TikTokのトレンドは追うべきか?136本の実測で「流行曲に乗らなくても伸びた」を公開し、今のトレンドを自分で調べる手順まで渡します

TikTokのトレンドは追うべきか?136本の実測で「流行曲に乗らなくても伸びた」を公開し、今のトレンドを自分で調べる手順まで渡します

最終更新日:2026年10月13日
執筆・監修:豊田優人(株式会社BEEM 代表取締役)

この記事はこんな方に向けて書いています
  • 会社のTikTokを担当していて、「トレンドに乗らないと伸びない」と言われて焦っている中小企業のマーケ・販促担当者の方
  • 調べても半年前の「流行り曲まとめ」しか出てこず、今なにが流行っているのかが結局わからない方
  • 社員に踊らせるような企画を、社内で通す自信がない方
先に、この記事の結論をお伝えします

企業のTikTokは、流行の楽曲に乗らなくても伸びます。弊社(株式会社BEEM)の公式TikTokで、記録シートに記載のある136本を集計すると、116本が自社オリジナル楽曲(=自分たちの声や音)で平均206万回再生。外部の既存曲・流行曲を使った20本は平均170万回でした。差は約1.2倍で、しかも再生数トップ15のうち14本が自社オリジナル楽曲です。トレンドは「乗るための材料」ではなく「今どういう見せ方が受け入れられているかを知るための観測対象」として使うのが、いちばん失敗しにくい距離感です。

ヘッドホンをしてスマートフォンで音楽を聴く女性
イメージ(写真:photoAC)

この記事に「今のトレンド一覧」がない理由

最初に、この記事の立場をはっきりさせておきます。

この記事には「2026年に流行っているTikTokの曲・ハッシュタグ一覧」を載せません。載せないと決めた理由は2つあります。

1つ目は、腐るからです。TikTokの楽曲トレンドは、早いものだと2〜3週間で入れ替わります。記事に一覧を書いた瞬間から古くなり始めて、3ヶ月後には嘘に近いものになる。「トレンド」で検索して出てくる記事を10本ほど開いてみるとわかりますが、多くが半年から1年以上前の曲を「今流行っています」と紹介したまま止まっています。あなたが今まさに困っているのは、たぶんそれです。

2つ目は、勝てないからです。今この瞬間のトレンドをいちばん正確に持っているのはTikTok自身で、公式が無料で公開しているトレンド確認の場所があります(3章で開き方ごと渡します)。ブログ記事がそこに鮮度で勝てる道理はありません。

なので、この記事は代わりに3つを渡します。

この記事で渡すもの
  • 今のトレンドを自分で調べる手順(3章。どの画面をどう開いて、どこを見るか)
  • 自社が乗るべきか/乗らないべきかの判断基準(6章。表で分岐します)
  • 乗らない場合に何をするか(9章。弊社が実際に選んだ道と、その実測値)

ちなみに配信面の規模の話をしておくと、TikTokの日本国内MAU(月間アクティブユーザー数)は4,200万を突破しています※1。総務省の調査(令和6年度)でも利用率は全年代で33.2%あり※2、もう「若い子だけのアプリ」という前提でトレンドを考えるのは実態と合いません。30代・40代が見ているアプリで何が流行っているのか、という目で読み進めてください。

TikTokの「トレンド」を4つの層に分ける

「トレンドに乗る」という言葉がふわっとしているのが、そもそもの混乱の原因です。TikTokのトレンドは、実務上4つの層に分けて考えたほうが扱いやすくなります。層ごとに寿命も、乗るコストも、企業にとってのリスクもまったく違うからです。

層 中身 だいたいの寿命 乗るコスト 企業向きか
①楽曲 流行っている曲・音源に合わせて撮る 2〜4週間 低い(曲を差し替えるだけ) 権利の確認が必須。要注意
②ハッシュタグ/お題 「#〇〇チャレンジ」などのお題に参加する 2週間〜2ヶ月 中くらい お題の意味を読み切れれば可
③フォーマット(構文) 「〇〇な人あるある」「1日目→30日目」など動画の型 3ヶ月〜1年以上 中くらい いちばん向いている
④話題・ネタ 世の中で話題になっている出来事・言葉に触れる 数日〜数週間 高い(企画から作る) 自社の領域に関係する話題だけ

この4つのうち、企業アカウントがいちばん恩恵を受けやすいのは③のフォーマットです。理由は寿命が長いことと、権利の問題がほとんど起きないこと。「〇〇あるある」という型そのものに権利者はいませんし、型を借りて中身を自社のものにすれば、それは真似ではなく翻訳になります。

逆に①の楽曲は、いちばん手軽に見えていちばん危ないです。理由は2つ。企業アカウントは一般の楽曲ライブラリを商用目的では使えないという制約があること※3(7章で手順ごと説明します)。そして、同じ曲を使った動画が同時に何万本も並ぶので、埋もれやすいこと。

豊田優人

2021年ごろ、うちも流行っている曲に合わせて撮った動画を何本か出しました。結果は数万回で止まりました。同じ週に出した、曲でもなんでもない11秒の動画(今シートを見るとComedy分類のもの)が数百万回いっていたので、正直かなり気持ちが折れました。曲に乗ると「その曲を探している人」の中で比べられるので、うちみたいに知名度のない会社は勝ち目が薄いんだと、そのときに理解しました。

この記事の3章以降は、この4層の区別を前提に進みます。「トレンドに乗る」と言うときは、自分がどの層の話をしているのかを毎回はっきりさせてください。それだけで社内の議論がだいぶ噛み合うようになります。

腐らないトレンド=寿命の長いフォーマット8選

「一覧は載せない」と1章で書きましたが、それは①楽曲・②ハッシュタグ・④話題の話です。③のフォーマットは寿命が3ヶ月〜1年以上あるので、一覧にしても腐りません。むしろここは自分で探すより、先に型を知っておいたほうが速い。なので8つ挙げます。

弊社が5年撮ってきて、業種を変えても成立した型です。使い方は「気に入った型を1つ選んで、中身を自社の話に差し替える」だけです。

型 中身と作り方 向いている商材・業種
①〇〇な人あるある その立場の人にしか分からない細かい共感を3〜5個並べる。撮影は会話だけで済む 士業・医療・建設・飲食など、職業のイメージが世間にある業種
②1日目→30日目(ビフォーアフター) 同じ対象を時間差で並べて変化だけを見せる。字幕と素材があれば成立する 施工・美容・整体・学習塾など、変化が目で見える商材
③〇〇に聞いてみた(社内インタビュー) 社員10人に同じ質問をして、回答だけを並べる。台本が要らないので続けやすい 採用目的の全業種。とくに人が資産の会社
④〇〇するとどうなるか 検証もの。限界まで試す/普段やらないことをあえてやる 素材・機械・洗剤・工具など、性能を実演できる商材
⑤よくある質問に答える 実際に来た質問を1本1問で答える。営業トークをそのまま使える 高額商材・BtoB・不動産・保険など、検討期間が長い商材
⑥〇〇の裏側/1日密着 普段お客様に見えない工程・現場・1日の流れを見せる 工場・厨房・物流・現場職。工程そのものが珍しい業種
⑦〇〇な人にありがちな一言 セリフ一言だけで人物像を出す短尺。7〜15秒で作れるので本数が稼げる 接客・営業・教育など、会話が仕事の中心にある業種
⑧〇〇 vs 〇〇 2つを並べて比べる。良い例/悪い例、昔/今。他社比較は避けて自社内で比べる 比較で価値が伝わる商材全般

この8つは1本作って終わりではなく、シリーズにできる型を選んでいます。弊社の実績も、実は特別な企画の集まりではありません。9章で出す内訳のとおり、記録シートに記載のある136本のうち71本が「会社の日常を笑いにする」型(シート上のComedyラベル)で、その1つの型を71本積み上げた結果です。

選び方は1つだけ。「これを来週も撮れるか」で選んでください。1本目が撮れる型ではなく、10本目まで撮れる型が正解です。3章の方法5で同業10社を見たときに、同業が使っていない型があれば、それが自社の空き地です。

【手順】今のトレンドを自分で調べる5つの方法

ここが本記事の中心です。一覧を渡す代わりに、毎週30分で今のトレンドを自分で把握する手順を渡します。5つありますが、全部やる必要はありません。おすすめは方法1と方法4を毎週、残りは月1回です。

方法1
公式のトレンド確認ページを開く(PC・無料)

いちばん確実なのは、TikTokが広告主向けに無料公開している「TikTok Creative Center」です※4。ブラウザで ads.tiktok.com/business/creativecenter/ を開き、上部メニューから「トレンド分析(Trends)」を選ぶと、楽曲・ハッシュタグ・クリエイター・動画の4区分でいま伸びているものが見られます。

ここで最初にやることは、右上あたりにある絞り込みで地域を「日本」、期間を「過去7日間」にすること。初期表示のままだと海外や長期間の集計が混ざり、日本で今週流行っているものが見えません。楽曲の一覧では各曲に人気度の推移グラフが付いているので、グラフが右肩上がりの途中にあるものだけをメモしてください。すでに山を越えて下がり始めている曲に今から乗るのは、最も割の悪い動きです。

閲覧には広告アカウント(TikTok for Businessのアカウント)が必要になる場合があります。広告を出す予定がなくても、アカウント自体は無料で作れます。作り方は「TikTok広告とは?費用・始め方・効果」の始め方の章で手順を扱います。

TikTok広告とは?100万再生超え137本・累計4.61億再生の会社が、費用・始め方・効果を実数で全部話します TikTok広告とは?100万再生超え137本・累計4.61億再生の会社が、費用・始め方・効果を実数で全部話します
方法2
アプリの検索サジェストで、自分の業界の“今の言葉”を拾う

スマホのTikTokアプリを開き、右上(または下部メニュー)の検索アイコンをタップ。検索窓に自社の業界の言葉だけを入れます。「工務店」「歯科」「求人」「ラーメン」など、単語1つでいいです。

すると入力途中で候補(サジェスト)が出てきます。これはその言葉と一緒に、実際に多くの人が検索している言葉です。「工務店 やめとけ」「歯科 助手 給料」のように、自社の周辺で今なにが気にされているかがそのまま出てきます。ここで拾った言葉は、④の話題レイヤーの企画の種になります。

スクリーンショットを撮って日付を入れて保存しておくと、翌月に見比べたときに「増えた言葉/消えた言葉」がわかります。これだけで自社領域の定点観測になります。

方法3
楽曲ページの「使用動画数」を、3日空けて2回記録する

楽曲トレンドの旬を見分ける、いちばん地味で確実な方法です。気になる曲を使っている動画を見つけたら、画面下部に流れている曲名をタップします。その曲の専用ページに飛び、「この楽曲を使った動画 ○件」のような件数が表示されます。

この件数をスプレッドシートに日付とセットで書き、3日後にもう一度同じページを開いて記録してください。3日で件数が大きく増えている曲は、まだ上り坂です。ほとんど動いていない曲は、もう終わっています。件数の絶対値ではなく増え方を見るのが要点です。

曲名・1回目の件数・2回目の件数・増加率、の4列だけのシートで足ります。5曲ぶん埋めるのに15分かかりません。

方法4
自社アカウントのインサイトで「シェア」と「保存」を見る

外のトレンドより先に、自社で何が受けているかを見るほうが精度が高い場面もあります。手順は、TikTokアプリでプロフィール → 右上のメニュー → クリエイターツール(またはビジネススイート)→ インサイト。ここで「コンテンツ」のタブに切り替えると、直近の動画別に再生数・視聴完了率・シェア数・保存数が並びます。

ここで見るのは再生数ではなくシェアと保存です。再生数はおすすめに載ったかどうかで大きく振れますが、シェアと保存は見た人が「他人に見せたい/後で見返したい」と思ったかどうかを表します。トレンドとして自社で伸ばせる型は、まずここに出ます。

インサイトの機能を使うには、アカウントをビジネスアカウント(プロアカウント)にしておく必要があります。切り替え手順は7章に置いたので、まだの方はそちらを先に済ませてください。

方法5
同業10社を固定リストにして、週1回まとめて見る

同じ業界のアカウントを10社選び、それぞれフォローするか、プロフィールURLをブックマークかスプレッドシートにまとめます(TikTokアプリ内では、気になるアカウントの投稿を保存しておくのも手です)。

そして週1回、まとめて10社ぶん流し見します。1社3分で30分。見るのは「先週なかった型が出てきていないか」だけ。同業が急に同じ形式の動画を出し始めたら、それは業界内で効き始めているフォーマットです。自社と客層が同じ相手の成功例は、遠い業界の大バズより参考になります。

見つけたハッシュタグを、実際にどう使うか

トレンドを調べると、必ず「今伸びているハッシュタグ」が手に入ります。ところがここで手が止まる方が多いので、使い方まで書いておきます。

ハッシュタグは「大・中・小」を混ぜて3〜5個が弊社の基本形です。数を増やしても効果が積み上がるものではないので、上限は決めておいたほうがいいです。

区分 目安 役割 例(考え方)
大(トレンド枠) 1個 今伸びているものに触れて、露出の間口を広げる 方法1で見つけた今週のハッシュタグ
中(テーマ枠) 1〜2個 動画の中身を表す言葉。誰に向けた動画かを機械にも人にも伝える #会社あるある #上司 のような内容語
小(自社枠) 1〜2個 自社名・シリーズ名。過去動画への回遊とファンの定着に効く #社名 #シリーズ名

選ぶときは動画の中身と関係のないハッシュタグを付けないこと。関係のない言葉を付けると、来てほしくない人が来て、すぐ離脱される。離脱が増えると、そのあとの配信が伸びにくくなります。トレンドのハッシュタグに乗るのは、あくまで中身がそのお題に合っているときだけです。

なお、投稿時にハッシュタグを入れる場所はキャプション欄(説明文)です。手順としては、投稿画面のキャプション欄に本文を書いたあと、末尾に半角の「#」を打つと候補が表示されるので、そこから選びます。候補には使用回数が出るので、大・中・小の見分けはその数字でつきます。

トレンドに乗ると決める前に確かめる3つのこと

調べ方がわかると、次は「見つけたものに乗るか」の判断です。弊社では3つだけ確認しています。

確認すること 具体的な見方 NGなら
①まだ上り坂か 方法3の増え方。3日で件数が伸びているか 乗らない。ピーク後は埋もれるだけ
②自社の文脈に翻訳できるか 「うちの会社/商品の話としてこの型で語れるか」を1行で言えるか 乗らない。無理に乗ると意味不明な動画になる
③公開までに間に合うか 企画から投稿までの自社の実所要日数と、残り寿命を比べる 乗らない。楽曲系は撮影〜投稿が3日以上かかるなら基本的に間に合わない

この3つのうち、いちばん多くの会社が引っかかるのは③です。トレンドは「知ってから撮る」までの速さで決まる勝負なので、社内で確認を2回まわす体制の会社は、そもそも楽曲トレンドの土俵に乗れていません。それが悪いわけではなく、乗る土俵を変えるべきという話です(6章と9章)。

観測を「担当者の気合」から外す|週次ルーティン表

トレンドの観測がいちばん多く失敗するのは、方法を知らないからではなく誰の仕事なのかが決まっていないからです。だいたい担当者が最初の2週間だけがんばって、3週目に消えます。なので所要時間と記録先まで決めた形で置いておきます。そのままコピーして社内で使ってください。

いつ やること 所要 記録先
毎週月曜 方法1:公式のトレンド確認ページ(日本・過去7日)で楽曲とハッシュタグをメモ 10分 共有シートの「今週のトレンド」タブ
毎週月曜 方法4:自社インサイトで直近の動画のシェア数・保存数を転記 10分 同じシートの「自社実績」タブ
毎週月曜 方法3:気になった曲3〜5本の使用動画数を記録(前回分と比較) 10分 同じシートの「楽曲の増え方」タブ
毎月1回 方法2:自社業界の検索サジェストをスクリーンショットで保存 30分 共有フォルダ(日付をファイル名に入れる)
毎月1回 方法5:同業10社を流し見して、新しい型が出ていないか確認 30分 同じシートの「同業の型」タブ

合計すると週30分+月1時間です。ポイントは3つ。曜日を固定すること、記録先を1つのシートにまとめること、そして担当者が休んでも代われるように手順を残すこと。この3つが揃うと、観測は個人の熱意ではなく業務になります。

【一次データ】136本の楽曲内訳|流行曲に乗らなくても伸びた

ここから、弊社の実測値を出します。弊社(株式会社BEEM)の公式TikTokで、記録シートに記載のある136本(2020年9月〜2025年5月投稿分)の集計です。合計2億7,353万回再生、100万回再生を超えたものが124本、平均再生数は約201万回、平均エンゲージメント率は3.88%でした。この136本は反響の大きかった動画から順に転記したものです。会社アカウント全体(公開中の607本)では100万再生超えが137本・累計4.61億再生です(2026年10月13日時点)。集計の範囲が違うので数字も違います。

この136本を使用楽曲で2つに分けたのが、次の表です。シートには各動画の楽曲名が記録されているので、これは推測ではなく記録からの分類です。

区分 本数 平均再生数 平均エンゲージメント率
自社オリジナル楽曲
(オリジナル楽曲 – 株式会社BEEM / Original Sound)
116本 2,064,707回 3.93%
外部の楽曲(既存曲・流行曲) 20本 1,701,425回 3.54%

さらに、再生数トップ15のうち14本が自社オリジナル楽曲でした。いちばん伸びた830万回の動画(2021年3月・11秒・ER5.41%)も、流行曲ではなく自分たちの声です。

「自社オリジナル楽曲」というのは特別な音楽制作をしたという話ではありません。その動画で撮った自分たちの声・会話・現場の音が、そのまま音源になっている状態です。つまり普通に撮って普通に投稿すると、この区分になります。

この数字から言えることと、言えないこと

ここは慎重に扱いたいところなので、両側から書きます。

この数字が言っていること

弊社の136本では、流行曲に乗らずに撮った動画のほうが平均再生数が高かった(206万回 対 170万回)。エンゲージメント率も自社オリジナル側が高い(3.93% 対 3.54%)。そして最も伸びた15本のうち14本が自社オリジナル楽曲だった。少なくとも「流行曲に乗らないと伸びない」は、弊社のデータでは成り立ちません。

この数字が言っていないこと

差は約1.2倍で、圧勝ではありません。外部楽曲を使った20本も、平均170万回という水準は決して低くないのです。100万回を大きく超えています。だからこの表を「流行曲に乗るな」の根拠にはできません。言えるのは「乗らなくても伸びる」と「乗るなら、乗る理由を持ってから乗るべき」までです。

加えて、本数が116対20と大きく偏っています。20本側は母数が小さいぶん、平均が数本の結果に引っ張られます。それから、この136本は無作為抽出ではなく、反響のあったものを中心に記録された集まりです。絶対値ではなく、同じ条件下での相対差として読んでください。

ちなみに外部楽曲側の20本で、シートから曲名が確認できるものは次のとおりです。国内の流行曲というより、海外の既存曲が中心でした。

9 and Three Quarters (Run Away)/Celebrate the Good Times/El Pepe/FOLLOW ME d3vdadon/It’s Tricky/Kiss ft Supernatural Ver 1 – Remix/My Name Is/Rocky – Gonna Fly Now/Toca-Toca – Extended Mix/Treasure#1/gettoknowme/original sound – DADDY MING(シート記載のまま。同一曲を複数本で使っているものがあるため、本数と曲数は一致しません)

なぜ自社オリジナル楽曲のほうが伸びたのか(これは実感です)

ここから先はデータではなく、運用してきた側の解釈です。理由は3つあると考えています。

  1. 比べられる相手が変わる。流行曲を使うと、その曲を目当てに見ている人の中で「この曲の動画としてどうか」で評価されます。自分たちの声で撮れば、比較対象は同じ曲の動画ではなく、その人のフィードに流れてきた他の動画になります。
  2. 会話は最初の1秒で意味が始まる。音楽から始まる動画は、盛り上がるまでに数秒かかることがあります。「昨日、部長がさ」から始まる動画は、1秒目から内容が入ります。
  3. 二次利用ができる。自分たちの音であれば、その音源を別の動画で使い回すことも、広告に転用することも、権利の心配なしにできます。

3つ目は地味ですが、実務ではかなり効きます。反応の良かった投稿をそのまま広告配信する使い方(Spark Ads)を考えているなら、最初から自社の音で撮っておくほうが後がラクです。この話は「TikTok広告とは?費用・始め方・効果」で詳しく扱います。

【一次データ】トレンドには賞味期限がある|2021年→2025年で落ちた数字

もう1つ、あまり他社が出さないデータを出します。同じ会社が同じ路線で撮り続けたときに、年を追って数字がどう変わったかです。記録シートに記載のある136本を、投稿年で割ったものです。

投稿年 本数 平均再生数 平均エンゲージメント率
2020年 3本 1,700,000回 1.71%
2021年 84本 2,232,238回 4.50%
2022年 26本 1,711,858回 3.17%
2023年 7本 1,324,829回 2.46%
2024年 1本 1,800,000回 2.52%
2025年 15本 1,689,627回 2.79%

ピークの2021年と直近の2025年を並べると、こうなります。

2021年 → 2025年の変化

平均再生数:223万回 → 169万回(およそ4分の3に)
平均エンゲージメント率:4.50% → 2.79%(およそ6割に)

再生数の落ち込みが約24%に対して、エンゲージメント率は約38%落ちています。「見られてはいるが、以前ほど反応されない」という形の劣化です。

先に限界を開示します。年ごとの本数が大きく偏っています。2021年は84本ある一方で2024年は1本しかなく、2024年の「平均」は1本の数字そのものなので、平均として読む意味がありません。2023年の7本も母数として心細いです。だから読むべきは各年の細かい上下ではなく、2021年と2022年以降のあいだにある段差と、その後も戻っていないという傾向のほうです。

それから、シートには「企画の路線を変えたかどうか」の記録はありません。以下の解釈は代表(豊田)の記憶と運用実感に基づくもので、シートから導いた事実ではありません。

豊田優人

正直に言うと、2021年と同じ企画・同じ撮り方で2025年に撮っても、当時の8割も出ません。エンゲージメント率は半分近くです。腕が落ちたわけではないと思っています。周りが上手くなって、同じ土俵の本数が何十倍にも増えた。これは「あの頃バズった手法」をそのまま真似しても再現しないことの、いちばん正直な証拠だと思うので、格好は悪いですが出しておきます。

この段差が、トレンド記事を読むときのいちばん重要な補正になります

ネット上の「TikTokで伸ばす方法」の多くは、2020〜2022年の成功体験をもとに書かれています。弊社の数字がまさにそうで、136本のうち84本が2021年の投稿です。つまり弊社が語れる「バズった話」も、大部分は5年前の環境の話ということになります。

だから、トレンドや手法の記事を読むときは必ず「それは何年の話か」を見てください。そして自分で調べる(3章)ことに戻ってきてください。ここが、この記事が一覧を載せない理由の実データ側の裏付けです。情報は、他人の記事より自分の観測のほうが必ず新しい。

「じゃあ今から始める会社は不利なのか」への回答

ここまで読むと、当然こう思うはずです。「2021年が良かったなら、今から始めても遅いのでは」と。ここには正直に答えます。2021年と同じ数字は出ません。ただし条件は当時より良くなっている面もあります。

項目 2021年ごろ 今
競合の本数 少ない。出せば見られた 多い。同じ土俵の本数が桁違いに増えた(不利)
視聴者の層 若年層に偏っていた 全年代で33.2%(令和6年度)※2。BtoBの決裁者にも届く(有利)
お手本の量 ほぼない。全部が手探り 同業の成功例が実際に見られる(有利)
編集の手間 手作業が多い 自動字幕など、1本あたりの制作時間が大幅に短い(有利)
1本あたりの期待値 高い 低い。本数と継続で取り返す設計が必要(不利)

つまり戦い方が変わっただけです。2021年は「1本の大当たりを狙う」で成立しましたが、今は「当たり率の低さを本数と継続で埋める」設計になります。だから重要なのは1本の企画の派手さより、9章で書く毎週撮れる型のほうです。トレンドを追う体力を型づくりに回したほうが、今の環境では合理的だと考えています。

分かれ道を示す矢印と疑問符
イメージ(写真:photoAC)

自社は乗るべきか?判断の分岐表

では、あなたの会社はトレンドに乗るべきなのか。ここを表で分岐させます。左の状況に当てはまるものが多い側が、あなたの答えです。

自社の状況 判断 理由と、代わりにやること
企画から投稿までが1〜2日で回せる 楽曲・話題に乗ってよい 速さが武器になる。上り坂の曲に月1〜2本ぶつける
企画から投稿までに3日以上かかる(社内確認が2回以上入る) 楽曲・話題には乗らない 間に合わない。寿命の長いフォーマット(③)だけ借りる
目的が短期の認知・イベント告知 乗ってよい 瞬間の露出量が価値になる場面
目的が採用・信頼の獲得 基本的に乗らない 一貫性のほうが効く。流行りに寄せると「うちの会社らしさ」が消える
医療・金融・士業など表現の規制が強い業種 乗らない ミームの元ネタの意味を確認しきれない。オリジナル企画のほうが安全
投稿を始めて1〜3ヶ月目で、自社の型がまだない フォーマットだけ借りる 型の当たりを探す段階。楽曲より「あるある」構文の借用が近道
月8本以上安定して出せている 実験枠として乗る 月1〜2本を実験に充てる。当たったら型に取り込む
出演者が固定で、社内のキャラが立っている 乗らなくてよい すでに自社の型がある。そこを深掘るほうが投資効率が高い
迷ったときの原則
楽曲かフォーマットだけを借りて、中身は自社のものにする。これが失敗しにくい乗り方です。逆に、いちばん失敗するのは「流行っている動画をそのまま真似する」こと。真似は元ネタに勝てないうえ、自社を見に来た人に何も残しません。乗るときは借りるのは器だけと決めてください。

乗った動画の合否を、どの数字で決めるか

「月1〜2本を実験枠に」と書きましたが、実験なので合否の基準を先に決めておかないと意味がありません。基準がないと、伸びなかったときに「トレンドはうちに合わない」で終わり、伸びたときも何が効いたのか残りません。弊社が使っている基準はこれです。

見る数字 合格の目安 合格したら 不合格なら
再生数 自社の直近10本の中央値を上回る 同じ型で2本目を作る 1本で判断しない。同じ層のトレンドでもう1本試す
シェア・保存 直近10本の平均を上回る 型として採用。定期シリーズ化を検討 再生が伸びても採用しない(届いただけで刺さっていない)
コメントの中身 否定より共感・自分語りが多い コメントを次の企画のネタに使う 文脈がズレていた可能性。7章の手順3に戻る
プロフィール表示数 投稿前より増えている プロフィールとリンク先を整える 興味が自社に向いていない。器だけ借りる原則に戻る

数字はインサイトの「コンテンツ」タブで見られます(開き方は3章の方法4)。中央値や平均は、直近10本を書き出して計算するだけです。重要なのは、投稿する前に基準を書いておくこと。あとから決めると、必ず結果に合わせた基準になります。

この表で自社の行を見つけたら、そこに書いてある「代わりにやること」だけ持って7章に進んでください。

乗ると決めたときの実務|楽曲の権利とビジネスアカウント

「乗る」と決めた会社が最初につまずくのが、ここです。企業アカウントは、一般の楽曲ライブラリにある曲を商用目的では使えません※3。TikTokには企業向けの「商用音楽ライブラリ(Commercial Music Library)」が用意されていて、企業はそこから選ぶのが原則になります。

ここを知らないまま流行曲を使い続けると、あとから動画がミュートになったり削除されたりする可能性があります。手順を渡します。

手順1:アカウントをビジネスアカウントに切り替える

商用音楽ライブラリを使うにも、3章の方法4で触れたインサイトを見るにも、ビジネスアカウント(プロアカウント)が前提になります。まだの場合は先にここを済ませてください。無料で、フォロワーや投稿が消えることもありません。

  1. TikTokアプリでプロフィールを開く
  2. 右上のメニュー(三本線)をタップ
  3. 「設定とプライバシー」を開く
  4. 「アカウント」(アカウント管理系の項目)を開く
  5. 「ビジネスアカウントに切り替える」を選び、業種カテゴリを選択して完了

所要は3分ほどです。切り替えると、インサイト(パフォーマンスデータやオーディエンスの分析)※5と商用音楽ライブラリ※3が使えるようになります。

手順2:商用音楽ライブラリから曲を選ぶ

投稿時の音源選択画面で、ビジネスアカウントの場合は商用利用が許諾された楽曲が表示されます(表示の切り替えや専用のタブが用意される場合があります)。ここから選べば、権利の心配をせずに使えます。

ただし正直に言うと、商用音楽ライブラリの中に「今まさに流行っている曲」が入っていることは多くありません。つまり企業アカウントは、楽曲トレンドに乗ろうとした時点でハンデを負っているということです。この構造も、4章のデータが「自社の音で撮ったほうが伸びた」になった一因だと考えています。

他人のオリジナル音源を使うときは、さらに慎重に

流行っているのが「一般ユーザーが作ったオリジナル音源」である場合もあります。この場合、権利関係は楽曲ライブラリの話とは別で、自社で使う許諾があるかを判断する必要があります。判断に迷う場面が多いので、弊社では原則使いません。使う必要があるなら、事前に自社の法務・顧問に確認してください。記事や代行会社の「大丈夫です」を根拠にしないほうがいい領域です。

手順3:乗る前に、その音の「上位20本」を全部見る

権利のほかに、意味の問題があります。流行っている音やお題には、元ネタの文脈があります。文脈を知らずに乗ると、意図しない意味の動画になることがあります。

確認は簡単です。3章の方法3と同じく曲名をタップして楽曲ページを開き、その曲を使った動画の上位20本を流し見してください。5分かかりません。20本見れば、その音がどういう場面で、どんなトーンで使われているかがわかります。全部が同じ方向を向いていたら、それがその音の文脈です。自社が出しても違和感がない方向かどうかだけ判断してください。

豊田優人

以前、意味を調べずに海外で流行っていた音に乗ったことがあります。ノリが良かったので使ったのですが、コメント欄で「その使い方は違う」と指摘されました。悪意はなかったし炎上まではいきませんでしたが、社員が出ている動画でそれをやってしまったのが申し訳なくて。それ以来、乗る前に上位20本を全部見るのをルールにしています。5分の作業を惜しんだ結果としては、高い授業料でした。

トレンドに乗って外す5つのパターン

弊社と、支援先で実際に見てきた失敗の型です。どれも回避方法とセットで書きます。

失敗の型 何が起きるか 回避方法
①権利を確認せずに使う あとから音が消える・動画が削除される 7章の手順1と2。ビジネスアカウント+商用音楽ライブラリ
②意味を知らずに乗る 意図しない受け取られ方をする。出演した社員に迷惑がかかる 7章の手順3。上位20本を流し見して文脈を確認
③乗るのが遅い 同じ動画が何万本も並んでいる中に埋もれる 3章の方法3。3日で件数が増えている曲だけに乗る
④トレンドに合わせて自社の型を崩す 既存のフォロワーが離れる。何のアカウントか分からなくなる 実験は月1〜2本に上限を決める。残りは自社の型で出す
⑤社員に無理をさせる 社内の協力が得られなくなり、更新自体が止まる 踊る企画は必須ではない。会話・実務の場面で成立する企画に寄せる

このうち、いちばん取り返しがつかないのは⑤です。動画が伸びなかったのは撮り直せますが、社内の空気が冷えると次の撮影ができません。企業のTikTokがいちばん多く死ぬ原因は、炎上でも権利でもなく「社内で協力してもらえなくなること」です。

そして踊る企画は必須ではありません。次の章で、そのデータを出します。

乗らない道を選ぶ|自社の「型」をつくる

弊社が選んだのは、トレンドを追わずに自社の型を深掘る道でした。その内訳がこれです。記録シートに記載のある136本を、シート上のジャンルラベル(diversificationlabel)で分けたものです。

ジャンルラベル 本数 平均再生数
Comedy 71本 2,056,313回
Diary & VLOG 17本 1,975,929回
Scripted Comedy 11本 2,581,818回
Finger Dance & Basic Dance 10本 1,590,000回
Pranks 9本 1,644,444回
Scripted Drama 4本 1,967,925回
Singing & Instruments 3本 2,233,333回
Random Shoot 3本 1,833,333回
Dance 2本 1,736,900回
Work & Jobs 1本 3,700,000回
Mukbangs & Tasting 1本 2,800,000回
Hair 1本 1,300,000回
Photography 1本 1,200,000回
Outfit 1本 1,200,000回
Lip-sync 1本 1,100,000回

※このラベルはシート上のジャンル分類の記録です。企画の作り込み度合いや、トレンド楽曲に乗ったかどうかを表すものではありません。本数1〜3本の区分は平均として読める母数ではないので、参考程度に見てください。

ここから読み取れることを、2つだけ挙げます。

1つ目。本数が集まっているのはComedy(71本・平均206万回)で、全体平均の約201万回と同水準です。つまり弊社の実績は、特殊な当たりではなく「会社の日常を笑いにする」を71本続けた結果の積み上げだということになります。

2つ目。ダンス系のラベル(Finger Dance & Basic Dance 10本・平均159万回/Dance 2本・平均174万回)は、合わせて12本で平均約161万回。全体平均の約201万回を下回っています。ただしこれはあくまでジャンル分類での比較で、「ダンス企画がトレンド楽曲に乗った動画だった」という記録はシートにありません。断定はできません。言えるのは、弊社ではダンス系のラベルが付いた動画が、平均としては上位ではなかったということだけです。

型のつくり方は、3つの問いに答えるだけ

トレンドを追わない代わりに何をするか。弊社が使っている問いはこの3つです。

問い1
うちには、毎週撮れる「あるある」が何個あるか

社内の不満・笑い話・お客様からよく聞かれること。これを30個書き出せるなら、しばらくは企画に困りません。30個出ないなら、まず社内でヒアリングする時間を取ってください。書き出し方の手順は「TikTok動画の作り方」の企画の章で扱います。

TikTok動画の作り方 TikTok動画の作り方|100万再生超え137本・累計4.61億再生の会社が、企画・撮影・編集・投稿の全工程を実データで公開します
問い2
毎回同じ顔が出られるか

型は人で覚えられます。出演者が毎回変わるアカウントは、視聴者側に「この人の動画だ」という記憶が残りません。1〜2人でいいので、続けて出られる人を決めてください。無理に社長や役員でなくて大丈夫です。

問い3
どの数字が上がったら続けると決めるか

再生数ではなく、3章の方法4で見たシェアと保存で決めるのがおすすめです。「4週やってシェアが増え続けていたら続ける」のように、先に基準を書いておく。これがないと、伸びない期間に社内の応援が消えて止まります。

この3つが埋まれば、トレンドは「乗るもの」から「観測するもの」に変わります。毎週3章の方法1と方法4を回して、月に1〜2本だけ実験枠でトレンドを試す。当たったら型に取り込む。これが弊社が5年やってきた距離感です。

TikTokトレンドのよくある質問

この記事では答えません。答えた瞬間に古くなるからです。代わりに3章の方法1を使ってください。ブラウザで ads.tiktok.com/business/creativecenter/ を開き、トレンド分析のメニューから地域を「日本」、期間を「過去7日間」に絞れば、今週の楽曲・ハッシュタグが一覧で見られます※4。所要5分です。この記事を読むより、そこを開くほうが確実に新しい情報が手に入ります。

弊社の目安は週30分です。内訳は、公式のトレンド確認ページで10分(3章の方法1)、自社インサイトのシェアと保存で10分(方法4)、残り10分で気になった曲の使用動画数の記録(方法3)。同業10社の観測(方法5)とサジェストの定点観測(方法2)は月1回、30分ずつで足ります。毎日見る必要はまったくありません。毎日見ると、上り坂かどうかの判断がかえって鈍ります。

いいえ。弊社の記録シートに記載のある136本では、ダンス系のラベルが付いた12本の平均再生数は約161万回で、全体平均の約201万回を下回っていました。最も伸びた830万回の動画も、踊りではなく11秒の動画(シート上はComedy分類・自社オリジナル楽曲)です。ただしこれは弊社のデータであって、ダンス企画が一般に効かないという意味ではありません。「踊らないと伸びない、は少なくとも事実ではない」という反証として使ってください。社内を説得する材料が必要なら、この段落ごと見せていただいて構いません。

撮ったときの自分たちの声と現場の音をそのまま使うのが基本です。弊社の136本では116本がこの形(自社オリジナル楽曲)で、平均206万回・エンゲージメント率3.93%でした。BGMが欲しい場合は、ビジネスアカウントに切り替えて商用音楽ライブラリから選んでください(7章に手順があります)。会話が主役の動画なら、BGMは声が聞き取れる音量まで下げるほうが伸びます。編集での音量バランスの取り方は「TikTok動画の作り方」で扱います。

オーガニック投稿で使えた音源が、広告では使えない場合があります※3。広告転用を考えているなら、最初から自社の音か商用音楽ライブラリで撮っておくのが確実です。反応の良かった投稿をそのまま広告配信する形式(Spark Ads)は費用効率が良い使い方なので、この点を先に潰しておく価値はあります。詳しくは「TikTok広告とは?費用・始め方・効果」で扱います。

追う意味はありますが、乗る意味は薄いことが多いです。BtoBで効くのは「働く人の共感」の切り口で、これは流行曲より寿命の長いフォーマット(2章の③)で成立します。決裁者も普通にTikTokを見ていますし、総務省の令和6年度調査でも利用率は全年代で33.2%です※2。追うのは「今どんな見せ方が受け入れられているか」の観測として。乗るのは自社の領域に関係する話題が来たときだけ、で十分です。

そのままでは再現しにくい、というのが弊社の実測です。記録シートに記載のある136本では、平均再生数が2021年の223万回から2025年の169万回へ、エンゲージメント率が4.50%から2.79%へ落ちています。ただし年ごとの本数が偏っている(2021年84本/2024年1本)ので、読むべきは各年の細かい上下ではなく傾向のほうです。使えなくなったのは「同じものをそのまま出す」やり方で、企画の考え方(誰の日常に触れるか)自体は今も効いていると考えています。だからこそ、今の環境を自分で観測する手順(3章)が必要になります。

まとめ:観測は毎週、乗るのは月1本

最後に要点をまとめます。

この記事の要点
  • この記事にトレンド一覧はありません。3ヶ月で古くなり、公式のトレンド確認ページに鮮度で勝てないからです
  • トレンドは4層に分けて考える。楽曲(寿命2〜4週)/ハッシュタグ(2週〜2ヶ月)/フォーマット(3ヶ月〜1年以上)/話題(数日〜数週)。企業がいちばん恩恵を受けるのはフォーマット
  • 腐らない一覧は「動画の型」のほう。寿命の長いフォーマット8選(あるある/ビフォーアフター/社内インタビュー/検証/FAQ/裏側/ありがちな一言/vs)を2章に置いたので、来週も撮れるものを1つ選ぶ
  • 調べる手順は5つ。公式のトレンド確認ページ(地域=日本・期間=過去7日)/検索サジェスト/楽曲の使用動画数を3日空けて2回記録/自社インサイトのシェアと保存/同業10社を週1回
  • 観測は週30分+月1時間。曜日を固定し、記録先を1つのシートにまとめて、担当者が休んでも代われる形にする(3章の週次ルーティン表)
  • 乗る前に3つ確認する。まだ上り坂か・自社の文脈に翻訳できるか・公開までに間に合うか
  • ハッシュタグは大(トレンド)・中(テーマ)・小(自社)を混ぜて3〜5個。中身と関係のない言葉は付けない
  • 実験枠は投稿する前に合否の基準を書く。採用の判断はシェアと保存で行い、再生数だけで採用しない(6章の表)
  • 弊社の記録シートに記載のある136本(平均ER3.88%)では、自社オリジナル楽曲116本が平均206万回・ER3.93%、外部の既存曲・流行曲20本が平均170万回・ER3.54%。再生数トップ15のうち14本が自社オリジナル楽曲でした
  • ただし差は約1.2倍で、外部楽曲側の平均170万回も低くありません。言えるのは「乗らなくても伸びる」までで、「乗るな」ではありません
  • 同じ会社が撮り続けても数字は落ちる。2021年(84本)平均223万回・ER4.50% → 2025年(15本)平均169万回・ER2.79%。年ごとの本数は偏っているので、細かい上下ではなく段差と傾向を読むこと
  • 企業アカウントは一般の楽曲ライブラリを商用目的で使えません。ビジネスアカウントへの切替(7章に手順)+商用音楽ライブラリが前提です
  • 乗る前に、その音を使った上位20本を流し見して文脈を確認する。5分の作業です
  • いちばん多い死因は炎上でも権利でもなく社内の協力が得られなくなること。踊る企画は必須ではありません
  • 弊社の136本では、ダンス系ラベルの12本が平均約161万回で全体平均の約201万回を下回りました(ジャンル分類での比較であり、トレンド楽曲使用の記録ではありません)

今日からやることは、これだけです。

  1. ブラウザで公式のトレンド確認ページを開き、地域を「日本」・期間を「過去7日間」に絞って5分見る(3章の方法1)
  2. アカウントがまだ個人のままなら、ビジネスアカウントに切り替える(7章の手順1。3分で終わります)
  3. インサイトを開いて、直近の動画のシェアと保存を書き出す(3章の方法4)
  4. 社内の「あるある」を30個書き出して、毎週撮れる型を1つ決める(9章の問い1)
  5. トレンドの実験枠は月1〜2本までと決めて、残りは自社の型で出す

この順でやれば、来月からは「今なにが流行っているんですか」を誰かに聞く必要がなくなります。トレンドを追いかける立場から、観測して選ぶ立場に変わるからです。

豊田優人

うちも最初の1年は、流行っているものを片っ端から試していました。今振り返ると、その時間の大半は「自社のあるあるを30個書き出す」に使ったほうが良かったと思います。トレンドは追う相手ではなく、天気予報みたいに毎週見るものでした。数字ごと置いておくので、同じ回り道はしないでください。

「うちの業界だと、どこまでトレンドに乗るべきか」「毎週の観測を誰がやるのか」といった運用の設計を具体的に詰めたい方は、お気軽にご相談ください。この記事で公開したデータをもとに、貴社の状況に合わせた形をご提案します。

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この記事を書いた人

株式会社BEEM代表取締役 豊田優人

豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役

フォロワー約47万人の会社アカウントを含む自社TikTokアカウント群を運用し、100万再生を超えた動画は137本、累計4.61億再生。会社アカウントの企画を自ら担当。複数の記事で取り上げられたほか、大学での登壇歴がある。株式会社BEEMは「SNS採用のみで採用したメンバーで構成される会社」として、TikTokの運用支援・広告運用を提供している。

出典

  1. TikTok社発表「TikTok、日本国内のMAUが4,200万を突破」2025年11月27日(自社調べ。TikTokおよびTikTok Liteの月間アクティブユーザー数、重複を除く。2026年7月26日にURLの実在と「MAUが4,200万を突破」の記載を確認済み) https://newsroom.tiktok.com/tiktok-mau-4200?lang=ja-JP
  2. 総務省情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月公表)。TikTok利用率:全年代33.2%。2026年7月26日にURLの実在と当該数値を確認済み。なお令和7年度版が令和8年6月26日に公表されているため、公開前に新年度の数値を確認すること(冒頭コメント6に手順あり) https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
  3. TikTok for Business ヘルプセンター「About the Commercial Music Library(商用音楽ライブラリについて)」。同ページに「Businesses cannot use the general music library for commercial usage」(企業は一般の楽曲ライブラリを商用目的で使用できない)と明記されており、商用音楽ライブラリの適用範囲としてオーガニック投稿(デュエット・リアクション・つぎ足しを含む)/動画広告/ブランドコンテンツの3つが挙げられている。2026年7月26日にURLの実在と上記記載を確認済み https://ads.tiktok.com/help/article/commercial-music-library
  4. TikTok Creative Center(TikTok公式が無料公開しているトレンド分析ツール。楽曲・ハッシュタグ・クリエイター・動画の各トレンドを、地域と期間で絞り込んで確認できる。ページ上部に「Trends」への導線があることを確認。ただしメニュー名称および閲覧に必要なアカウント条件は変更されることがあるため、本文では画面名を断定していません。2026年7月26日にURLの実在とページがCreative Centerであることを確認済み) https://ads.tiktok.com/business/creativecenter/
  5. TikTok for Business ヘルプセンター「TikTokアカウントの種類」(個人アカウントとビジネスアカウントの違い、およびビジネスアカウントに「パフォーマンスデータ指標、オーディエンスインサイト、クリエイティブツール」が備わる旨の記載を参照。2026年7月26日にURLの実在と上記記載を確認済み。切替手順そのものは本ページに記載がないため、7章の手順は弊社の実機操作に基づく記述で、UI名称は公開直前に実機確認する運用としています) https://ads.tiktok.com/help/article/tiktok-and-tiktok-business-account-types?lang=ja
本文中のデータについて
本文中の再生数・エンゲージメント率・楽曲区分別/投稿年別/ジャンル別の集計値は、特記なき限り弊社(株式会社BEEM)の実測データ(自社調べ)に基づきます。TikTokの集計値は「記録シートに記載のある136本」(2020年9月〜2025年5月投稿分)に限った数字で、会社アカウント全体の数字(公開中の607本で100万再生超え137本・累計4.61億再生、2026年10月13日時点)とは範囲が違います。この136本は無作為抽出ではなく反響のあったものを中心に記録された集まりで、84本が2021年の投稿に偏っています。使うべきは再生数の絶対値ではなく、同じ条件下での相対差のほうです。自社TikTokアカウント(@beem_official)は公開されているので、いつでも見に行って確かめていただいて大丈夫です。
シートに記録されているのは各動画の楽曲名・投稿日・再生数・いいね・コメント・秒数・ジャンルラベルです。「トレンドに乗ったかどうか」「企画の作り込み度合い」「路線を変えたかどうか」は記録されていません。本文でそれらに触れている箇所は、すべて代表(豊田)の運用実感として明示しています。
楽曲の権利・ビジネスアカウント・トレンド確認ツールに関する記載は、TikTok公式ヘルプの内容と弊社の運用経験に基づく実務知見です。仕様・ポリシー・画面名称は改定されるため、実行の直前に公式ヘルプで最新の内容をご確認ください。

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