のアカウントですよ? フォロワーもいる。バズの型も持っている。それでも、手を止めたらこれです。集計していて、正直ちょっと青ざめました。
TikTok運用のノウハウ記事はネットに山ほどあります。「冒頭2秒が大事」「トレンド音源を使え」——どれも間違ってはいません。でも、「実際、どのくらいの頻度で、何人で、何時間かけて回せば、どんな数字になるのか」を実数で書いた記事は、探しても出てきませんでした。みんな、いちばん聞きたいところを書いてくれない。
なのでこの記事では、うちの582本・4.27億再生のインサイトデータと、どん底から立て直した2025年の実話を使って、TikTok運用の「回し方」を全部書きます。
豊田優人
目次
TikTok運用とは?「投稿すること」ではなく「サイクルを回すこと」
TikTok運用とは、企業や個人がTikTokアカウントを目的達成(認知・販促・採用など)のために継続的に動かしていくこと——と言うと教科書っぽいのですが、5年半やってきた身として定義し直すと、こうです。
TikTok運用=「企画 → 制作 → 投稿 → 分析 → 改善」のサイクルを、止めずに回し続けること。
ポイントは「止めずに」の部分です。1本のバズは、正直、運でも出ます。でも成果は1本のバズではなく、サイクルが回り続けている状態からしか生まれません。これはきれいごとではなく、後でお見せするデータがそう言っています。
サイクルの中身は、この5工程です。
| 工程 | やること | うちの実働時間(1本あたり) |
|---|---|---|
| ① 企画 | トレンド調査・ネタ出し・台本化 | 約3時間 |
| ② 撮影 | 演者を集めて撮る | 約20分 |
| ③ 編集 | カット・テロップ・音源合わせ | 約45分 |
| ④ 投稿 | 時間帯を決めて投稿 | 数分 |
| ⑤ 分析 | 数字を見て次の企画に反映 | 週次でまとめて |
「え、企画に3時間?」と思った方、その感覚を覚えておいてください。うちは撮影と編集の合計の3倍近い時間を、企画に使っています。この配分こそがTikTok運用の本体だという話を、この記事を通してしていきます。
【独自データ】582本でわかった、運用の質を決める4つの相関
うちのアカウントの全582本(2020年9月〜2026年4月、累計4億2,745万回再生)のインサイトを集計して、「運用のやり方」と「伸び」の関係を調べました。
豊田優人
相関1:投稿頻度が落ちると、1本あたりの再生数まで落ちる
これが冒頭の話です。2025年の月別データを全部並べます。
| 月 | 投稿本数 | 1本あたり平均再生 |
|---|---|---|
| 2025年1月 | 17本 | 68.5万回 |
| 2月 | 14本 | 31.4万回 |
| 3月 | 17本 | 67.4万回 |
| 4月 | 24本 | 84.2万回 |
| 5月 | 19本 | 54.4万回 |
| 6月 | 9本 | 38.9万回 |
| 7月 | 8本 | 28.0万回 |
| 8月 | 6本 | 22.8万回 |
| 9月 | 5本 | 18.0万回 |
| 10月 | 7本 | 7.6万回 |
| 11月 | 6本 | 12.7万回 |
| 12月 | 1本 | 8.3万回 |
月14本以上出していた上半期は1本あたり31〜84万回。月1桁に落ちた下半期は、ほぼ一貫して右肩下がりです。「本数が減る」と「1本の威力まで減る」が同時に起きる。
理由はシンプルで、投稿が減ると①アルゴリズムに渡す打席数が減ってアカウントの鮮度が落ち、②企画→分析→改善のサイクル自体が回らなくなって動画の質も落ちるから、だと考えています。総投稿582本のアカウントですらこうなのです。「まとめて作って月2〜3本ずつ出そう」という運用計画を立てている方は、この表を思い出してください。
相関2:バズる動画は、バズる前から「エンゲージメント率」が違う
再生数は結果指標で、運用中にコントロールできません。では何を見るか。うちの全データで、100万再生を超えた動画とそうでない動画のエンゲージメント率(いいね+コメント+シェア+保存÷再生数。以下ER)を比べると——
- 100万再生超え(124本)の平均ER:3.92%
- 10万再生未満の動画の平均ER:1.58%
2.5倍差です。TikTokのアルゴリズムは「視聴者の反応が良い動画」を次のおすすめ枠に押し出す仕組みなので、ERはバズの先行指標として機能します。
つまり週次の分析で見るべきは、再生数ではなくERです。再生数が伸びていなくてもERが3%を超えている動画は「型が当たっている」ので、同じ型で数を打つ。ERが1%台の動画は、再生されても次につながらないので型を変える。うちの分析会議は、ほぼこの判断だけをしています。
相関3:【通説への反論】「保存率」はバズと関係なかった
SNS運用界隈では「保存される動画が伸びる」とよく言われます。うちも信じていました。で、実際に集計したら——
- 100万再生超え動画の平均保存率:0.048%
- 10万再生未満の動画の平均保存率:0.048%
まったく同じでした。小数点3桁まで同じで、集計ミスかと思って3回計算し直したくらいです。
考えてみれば理屈は通っていて、「保存」が効くのはレシピ・ノウハウ系のような“あとで見返す”コンテンツです。うちのようなエンタメ・共感系は、その場で笑って、いいねして、コメントして終わり。保存する理由がありません。つまり「保存を狙え」はジャンル依存の話であって、普遍のセオリーではない。エンタメ系・あるある系で運用している方は、保存数とにらめっこする時間を企画に回したほうがいいです。
相関4:「ノリで撮った動画」と「台本を書いた動画」で再生数が1.8倍違う
582本をTikTokのジャンル分類で見ると、台本を書き込んだコント(Scripted Comedy・28本)は平均130.5万回再生。台本の緩い通常のコメディ投稿(334本)は平均71.6万回。1.8倍差です。
これが、うちが1本の企画に3時間かける理由です。「TikTokはゆるい動画が受ける」というイメージがありますが、正確には「ゆるく見える、作り込まれた動画」が受けます。セリフの言い回し、オチまでの秒数、どこで画面が切り替わるか。15〜30秒の動画は、尺が短いぶん設計の粗が全部出ます。
週次の運用サイクルの回し方(うちの実際のルーティン)
データの話をしたので、次は「で、実際どう回すの?」です。うちの1週間は、だいたいこうなっています。
工数を合計すると、1本あたり約4時間、うち3時間が企画です。週5本ペースなら週20時間。これを、うちは社長(私)と役員2人の3人で回しています。専任チームはありません。役員が出演して、私も踊ります(正確には、横に移動します。後述)。
豊田優人
企画を量産する仕組み——「先回り」がすべて
運用が続かない理由の第1位は、間違いなくネタ切れです。そして、ネタ切れするチームとしないチームの差は、才能ではなく仕組みです。うちの仕組みは2階建てになっています。
1階:コンテンツデータベースで「型」を資産化する
うちは投稿した全動画の実績(再生数・ER・企画の型・音源・尺)をデータベース化していて、企画会議はまずここから始まります。「あるあるネタ×社長出演×30秒以内はERが落ちたことがない」というような自社の勝ちパターンが蓄積されているので、ゼロからネタを考えることがほぼありません。
過去の動画は、投稿した瞬間に“終わった仕事”ではなく“次の企画の部品”になる。これが1階です。
2階:トレンドの「後追い」ではなく「先回り」
多くのアカウントは、トレンドが爆発してから乗ろうとします。でもトレンドの多くは、実は予測できるのです。新作アニメ・映画の公開日、新曲のリリース、季節イベント——話題化する日付が、もう決まっているものがたくさんある。
波が来てからボードを漕ぎ出すのではなく、波が来る場所で先に浮いておく。この「先回り」は、次の章の立て直しの話でそのまま主役になります。
【実録】平均23万再生まで沈んだアカウントを、3ヶ月で立て直した話
ここからが、この記事でいちばん書きたかった部分です。運用ノウハウの記事は世の中にたくさんありますが、「伸びなくなったアカウントをどう立て直すか」を実数付きで書いた記事は見たことがありません。うちには、その実データがあります。なにせ実際に沈んだので。
どれだけ沈んでいたか
2021年に1本平均127.7万回まで行ったうちのアカウントは、そこからじわじわ落ちて、2024年には1本平均23.1万回・再生数の中央値14.5万回・平均ER1.38%まで沈みました。ピークの5分の1以下です。
原因は、いま振り返れば明白で、同じ型を擦り続けたことでした。2021年に当てた型が強すぎて、離れられなかった。数字が落ちても「たまたま」「次は当たる」と思いたがる。心当たりのある運用担当者の方、いますよね。あれ、本当に危ないです。
2025年3月、何を変えたか——「毒上司」シリーズの設計
2025年3月、企画を根本から作り直しました。生まれたのが「毒上司」シリーズです。「こんな毒上司いやだ」という職場あるあるを、社長の私と役員2人がコミカルな横移動ダンスで演じる——それだけの動画です。ただし設計は、5つの掛け算でできています。
- シーズナリティ:3〜4月は就職・転職・新生活の季節。「上司」というテーマが1年でいちばん共感されるタイミングに合わせて開始
- トレンド音源の先回り:当時伸び始めていたINZMの音源に相乗り。前章の「先回り」の実践です
- あるある共感:TikTokで昔から強い「あるあるネタ」の文法に乗せる
- 型(フォーマット)の固定:社長と役員2人の横移動ダンス、という画を毎回固定。3本見たら「あ、いつものやつだ」と認識される状態を作る
- 増産:月17〜24本に投稿を増やし、シリーズとして約90本を集中投下
おわかりでしょうか。新しいことは、何ひとつやっていません。シーズナリティ、トレンド先回り、あるある、型、頻度——この記事でここまで書いてきた部品を、全部同時に組み合わせただけです。
結果(全部実測値です)
| 指標 | 2024年(低迷期) | シリーズ開始後3ヶ月(2025年3〜5月) |
|---|---|---|
| 投稿本数 | 46本(年間) | 60本(3ヶ月) |
| 再生数の中央値 | 14.5万回 | 54.5万回(3.7倍) |
| 平均ER | 1.38% | 3.25%(2.4倍) |
INZM音源系の27本に絞ると平均67.6万回・ER3.62%。シリーズ最高は190万回再生です。V字回復、と言っていい数字だと思います。
ここで注目していただきたいのは中央値です。「1本の特大バズで平均を持ち上げた」のではなく、「打った球の真ん中が3.7倍になった」。つまり型の再設計が効いたのであって、宝くじが当たったのではない。再現性があるのはこちらです。
運用体制と費用——自社で回すか、代行に任せるか
ここまで読んで「理屈はわかった。で、うちでできるのか?」となった方のために、判断材料を並べます。
自社運用のコスト(うちの実測)
- 人員:3人(企画・出演・撮影・編集を分担。専任なし)
- 工数:1本あたり約4時間(企画3時間+撮影20分+編集45分)
- 機材:スマホ+三脚+ピンマイク程度。初期数万円
月20本出すなら月80時間。3人で割れば1人あたり月27時間——1日1時間ちょっとです。数字にすると「できなくはない」ラインですよね。実際、できなくはないです。続けられるかどうかだけが問題で、続かなかった月に何が起きるかは、冒頭の表の通りです。
運用代行の相場と、判断軸
外部に任せる場合、TikTok運用代行の相場は月10万〜50万円程度が目安です※1。企画〜制作〜分析まで丸ごとで、社内工数はほぼゼロになります。判断軸はシンプルにこれだけです。
- 「最低でも週2〜3本を、社内の誰かが、1年続けられる」と言い切れる → 自社運用でいけます。この記事の型を全部持っていってください
- 言い切れない → 中途半端に始めて3ヶ月で止まるのがいちばんもったいないパターン。外部を混ぜる設計(編集だけ外注、企画だけ壁打ち、丸ごと代行)を検討する価値があります。詳しくは「SNS運用代行の費用相場と失敗しない選び方」(近日公開)へ
豊田優人
週次で見るKPI——再生数を追いかけない
分析の話を最後にまとめます。TikTok運用で数字を見る目的は「一喜一憂」ではなく「次の企画の判断」です。うちが週次で見るのは、実質2つだけ。
| 優先度 | 指標 | 判断 |
|---|---|---|
| ★★★ | ER(エンゲージメント率) | 3%超え→型が当たっている。同じ型で数を打つ。1%台→型を変える |
| ★★ | 投稿本数(自分たちの) | 下限を割っていないか。割っていたら数字より先に体制を直す |
| ★ | 再生数・フォロワー | 月次で眺める程度。日次で見ない |
「再生数を日次で見ない」は意外に思われるのですが、再生数は投稿から数日〜数週間伸び続けることがあるうえ、運用側がコントロールできる変数ではないからです。コントロールできるのは企画の質(→ERに出る)と頻度(→自分たちの行動)だけ。コントロールできる数字だけを毎週見る。これが精神衛生上も、成果上も、いちばん効きます。
TikTok運用のよくある質問
うちのデータでは、月14本以上と月1桁で1本あたりの再生数に数倍の差が出ました。とはいえ、いきなり週4本は無理なので、「忙しい週でも週2本」を下限に設計するのが現実的です。大事なのは平均より下限です。
やめる前に、ERを見てください。ERが3%前後あるなら型は当たっていて、露出が追いついていないだけの可能性が高い。1%台なら型を変えるサインです。うちも2024年に平均23万再生まで沈んで、型の再設計で3ヶ月で立て直しました(5章参照)。「続けるか、やめるか」の前に「変えるか」の選択肢があります。
うちは社長(私)と役員2人が出演し続けています。人が固定されると「いつものあの人たち」という認識が生まれ、型の一部として機能します。ただし出演者本人の同意と、退職時の動画の取り扱いルールだけは先に決めておいてください。
TikTokの国内ユーザーは4,200万人を超えていて※2、市場としてはむしろ拡大中です。そしてTikTokはフォロワー数より動画単体の評価で露出が決まるため、後発の不利が小さいプラットフォームです。遅いかどうかより「続く体制を作れるか」で判断してください。
使えます。むしろオーガニックで反応が実証された動画を広告に転用するのが最も費用対効果の高いやり方で、うちは採用領域でこの方法により広告費20万円で7名採用という実績が出ています。詳しくはTikTok採用の完全ガイドで。
まとめ:TikTok運用は「才能のゲーム」ではなく「設計のゲーム」
最後に、この記事の数字を一枚にまとめます。
- 投稿頻度が落ちると1本あたりの再生数まで落ちる(月24本→84万回、月7本→7.6万回)
- バズの先行指標はER。3.92% vs 1.58%の差が、バズる前からついている
- 「保存を狙え」はうちのデータでは無相関だった。通説より、自分のデータ
- 台本を書いた動画は、書かない動画の1.8倍再生される。勝負は撮影前に決まっている
- 沈んだら「季節×トレンド先回り×共感×型×頻度」で再設計する。うちは3ヶ月で中央値3.7倍に戻した
- 体制は3人・1本4時間から回る。ただし「下限」を決めて守れるかがすべて
TikTok運用は、センスのある会社が勝つゲームではありません。サイクルを設計して、止めなかった会社が勝つゲームです。うちの582本ぶんの試行錯誤が、あなたのアカウントの遠回りを減らせたらうれしいです。
「体制が組めるか自信がない」「立て直しの設計を壁打ちしたい」——そんなときは、お気軽にご相談ください。あなたの会社の状況を伺ったうえで、自社運用でいけるなら、そう言います。
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この記事を書いた人

豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役
TikTokフォロワー数48万人の自社アカウント群を運用し、100万再生超え動画181本・累計3.79億回再生を達成。会社アカウントの企画を自ら担当し、個人TikTokアカウントもフォロワー12万人。株式会社BEEMは、SNS採用のみで採用したメンバーで構成される「TikTok採用の実践企業」として、採用に特化したTikTok運用支援を提供している。
出典
- TikTok運用代行サービスの料金相場(月額10万〜50万円が目安)。※一次統計は存在せず、各社比較サイト・ベンダー公表値に基づく参考値 https://azu-rite.co.jp/clumn/sns-recruitment-agency
- TikTok社発表「TikTok、日本国内のMAUが4,200万を突破」2025年11月27日(自社調べ。TikTokおよびTikTok Liteの月間アクティブユーザー数、重複を除く) https://newsroom.tiktok.com/tiktok-mau-4200?lang=ja-JP