TikTok企画の立て方|ネタより先に心理を決める順番と企画シート【100万再生137本の会社が公開】

TikTok企画の立て方

最終更新日:2026年10月13日
執筆:株式会社BEEM(BeeMedia編集部)/監修:豊田優人(株式会社BEEM 代表取締役)

この記事はこんな方に向けて書いています
  • 会社のTikTokを任されたものの、毎週の企画会議でネタが出ずに黙り込んでいるマーケ・広報担当者の方
  • 他社の伸びている動画を真似して出してみたけれど、なぜか自社だと伸びない方
  • 再生はそこそこ回るのに、問い合わせや応募に1件もつながらない方
  • 企画を企画書にして上長に通さないといけない方
先に、この記事の結論をお伝えします

TikTokの企画は、ネタから考えると詰みます。ネタから考えると、どうしても「どこかで見たことのある動画」に寄っていくからです。

弊社(株式会社BEEM)は順番を逆にしています。「狙う心理 → ネタ → 台本」。約100項目(97項目)の心理要素リストを持っていて、企画を出す前に「この1本でどの心理を動かすか」を先に当てはめ、そのあとでネタを探し、最後に台本を書きます。さらにその手前で、「いつ・誰に届けて・見た後どこへ送るか」という前提条件を決めておく。自社アカウントで100万再生を超える動画を137本(累計4.61億再生)出してきた弊社が、いま企画を組むときの順番です。

5章に業種別の企画ネタ例を9個、8章に記入例2つ付きの企画シートを置きました。近い業種の例を1つ選んで、シートを1枚埋めれば、企画が1本できます。

「4月に何か仕掛ける」と決めてから、企画を探しにいった

2025年3月のことです。弊社の代表・豊田は、TikTokのおすすめ(レコメンド)の画面を見ていました。なんとなく眺めていたわけではありません。先に「4月に何か仕掛ける」と決めていて、新しいコンテンツを作る目的で見ていたんです。

そこに、看護師の女性が上司役とやりとりする動画が流れてきました。

豊田優人

看護師のとりちゃんの「OTBN」からヒントを得ました。「4月に何か仕掛ける」と前提を決めて、新しいコンテンツを作るためにレコメンドを見ていた最中に、看護師の女性が上司役とやりとりする動画が流れてきた。それが毒上司と「やばい新人」のフォーマットの原型です。

毒上司シリーズを見たことがない方のために、どんな動画かだけ先に書いておきます。職場の「毒上司」と部下のやりとりを、上司役と部下役の掛け合いで見せる動画です。主役を新人の側に置いた「やばい新人」シリーズもあります。撮り方は1発撮りで、NGも使い切る。

1本目の投稿は2025年3月26日。弊社の設立日と同じ日です。

ここで大事なのは、豊田が投稿したあとではなく、企画の段階で「これはいける」と確信していたことです。

豊田優人

4月は、あの形じゃなくても、ああいうコンテンツが伸びるのは絶対なんです。しかもフォーマットが単純で、演技力がなくても成立する。だったら絶対に真似される、真似されるならトレンドになる。そこまで企画の時点で見えていました。

「後からなら何とでも言える」と思った方もいるかもしれません。でも、出す前に何を決めていたのかを1つずつ並べてみると、時期も、話題も、見る人の立場も、音源も、全部が撮る前に決まっていたことです。

この記事では、その「出す前の設計」を、企業アカウントの担当者が自社で再現できる手順に分解してお渡しします。撮影や編集の話はほとんどしません。企画の立て方、それだけです。

この記事でわかること
  • ネタから考えると企画が詰む理由と、弊社が使っている「狙う心理→ネタ→台本」の順番
  • 約100項目の心理要素リストから、企業アカウントの企画に効くものだけを選んだ10個と当てはめ方
  • BtoB・店舗・採用の業種別に、「狙う心理→ネタ→冒頭の一言」までそろえた企画ネタ例9個
  • 企画を出す前に必ず確認している7つのチェック項目(毒上司シリーズでの当てはめ付き)
  • 明日の企画会議でそのまま埋められる企画シート(採用・販促の記入例2つ)と、社内の企画書として通すときの書き方
スマートフォンとペンを置いた、開いたノート
イメージ(写真:photoAC)

TikTokの「企画」とは?撮影の前に決めることと、よくある誤解

企画会議で「何かネタない?」と聞いて、全員がスマホを見始める。しばらくして誰かが「……猫とか?」と言い、また沈黙が戻ってくる。あの30分に心当たりがあるなら、たぶん「企画=ネタ出し」だと思って会議をしています。

この記事でいうTikTokの企画は、ネタ出しより広い意味です。撮影に入る前に、次の4つが決まっている状態を「企画ができた」と呼びます。

決めること 中身
①いつ・誰に どの時期に出して、誰のおすすめ欄に届けるか
②どの心理を動かすか 見た人に何を感じさせるか(笑う・自分ごとにする・誰かに話したくなる、など)
③何を撮るか ①と②を満たすネタと、最低限の台本
④見た後どこへ送るか プロフィール・ホームページ・求人媒体・問い合わせのどこに行ってほしいか

ネタ(③)は4つのうちの1つにすぎません。しかも、弊社の順番では3番目です。会議で黙ってしまうのは、担当者のセンスの問題ではなく、①と②が決まっていないのに③から考え始めているからかもしれません。

企画についての、よくある誤解

豊田に話を聞いていて、世間でよく言われていることと、弊社の考えがはっきり分かれた点を並べます。

よくある考え方 弊社の考え
バズるかどうかは運 「バズるべくしてバズった」。時期・進行中の話題・見る人の立場・音源まで、出す前に設計できる
トレンド=TikTokの中で流行っている動画 豊田の定義は「トレンドとは今この瞬間に世の中の注目が集まっているもの」。4月なら新社会人、12月ならクリスマスのように、先に予測できる
作り込むほど良い動画になる 作り込みすぎると「作られた感」が出て伸びない
見た目のいい人をキャスティングすれば差別化できる 今はステマっぽく見られる。「運用が入っているな」と見透かされる
伸びている他社の動画をもとに企画すればいい 既存の動画をもとにすると、同じような動画ばかりが増える。伸びない会社の共通点そのもの

4行目は、企画に自信がないときほど頼りたくなる手です。豊田の言葉はかなりはっきりしていました。

豊田優人

キャスティングして美女を出す差別化は、新しくもないですし、運用が入っているなと見透かされます。

最後の行は2章で詳しく書きます。ここだけ先に言っておくと、「伸びている動画を探してネタにする」は、企画の出発点としてはいちばん危ないです。

なお、撮影・編集の具体的な手順は「TikTok動画の作り方|企画・撮影・編集・投稿の全工程」に、今のトレンドの調べ方は「TikTokのトレンドは追うべきか?調べ方と判断基準」にまとめています。この記事はその手前、何を撮るかを決めるところだけを扱います。

TikTokのトレンドは追うべきか?136本の実測で「流行曲に乗らなくても伸びた」を公開し、今のトレンドを自分で調べる手順まで渡します TikTokのトレンドは追うべきか?136本の実測で「流行曲に乗らなくても伸びた」を公開し、今のトレンドを自分で調べる手順まで渡します TikTok動画の作り方 TikTok動画の作り方|100万再生超え137本・累計4.61億再生の会社が、企画・撮影・編集・投稿の全工程を実データで公開します
要するに

企画=ネタ出しではありません。いつ・誰に/どの心理を/何を撮って/どこへ送るかの4つが決まって、はじめて企画です。

なぜ「ネタから考える」と企画が詰むのか

企画会議の前の晩。TikTokを開いて「何か使えるネタはないか」とスクロールして1時間。気づけば他社の伸びている動画を10本保存していて、翌朝の会議で「これ、うちでもやりませんか」と言う。

……身に覚えはありませんか? 責めているわけではありません。ただ、このやり方には落とし穴が2つあります。

落とし穴1:みんなが同じやり方で、同じ動画を作っている

豊田に「続かない・伸びない会社の共通点」を聞いたとき、最初に出てきたのがこれでした。

  • 全員が同じ戦略・同じやり方を取っている
  • 既存の動画をもとに運用するので、同じコンテンツばかり増える(自社運用でも、運用代行に頼んでいても起きる)
  • アカウントが増え、ユーザーが成熟したという市場の変化を分かっていないので、同じコンテンツを出し続ける

ネタから考えると、ネタの供給源は「今伸びている動画」になりがちです。そして、その動画を保存しているのは、あなたの会社だけとは限りません。

落とし穴2:見たことのある動画は、2秒で飛ばされる

もう1つは、見る側の変化です。豊田はこの1年の変化として「ユーザーが育った」ことを挙げています。

少しでも見たことのあるスタイルだと、見る人は無意識にこの動画のこの後を予測して、スクロールする。あなた自身も、きっと心当たりがあるはずです。「あ、このパターンね」と思った瞬間、親指はもう動いています。

豊田が投稿後にいちばん重視している数字は、再生数ではなく総再生時間です。

豊田優人

とりあえず時間を食べさせることが1番大事です。TikTokは広告で稼いでいるので、ユーザーの数と滞在時間が担保されないと広告の成果が落ちる。だったら、ユーザーの時間を使わせてくれるクリエイターやコンテンツを優遇するはずだ、と逆算しています。

冒頭のフックも、この数字から見ています。「初めの2秒で離脱されたら、時間を食わせられない」。つまり、「どこかで見たことがある」と思われた時点で、冒頭2秒で負けが決まる。編集部の見立てでは、ネタから考える企画ほど、この負け方をしやすいと考えています。

じゃあ、何から考えるのか

企画が浮かぶパターンは2つある、というのが豊田の答えでした。

パターン どういうときか
①「使えそう」と思う なんとなく見ているとき
②前提条件をセットして探しにいく 「新しいコンテンツを作りたい」と前提条件をセットして探しているとき。毒上司はこちらで、4月に仕掛けると決めた状態でおすすめ欄を見ていた

ここからは編集部の見立てです。①はいつ起きるかを自分で決められないので、毎週の企画会議では再現しにくい。企業アカウントの担当者が毎週企画を出すなら、頼れるのは②です。

そして②の「前提条件」の中に、弊社は「この1本でどの心理を動かすか」まで入れています。それが次の章です。

要するに

ネタから考えると、他社と同じ動画になり、見たことのある動画は2秒で飛ばされる。だからネタを探す前に、探す条件を決める。

弊社の企画の順番「狙う心理→ネタ→台本」

「心理を先に決める」と聞いて、決めることが1つ増えて面倒くさそう、と思ったかもしれません。でも狙いは逆で、先に1つ決めるぶん、ネタを探す範囲が狭くなるための順番です。

弊社には、企画のときに使う心理要素のリスト(97項目)があります。「好奇心のギャップ」「共感」「社会的証明」といった、人が動画を見続けたり、コメントしたり、誰かに送ったりするときに働く心理を並べたものです。

使い方はシンプルで、企画案を出すとき、先に「どの心理要素を狙うか」を当てはめてから台本を書きます。

順番1
狙う心理を決める

「この1本で、見た人に何を起こしたいか」を心理要素の言葉で決めます。たとえば「最後まで見てほしい」「コメント欄で自分の話をしてほしい」「上司に送ってほしい」。

順番2
その心理が動くネタを探す

狙う心理が決まると、探すネタの条件が一気に絞れます。「なんでもいいから面白いネタ」は、探す範囲が広すぎて見つかりません。「部下側も上司側も自分のことだと思うネタ」なら、どこを見ればいいかが分かります。

順番3
台本を書く

最後に台本です。狙う心理が決まっているので、冒頭で何を言うか、どこで終わるかがブレません。ただし作り込みはしません(6章のSTEP.5)。

リストの中身は一般論。独自なのは「企画の前に置く」使い方

ここは誤解のないように書いておきます。リストに入っている心理要素の定義そのものは、心理学や行動経済学で一般に知られているものです。弊社が発見したものではありません(参考文献は記事末に載せています)。

弊社が独自にやっているのは、約100項目を「企画の前工程」に組み込んでいることのほうです。心理学の本を読んで「なるほど」と思うことは誰にでもできます。弊社はそれを、毎回の企画の最初に当ててからネタを探す順番にしています。

なお、弊社がどの心理要素をよく使うのか、1本の企画でいくつ狙うのかは、代表に確認が取れているのがまだ「企画の前に当てはめる」というところまでです。代わりに次の章で、企業アカウントの企画で使いやすいものを10個選んでお渡しします。

編集部の読み解き:毒上司を心理要素の言葉で見ると

※この枠は代表の発言ではありません。豊田が語った「毒上司がバズった理由」を、編集部が心理要素の言葉に当てはめて読み解いたものです。毒上司の企画時に弊社がどの心理要素を狙ったかは、代表から確認が取れていません。

  • 豊田は「毒上司は、部下は『自分はやばい部下では』、上司は『自分は毒上司では』と見る。上司・部下の両方が自分ごと化して最後まで見る」と説明しています。心理学の言葉に当てはめると、感情移入・共感と、自分に関係のある話だけが耳に入るカクテルパーティー効果に近い働きだと読めます。
  • コメント欄には「うちにもこんなやつがおる」といった、自分の職場に置き換える声が並び、コミュニティのようになったそうです。自分だけが感じていたストレスが「特別じゃない、他にもいる」と確認できる場になった。これは、仲間意識で協力的になる一体感の原則や、参加すると関与が深まるインタラクティブ効果の言葉で説明できます。
  • 冒頭で書いた撮り方のリアルさは、完璧すぎないほうが好感を持たれるプラットフォール効果と重ねて読めます。
要するに

弊社は「狙う心理→ネタ→台本」の順で企画する。心理要素の定義は一般論で、独自なのはそれを企画の最初に当てはめる運用のほう。

企業アカウントの企画に効く心理要素10個(97項目から厳選)

心理学の用語集を開いて、3ページ目でそっと閉じた経験はありませんか? 97項目を全部並べても同じことが起きるだけで、企画は1本も増えません。

ここでは、企業アカウントが「見てもらう→最後まで見てもらう→反応してもらう→信頼してもらう」までの流れで使いやすいものだけを10個選びました。選んだ基準は3つです。

  1. 社員が出演する普通の撮影で使える(大がかりな仕掛けがいらない)
  2. 2章で書いた「総再生時間」と「成果への導線」のどちらかに効く
  3. 使い方を間違えても炎上しにくい
効く場面 心理要素 一般的な意味 自社の企画に当てはめると(例)
冒頭で止める ①好奇心のギャップ 「知っていること」と「知りたいこと」の隙間を感じると、埋めたくなる 冒頭で「この現場でいちばん高い道具、いくらだと思います?」と聞き、答えは最後に出す
②パターン・インタラプト 予測できる流れを急に崩すと、注意が引き戻される 丁寧な会社紹介の途中で、社長がいきなり素の口調に戻る
③カクテルパーティー効果 雑音の中でも、自分に関係のある話は耳に入る 1秒目で「入社1年目の人へ」「月末に請求書と戦っている人へ」と呼びかける
最後まで見てもらう ④感情移入・共感 他人の状況に自分を重ねると、深く感情が動く 上司側と部下側の両方が出てくる職場のワンシーン。どちらの立場の人も自分の話として見られるようにする
⑤ツァイガルニク効果 終わったことより、途中で止まったことのほうが記憶に残る 「新人の最初の1週間」をシリーズにして、1本ごとに次が気になるところで切る
反応してもらう ⑥インタラクティブ効果 やりとりに参加すると、受け身のときより関心が深まる 「あなたの職場ならどうする?」で終わり、集まったコメントを次の動画のテーマにする
⑦社会的通貨 人は「誰かに話したくなる情報」を共有したくなる 業界の中の人しか知らない豆知識や裏側を、1本1つだけ出す
思い出してもらう ⑧トリガー 日常のきっかけで、特定の情報を思い出す 月曜の朝・給料日・4月の入社式など、見る人の生活に必ず来る場面にネタを置く
信頼してもらう ⑨自己開示効果 弱みや本音を打ち明けると、相手も心を開き信頼が深まる 社長や役員が、採用や経営で失敗した話を自分の言葉で話す
⑩プラットフォール効果 有能な人がたまに見せる失敗で、かえって好感が上がる きちんとした説明動画に、言い間違えたNGカットをあえて残す

※「一般的な意味」は心理学・行動経済学で一般に知られている定義を要約したものです(参考文献は記事末)。「当てはめ例」は読者の方が自社に置き換えるための例で、弊社の特定の動画で使ったものではありません。

表の使い方:まず「主役の心理」を1つだけ決める

初めてこの表を使うなら、1本の企画で主役にする心理は1つにしてください。これは編集部からの提案です。あれもこれも狙うと、冒頭で何を言うかが決まらなくなります。

選び方は、今のアカウントが困っていることから逆算するのがいちばん早いです。

今の困りごと 主役にする心理(表の番号)
冒頭で飛ばされる(平均視聴時間が短い) ①②③
途中で離脱される ④⑤
見られているのにコメントが来ない ⑥⑦
時期ものの企画が当たらない ⑧
再生はされるのに問い合わせ・応募が来ない ⑨⑩(9章もあわせて)

⑥のインタラクティブ効果は、豊田が実際にやっていた循環ともつながります。毒上司シリーズでは、コメントをそのまま次の動画のテーマに転用していました。豊田いわく、①テーマを考える手間が省ける ②転用されたコメントの投稿者本人が嬉しい ③さらにコメントが増える、という循環になっていたそうです。ネタが出ない担当者ほど、コメント欄を「ネタの在庫」として見てください。

あえて表から外した心理要素があります

97項目の中には、恐怖や不安をあおる「恐怖訴求」、怒りをかき立てる「怒り・憤慨の効果」、最初に好条件で合意させて後から条件を変える「ローボール・テクニック」なども入っています。どれも反応は取りやすいのですが、企業アカウントで使うと炎上や景品表示法上のリスクにつながりやすいので、この記事では外しました。使うなら、表現を社内の法務・広報と必ず確認してください。

「で、この10個をうちの業種に当てはめると、何を撮ればいいの?」——その答えを、次の章に9個並べました。

要するに

97項目を覚える必要はありません。今の困りごとに合う心理を1つ選び、それが動くネタを探す。まずはこの10個で足ります。

業種別のTikTok企画ネタ例9個(狙う心理→ネタ→冒頭の一言)

理屈は分かった。心理要素も10個に絞れた。それでも、白紙の企画シートを前にすると手が止まる。「うちは部品メーカーだし」「うちはただの飲食店だし」。その「うちは○○だし」を外すための章です。

4章の心理要素を、BtoB・店舗・採用の3つの型に当てはめて、「狙う心理→ネタ→冒頭の一言」までそろえた例を9個作りました。

ここに並べるのは「例」です

この章の9個は、編集部が4章の心理要素を業種の型に当てはめて作った架空の企画例です。弊社が実際に投稿した企画でも、伸びることが確認された企画でもありません。自社に近い行を選び、名詞を自社のものに差し替えて使ってください。

型 業種・目的(例) 狙う心理 ネタ(1行) 冒頭の一言(例)
BtoB 1. 部品メーカー/認知・採用 ①好奇心のギャップ 自社の小さな部品が、身近な製品のどこに入っているかを最後に明かす 「この部品、たぶん今あなたのカバンの中にも入っています。どこだと思います?」
2. 業務用ソフト(IT)/問い合わせ ④感情移入・共感 月末、経費精算の領収書をめぐる経理担当と営業の攻防。両方の言い分を見せる 「”領収書まだですか”と言う側の人も、言われる側の人も、ちょっと見てください」
3. 専門商社・BtoBサービス/問い合わせ・信頼 ⑨自己開示効果 社長が、創業期にいちばん大きな取引を失った話と、そのあと変えたこと 「創業して一番悔しかった失注の話を、今日はします」
店舗 4. 飲食店/来店 ⑤ツァイガルニク効果 新メニューが決まるまでの試作をシリーズにし、毎回「採用か、ボツか」の直前で切る 「店長に出す新メニュー、今日で3回目の試食です」
5. 美容室・サロン/予約 ③カクテルパーティー効果 1秒目で「前髪を自分で切って失敗した人」だけに呼びかけ、美容師が直し方を見せる 「前髪を自分で切って後悔している人、ちょっとだけ止まってください」
6. 小売店・専門店/来店・認知 ⑦社会的通貨 店員しか知らない「この商品の選び方」を、1本に1つだけ 「店員が自分の家用に買うのは、実はこっちです」
採用 7. 介護・福祉/応募 ⑩プラットフォール効果 ベテラン職員が、新人のころの失敗を笑いながら再現する 「10年目の私が、新人のころの夜勤でいちばん焦った5分間です」
8. 運送・物流/応募 ⑥インタラクティブ効果 ドライバーあるあるを1つ出し、コメントで集まった「うちもそう」を次の動画のテーマにする 「トラックに乗っている人、これ分かったらコメントで教えてください」
9. 営業職の多い会社/応募 ②パターン・インタラプト 丁寧な会社説明の途中で、先輩社員が台本を置いて、本当の1日の話を始める 「……すみません、ここから台本、置きますね」

ネタ例を、自社の企画に変える4つの手順

表の1行を、そのまま撮っても企画にはなりません。足りないものがあるからです。

  1. 近い行を1つ選ぶ。業種がぴったり合わなくても、「目的」と「狙う心理」が合っていれば使えます。
  2. 名詞を自社のものに差し替える。「部品」を自社の製品に、「経理と営業」を自社でよくぶつかる2つの部署に。
  3. 時期と進行中の話題を足す。この表には、あえて「いつ出すか」を入れていません。7章のチェック①②は、出す週によって答えが変わるからです。
  4. 8章の企画シートに写す。表の「狙う心理」はシート5番、「ネタ」は7番、「冒頭の一言」は7番の下に書き添えます。

気づいた方もいると思いますが、2の例は「立場が2つ」あります。経理と営業です。これは毒上司の「上司側も部下側も自分ごと化する」設計を、編集部が別の業種に移して作った例です。見る人の立場を増やしたいなら、まずこの例から試してください。

要するに

「うちは○○だし」は、企画が出ない理由になりません。近い型を選び、名詞を差し替え、時期を足して、シートに写す。これで1本です。

TikTok企画の立て方5ステップ

ネタ例が手元にそろったところで、それを毎週の企画会議で回せる手順に並べます。来週の会議のアジェンダは、この5行をそのまま貼ってもらって構いません。

ステップ3以外は、豊田に聞いた企画の考え方をそのまま手順にしたものです。

STEP.1
前提条件をセットする(いつ・誰に・見た後どこへ)

いきなりネタを探さず、先に条件を決めます。豊田が毒上司の前に決めていたのは「4月に何か仕掛ける」でした。

企業アカウントなら、加えて「誰のおすすめ欄に届けるか」と「見た後どこへ送るか」を決めてください。豊田の言葉では「撮る前に、どこで自社を知ってもらうのかのチャネル設計を先に決めろ」。ホームページなのか、求人媒体なのか、問い合わせフォームなのか。ここが決まっていない企画は、9章で書く「バズっても成果にならない企画」になります。

STEP.2
時期のトレンドを取り、進行中の話題を掛け合わせる

豊田の定義では、トレンドは「今この瞬間に世の中の注目が集まっているもの」。そして予測できるものです。4月なら新社会人、12月ならクリスマス。豊田いわく「川の流れに従う」。

そこに、その時期に進行中の話題を掛け合わせます。毒上司は「4月=新社会人」という時期のトレンドと、「退職代行」という進行中のトレンドの二重取りでした。上司を題材にしたのも、「4月に世の中の注目が集まるのは会社・上司・部下の関係だから」という時期の必然からです。

今何が話題になっているかの調べ方は「TikTokのトレンドは追うべきか?調べ方と判断基準」で扱います。

STEP.3
主役の心理を1つ決める

4章の表から、この1本で動かしたい心理を1つ選びます。STEP.1で決めた「誰に」と組み合わせると、「新社会人に、自分のことだと思って最後まで見てもらう(④共感)」のように、1行で言えるはずです。言えなければ、まだ企画になっていません。

STEP.4
条件を持ってネタを探す(おすすめ欄・コメント欄・5章の例)

STEP.1〜3の条件を頭に入れた状態で、TikTokのおすすめ欄を見ます。毒上司の原型が見つかったのも、この状態で見ていたときでした。

見つけたら、借りるのは型(フォーマット)だけです。他社事例の模倣について、豊田の判定は「トレンドとされる動画を最速でパクれ、スピードが命」。ただ、中身まで同じにしたら2章の落とし穴1に戻ります。そこで編集部としておすすめしたいのが、型は速く借りて、中身は自社の職場・社員・お客様の話に差し替える。自社のコメント欄と、5章のネタ例も、ネタの在庫として見てください。

STEP.5
台本は作り込まない

最後に台本です。ここで頑張りすぎないでください。会社アカウントは上下関係があるぶん「作られた台本の中の作られた雰囲気」が構造的に出てしまい、それが伸びない原因になる。これが豊田の考えです。毒上司は1発撮りで、NGも使い切る方針でした。

目指すのは、豊田の言葉でいう「程よく形になりつつ、撮影時間も少なくて、人間味が出る、ちょっと崩れた感じも出る」水準です。撮影・編集の具体的な手順は「TikTok動画の作り方|企画・撮影・編集・投稿の全工程」にまとめています。

STEP.5の「作り込まない」は、豊田がこの1年で見ている変化とも重なります。

豊田優人

作り込みすぎない、TikTokの完成動画とInstagramのストーリーズの中間くらいの、リアルな空気感の動画が伸びています。2025年3月頃からです。

丁寧に作った台本を、あえて崩す。担当者としては勇気がいりますよね。編集部のおすすめは、企画書の段階で「ここはNGも使います」と書いておくことです。撮影の当日になって「撮り直す?」と迷わずに済みます。

要するに

条件を決める→時期と話題を掛ける→心理を1つ決める→型を借りてネタを探す→作り込まずに撮る。ネタ探しは4番目です。

企画を出す前の7つのチェック

企画ができた。撮影の日程も押さえた。さあ撮ろう——その前に、5分だけください。豊田が企画を出す前に必ず確認している7項目です。

  • ①いま世の中が何に注目する時期か(予測できるトレンド)を先に取っているか
  • ②その時期に走っている進行中のトレンドを掛け合わせているか
  • ③誰のおすすめ欄に届くかを決めているか
  • ④複数の立場(上司側・部下側など)が自分ごと化して、最後まで見る設計になっているか
  • ⑤音源がターゲットの年齢層と一致しているか
  • ⑥撮影の手間が小さいか
  • ⑦他人が真似できるフォーマットか(真似されるとトレンドになる)

毒上司シリーズに7項目を当てはめると

抽象的なチェック項目は、実例に当てはめると一気に使いやすくなります。毒上司シリーズで、それぞれがどうなっていたかを並べます(いずれも豊田に確認した内容です)。

チェック項目 毒上司シリーズではどうだったか
①時期のトレンド 4月=新社会人。会社・上司・部下の関係に世の中の注目が集まる時期
②進行中のトレンド 退職代行。①と掛け合わせて「トレンドの二重取り」にした
③誰のおすすめ欄に 狙いは新卒=23歳前後
④複数の立場が自分ごと化 毒上司は、部下が「自分はやばい部下では」、上司が「自分は毒上司では」と見る。やばい新人はその逆。どちらのシリーズも上司・部下の両方が最後まで見ることで、総再生時間を稼ぐ設計にしていた
⑤音源と年齢層 Number_iの「稲妻」を使用。狙った23歳前後と、アーティストのファン層を一致させた
⑥撮影の手間 1発撮り
⑦真似できるフォーマット 単純で、演技力がなくても成立する。だから「絶対に真似される=トレンドになる」と企画段階で予測していた

⑤の音源は、「流行っている曲を使う」とは分けて読んでください。「流行っている音源だから使う」のではなく、「狙うターゲットの年齢層とアーティストのファン層を一致させるために使う」。流行っているかどうかより、誰が聴いている曲かのほうが先です。

⑦は、少し意外に感じるかもしれません。自社の動画が真似されるのは損に見えますよね。でも豊田の考えは逆で、他の人が真似して投稿するから、その型がトレンドになる。

豊田優人

結果論ではあるんですけど、戦略の元にバズったコンテンツなんです。4月というトレンドと、退職代行という進行中のトレンド、上司側も部下側も自分ごと化する設計、ターゲットの年齢と合う音源。そこまで先に設計していたので、バズるべくしてバズった、と思っています。

とはいえ、最初から7つ全部に丸をつけようとすると、企画会議がまた止まりかねません。ここからは編集部からの提案です。まずは①②③④の4つに丸がつくまで企画を練り直すところから始めてください。⑤〜⑦は、慣れてから足していけば十分です。

要するに

撮る前に7項目を通す。特に「時期」「進行中の話題」「誰に」「複数の立場」の4つが、ネタの面白さより先に来ます。

明日そのまま使える「企画シート」と記入例2つ

月曜10時の企画会議。ホワイトボードの前で「で、何撮る?」と聞く代わりに、1枚の紙を配る。そのための章です。

ここまでの5ステップと7項目を、1枚のシートにまとめました。1枚埋めれば、企画が1本です。そのままスプレッドシートにコピーして使ってください。

記入例は、目的の違う架空の会社で2つ書きました。Aは採用目的(地方の工務店が、4月に若手職人を採りたい)、Bは販促目的(中小企業向けの業務用ソフトの会社が、年度末に問い合わせを増やしたい)です。どちらも弊社の実際の企画ではありません。

欄 書くこと 記入例A(架空:地方の工務店・採用) 記入例B(架空:業務用ソフト・販促)
1. 目的 この1本は何のためか(採用/集客/認知) 若手職人の採用 無料トライアルの申し込みを増やす
2. 出す時期 いつ出すか。その時期に世の中は何に注目しているか 4月上旬。新社会人・新しい職場に注目が集まる 3月上旬。年度末で、経理の締め作業と新年度の準備に注目が集まる
3. 進行中の話題 その時期に走っている話題で、自社と重なるもの (想定)若手の人手不足や、職人の働き方がニュースやSNSで話題になっている (想定)経費精算や請求書まわりの制度変更が、その年の話題になっている
4. 誰のおすすめ欄に 年齢・立場まで具体的に 高卒〜23歳前後で、職人の仕事に興味はあるが不安もある人 従業員30人以下の会社で、経理を1人で担当している30〜40代
5. 主役の心理(1つ) 4章の表から1つ ④感情移入・共感 ⑥インタラクティブ効果
6. 複数の立場 誰と誰が「自分のことだ」と思うか 新人側(「怒鳴られそう」と不安な人)と、親方側(「新人にどう教えればいいか」悩んでいる人) 経理側と営業側。どちらの立場の人も「自分ならこう返す」とコメントで参加できるようにする
7. ネタ(1行)+冒頭の一言 1〜6を満たす中身を1行で。冒頭の一言も書く 入社初日の新人と親方の、噛み合わない会話/冒頭「親方の”適当にやっといて”、新人にはこう聞こえてます」 月末、領収書をめぐる経理と営業の攻防。決着をつけずに「あなたならどう返す?」で終わる/冒頭「”領収書まだですか”と言う側の人も、言われる側の人も、ちょっと見てください」
8. 借りる型 おすすめ欄で見つけた、単純で真似しやすいフォーマット 上司役と部下役の掛け合い(2人・会話だけで成立) 同じく2人の掛け合い。上司と部下を「経理と営業」に置き換える
9. 音源 4の年齢層が聴いている曲か/自分たちの声でいくか 4の年齢層が聴いている曲を、商用利用できる範囲から選ぶ 会話が主役なので、自分たちの声を中心にする。BGMは商用利用できる範囲で小さく
10. 撮影の手間 何人・どこで・撮り直さずに撮れるか 社員2人・現場の休憩時間に1回で撮る 社員2人・オフィスの経理の席で、昼休みに1回で撮る
11. 見た後どこへ プロフィールの先に何を置くか プロフィールから採用ページへ。採用ページに先輩社員のインタビューを置く プロフィールから「経理が1人の会社向け」の製品ページへ。そこから無料トライアルの申し込みへ
12. 投稿後に見る数字 何を見て次に活かすか 総再生時間・冒頭2秒の離脱・平均視聴率。コメントを次のネタ候補として書き出す 総再生時間・冒頭2秒の離脱・平均視聴率。あわせて、プロフィールのリンクから製品ページに来た数。集まった「返し」のコメントは、次の動画のテーマ候補に

※3番の「進行中の話題」は、出す週によって中身が変わるので、記入例では「(想定)」としています。実際に使うときは、その週に話題になっていることを書いてください。

コピー用:空欄の企画シート

自社で使うときは、記入例を外したこちらをコピーしてください。右に1列足せば、そのまま書き込めます。

欄 書くこと
1. 目的 この1本は何のためか(採用/集客/認知)
2. 出す時期 いつ出すか。その時期に世の中は何に注目しているか
3. 進行中の話題 その時期に走っている話題で、自社と重なるもの
4. 誰のおすすめ欄に 年齢・立場まで具体的に
5. 主役の心理(1つ) 4章の表から1つ
6. 複数の立場 誰と誰が「自分のことだ」と思うか
7. ネタ(1行)+冒頭の一言 1〜6を満たす中身を1行で。冒頭の一言も書く
8. 借りる型 おすすめ欄で見つけた、単純で真似しやすいフォーマット
9. 音源 4の年齢層が聴いている曲か/自分たちの声でいくか
10. 撮影の手間 何人・どこで・撮り直さずに撮れるか
11. 見た後どこへ プロフィールの先に何を置くか
12. 投稿後に見る数字 何を見て次に活かすか

シートの埋め方のコツ

  • 上から順に埋める。7番(ネタ)から書き始めたくなりますが、そこをぐっと我慢するのがこのシートの役目です。
  • 5番が1行で書けないなら、まだ企画ではない。「面白い動画」は心理ではありません。
  • 5番と6番はセットで考える。7章のチェック④(複数の立場が自分ごと化)は、5番で選んだ心理を、6番の2つの立場で同時に起こせるか、という問いに言い換えられます(編集部の整理です)。④共感が主役の記入例Aは、6番に「同時に自分のことだと思う2つの立場」を書いています。④以外を主役にしたときは、6番を「その心理を、どの立場の人に起こすか」と読み替えてください。⑥インタラクティブ効果が主役の記入例Bは、5章の例2と同じネタでも、6番に「どちらの立場の人もコメントで参加できるか」を書き、終わり方を問いかけに変えています。
  • 6番が1つしか書けないなら、見る人が半分になる。上司と部下、お客様と店員、親と子。立場を2つ置けないか考えてください。
  • 11番が空欄なら、撮らない。9章で書く「成果にならない企画」を増やすだけです。

埋め終わったら、7章の7項目にもう一度照らしてください。丸がつかない項目があれば、その欄に戻って書き直します。

企画シートを、そのまま社内の「企画書」にする

「TikTokの企画書を出して」と上長に言われている方もいると思います。わざわざ別の資料を作らなくても、このシートがそのまま企画書になります。ここからは、社内で通すための書き方について、編集部からの提案です。

  1. 1番・11番・12番を、いちばん上に持ってくる。「何のために撮って、見た後どこへ送って、何の数字で判断するか」が先に見えると、ネタの好き嫌いではなく目的で判断してもらいやすくなります。
  2. 8番の「借りる型」には、おすすめ欄で見つけた動画のリンクを1本添える。型は、言葉で説明するより見てもらうほうが早いです。
  3. 10番の撮影の手間は、工数で書く。「社員2人・昼休みに1回で撮る」と書いてあれば、「業務に支障は?」という質問に先回りできます。
  4. 最後に、7章の7項目の丸・バツを添える。バツがある項目も隠さず書き、「⑤は次回から」のように扱いを1行添えておきます。
要するに

シートは上から順に埋める。ネタは7番目。「主役の心理」と「見た後どこへ」が空欄のまま撮らない。企画書として出すなら、目的・行き先・見る数字を一番上に。

バズっても成果にならない企画を避ける

こんな月曜の朝を想像してください。週末に出した動画の再生数を見て、思わず二度見する。桁が1つ多い。チャットで「伸びてます!」と送り、上長からは拍手の絵文字が返ってくる。

ところが、問い合わせフォームの受信箱を開くと、0件。応募も0件。

企画の話の最後に、この「バズったのに、会社には何も残らない」パターンを書いておきます。いちばん痛い失敗です。

豊田に「バズっても成果にならないのはどんなアカウントか」を聞いたとき、答えは3つでした。

成果にならないアカウント 企画の段階で防ぐには(編集部の整理)
バズっても何をしている会社か分からない 企画シート1番(目的)と、動画の中で自社の仕事が見えているかを確認する
会社の信頼性を担保できるものがない 4章の⑨⑩(本音・失敗を見せる)を主役にした企画を、定期的に混ぜる
「どこで知ってもらい、どこへ送るか」のチャネル設計がないまま、TikTokだけで完結させようとしている 企画シート11番を必ず埋める。TikTokは入口と割り切る

3つ目は特に大事です。豊田は、今なら絶対にやらないこととして「TikTokのオーガニック(広告を使わない通常投稿)だけで認知を取ろうとする戦略」を挙げています。昔は会社アカウントでバズらせて認知を取るのが最も費用対効果の良い手段でしたが、アカウントやクリエイターが増え、ユーザーが成熟した今は、それだけでは足りません。

では、再生を成果に変えている企画は何をしているのか。豊田が挙げたのは2つです。

  • ライブ配信。役員や会社のトップが、ライブで何を考えているかを話す。普段のコンテンツとのギャップで会社の中身が伝わり、信頼につながった。
  • TikTokで完結させない導線。TikTokで知る→ホームページを検索する→求人媒体や応募へ、というクロスチャネルの流れを前提に企画する。

しかも、この1年で「転職を考えるときに企業のSNSまで調べる」のが当たり前になった、と豊田は見ています(特に20代)。TikTokの企画は、単発のバズより「調べに来た人が見て安心できる動画が並んでいるか」まで含めて設計する時代です。

要するに

バズの前に「何の会社か分かるか」「信頼できる材料があるか」「見た後どこへ行くか」を企画で決めておく。そうでないと、再生数は会社に1円も残りません。

企画は社内で回すか、外に頼むか

ここまで読んで「理屈は分かったけど、これを毎週回すのは大変だ」と感じた方もいると思います。正直に言うと、大変です。シートを1枚埋めるのに、慣れるまでは会議1回分かかるかもしれません。

社内で回す場合に気をつけてほしいのは、2章で書いた「伸びない会社の共通点」は、運用代行に頼んでいても起きるということです。外に頼めば解決するわけではありません。既存の動画をもとに同じコンテンツを量産する代行会社に頼めば、同じ落とし穴にはまります。

社内でやるか外に頼むかを決める前に、次の3つに答えられるかを確認してみてください(編集部の整理です)。

  • 7章の7項目を、毎週の企画で誰がチェックするか決まっているか
  • 企画シート11番(見た後どこへ)の行き先——ホームページや求人媒体——を、自社で用意・更新できるか
  • リーチ(届ける範囲)をオーガニック投稿だけで取るのか、広告も使うのか決まっているか

3つとも答えられるなら、この記事の企画シートで社内運用を始めて大丈夫です。どれかで止まるなら、そこが相談すべきポイントです。

弊社の無料相談では、最初に次の3つを一緒に整理します。

  1. どんな人材が欲しいのか——ここに合わせてコンテンツを組まないと、必ず外します
  2. どこで自社を知ってもらうのか——ホームページ・求人媒体・SNSのどれを前提に組むのか
  3. リーチをオーガニックで取るのか、広告で取るのか

※販促・集客が目的のアカウントなら、1つ目は「どんなお客様に届けたいのか」と読み替えてください(編集部注)。

これは、企画シートの1番・4番・11番をプロと一緒に埋める作業そのものです。自社だけで決めきれないときに使ってください。

TikTokの企画でよくある質問

ネタを考えるのを一度やめて、前提条件を決めてください。「来月、何の時期に、誰に向けて出すか」だけ決めて、その条件を持っておすすめ欄を見る。豊田が毒上司の原型を見つけたのも、「4月に何か仕掛ける」と決めてからでした。すでに投稿があるなら、自社のコメント欄も見てください。弊社はコメントをそのまま次の動画のテーマにしていました。それでも白紙なら、5章のネタ例から自社に近い1行を選ぶところから始めてください。

立てられる、というのが編集部の考えです。ポイントは、商品の派手さではなく「誰と誰が自分ごと化するか」を先に探すこと。経理と営業、発注側と受注側、ベテランと新人。社内や取引先の中を探せば、「2つの立場」は自社にも見つかるはずです。5章の1〜3にBtoBの例を置いているので、名詞を差し替えて使ってください。

毒上司について、豊田は「結果論ではあるが、戦略の元にバズったコンテンツ」だと話しています。時期・進行中の話題・見る人の立場・音源まで、出す前に設計していました。つまり、出す前に設計できる部分がある。7章の7項目がその設計の中身です。

覚える必要はありません。4章の10個で十分です。しかも1本の企画で主役にするのは1つ。今のアカウントが困っていること(冒頭で飛ばされる、コメントが来ない、など)から逆算して選んでください。なお心理要素の定義そのものは一般的な心理学の知識で、弊社独自のものではありません。独自なのは、それを企画の最初に当てはめる使い方のほうです。

演技力がなくても成立する形式なら、問題になりません。毒上司も、企画段階で「フォーマットが単純で、演技力がなくても成立する。だから真似される」と見ていました。7章の⑥(撮影の手間が小さいか)と⑦(真似できるフォーマットか)に丸がつく企画から始めてください。

ここでいう「トレンド」の意味によります。TikTokの中で流行っている動画を追いかけることなら、必須ではありません。豊田の定義する「今この瞬間に世の中の注目が集まっているもの」——4月の新社会人や12月のクリスマスのような、先に予測できる注目——には、企画の時点で乗っておくべきです。詳しい調べ方は「TikTokのトレンドは追うべきか?調べ方と判断基準」で扱います。

豊田は、キャスティングして美女を出す差別化を「もう通用しなくなった手法」に挙げています。新しくもなく、運用が入っていると見透かされるから、という理由です。出演者の見た目より、7章の④(複数の立場が自分ごと化する設計)に時間を使ってください。

8章の企画シートが、そのまま企画書のテンプレートになります。社内に出すときは、1番(目的)・11番(見た後どこへ)・12番(見る数字)を一番上に置き直し、8番の型の参考動画のリンクを1本添えてください。書き方は8章の最後にまとめています。

「何本外したら変える」という数字の基準は、この記事では断定しません。代表に確認が取れているのが、まだ数字として言い切れる形ではないためです。代わりに、外れた企画は7章の7項目のどこに丸がついていなかったかを振り返ってください。伸びない原因の切り分け方は「TikTokが伸びない原因」でまとめています。

まとめ:企画シートを1枚、今日埋めてください

この記事の要点を、もう一度だけ並べます。

  • 企画=ネタ出しではない。いつ・誰に/どの心理を/何を撮って/どこへ送るかが決まって企画
  • ネタから考えると、他社と同じ動画になり、見たことのある動画は2秒で飛ばされる
  • 弊社の順番は「狙う心理→ネタ→台本」。約100項目の心理要素を企画の前に当てはめる
  • 心理要素は10個・1本につき主役1つで十分。定義は一般論、効くのは使う順番
  • ネタに詰まったら、5章の業種別ネタ例から近い1行を選び、名詞を差し替える
  • 出す前に7つのチェック。特に時期・進行中の話題・誰に・複数の立場
  • 「見た後どこへ送るか」が空欄の企画は、バズっても会社に何も残らない

明日の企画会議でやることは1つです。8章の企画シートを、上から順に1枚埋める。ネタの欄は7番目です。そこまで来たとき、たぶん「何でもいいから面白いネタ」を探していたときより、ずっと早くネタが見つかるはずです。会議の沈黙が、少しでも短くなりますように。

シートの1番・4番・11番——誰に向けて、どこへ送るのか——で手が止まったら、そこは弊社と一緒に整理しましょう。自社だけで続けられるか不安な段階でも大丈夫です。

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この記事の監修者

株式会社BEEM代表取締役 豊田優人

豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役

フォロワー約47万人の会社アカウントをはじめとする自社TikTokアカウント群を運用し、100万再生を超えた動画は137本、累計4.61億回再生。「毒上司」シリーズの企画者。株式会社BEEMは「SNS採用のみで採用したメンバーで構成される会社」として、企業のTikTok運用支援・広告運用を提供している。複数の記事で紹介されたほか、大学での登壇歴がある。

参考文献(心理要素の一般的な定義について)

4章の「一般的な意味」は、以下のような心理学・マーケティングの一般的な知見を要約したものです。弊社独自の知見ではありません。

  1. Loewenstein, G. (1994). The psychology of curiosity: A review and reinterpretation. Psychological Bulletin, 116(1), 75–98.(好奇心のギャップ)
  2. Cherry, E. C. (1953). Some experiments on the recognition of speech, with one and with two ears. The Journal of the Acoustical Society of America, 25(5), 975–979.(カクテルパーティー効果)
  3. Zeigarnik, B. (1927). Das Behalten erledigter und unerledigter Handlungen. Psychologische Forschung, 9, 1–85.(ツァイガルニク効果)
  4. Aronson, E., Willerman, B., & Floyd, J. (1966). The effect of a pratfall on increasing interpersonal attractiveness. Psychonomic Science, 4(6), 227–228.(プラットフォール効果)
  5. Berger, J. (2013). Contagious: Why Things Catch On. Simon & Schuster.(社会的通貨・トリガー)
本文中のデータについて
本文中の実績(100万再生超え137本・累計4.61億再生、会社アカウントのフォロワー約47万人)は、公開中の投稿607本から数え直した弊社(株式会社BEEM)の自社調べです(2026年10月13日時点)。毒上司シリーズの着想・設計・コメント欄の様子などは、代表・豊田優人へのヒアリングで確認した内容に基づきます。3章の「編集部の読み解き」の枠は、代表の発言を編集部が心理要素の言葉に当てはめたもので、代表が毒上司の企画時にその心理要素を狙ったと述べたものではありません。4章の当てはめ例、5章の業種別ネタ例9個、8章の記入例2つは、読者の方が自社に置き換えるための架空の例で、弊社の実績ではありません。

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