最終更新日:2026年10月13日
執筆・監修:豊田優人(株式会社BEEM 代表取締役)
- TikTok広告の相場は調べたが、「じゃあうちはいくら出すのが正解なのか」が決められずにいるマーケ・販促担当者の方
- 来期の予算表に金額を入れなければならず、その金額の根拠と、税込でいくらになるかまで社内で説明できる形で持ちたい方
- すでに少額で出してみたが、成果の良し悪しが判断できず、増やすか止めるか迷っている方
TikTok広告の月額は、媒体の最低出稿額から決めるものではありません。「クリエイティブ何本を、1本あたりいくら流すか」の掛け算で決まります。弊社が自社の採用募集で回した実績は、予算20万円・約40日・クリエイティブ20本でリード95件(CPL2,105円)。1本あたり約1万円を流した計算です。この「1本あたり1万円」を自社の本数に掛けたものが、あなたの会社の初月予算の下限です。
「TikTok広告 費用」で検索して出てくるのは、たいてい相場の一覧表です。最低出稿額はいくら、CPMの目安はいくら、代理店手数料は何%。読み終えても、手元の予算表の空欄は埋まりません。
本当に困っているのは相場を知らないことではなく、「うちの場合はいくらが正解なのか」を自分で決められないことのはずです。決められないのは、金額と「その金額で何ができるか」が結びついていないからです。
この記事は、そこだけを扱います。弊社が実際にTikTok広告へ20万円を投じたときの数字を全部開示して、そこから各レンジで「クリエイティブを何本、どんな配分で入れられるか」を逆算します。読み終わった時点で、1日予算・稼働日数・本数・ジャンル配分・「いくらまでなら合格か」のライン、そして税込でいくら稟議に書くかまで決まっている状態を目指します。
※親記事をまだお読みでなくても本記事は読み進められるように、参照先の要点は各所に1行ずつ添えてあります。

TikTok広告の費用は「どの深さで課金されるか」で変わる
いきなり月額の話に入る前に、1つだけ整理させてください。ここを飛ばすと、あとの章の数字がぜんぶ「なんとなくの相場」に見えてしまいます。
TikTok広告の課金方式には、CPM・CPC・CPV・oCPMといった名前が並びます。ただ、これを「4つの選択肢」だと思って比較するのは、たぶん間違いです。これは選択肢ではなく、同じ1本のお金の流れを、どの深さで切ったかの違いです。
同じ1万円が、深さによって別のものに見える
弊社が実際に20万円を投じたときの数字を、1万円あたりに割り戻してみます。これが本記事でいちばん大事な感覚です。
| 深さ | 1万円で買えるもの | この数字の出どころ |
|---|---|---|
| ①表示(インプレッション) | 約2万回の表示 | CPM500円で換算(弊社の運用経験に基づく体感レンジの中位) |
| ②クリック | —(自社の管理画面で確認する段) | この記事では弊社のクリック数を載せていません |
| ③リード(申込・問い合わせ) | 約4.75件(CPL2,105円) | 弊社実績値 |
| ④商談(面談) | 約1.35件(面談単価7,407円) | 弊社実績値 |
①から④は、別々の商品ではありません。同じ1万円が、上から下へ落ちていく途中の各段階を数えているだけです。2万回表示された結果としてクリックが起き、その結果として4.75件のリードになり、そのうち1.35件が商談になった。それだけの話です。
だから「CPCで買うと安い」とか「CPMのほうが得」という比較は、そもそも成り立ちません。選べるのは課金方式ではなく、キャンペーンの目的です。目的(リーチ/トラフィック/リード獲得/コンバージョン)を選べば、それに合った課金方式と最適化が自動でセットになります。実務では、リード獲得を選べばoCPM(コンバージョン最適化された実質CPM課金)で動く、というのがいちばん多い形です。
①だけは弊社の運用経験に基づく体感レンジによる換算で、公的統計ではありません。
単価の桁だけ、先に置いておきます
「何が起きたら課金されるか」は名前のとおりです。CPMは1,000回表示されたとき、CPCは1回クリックされたとき、CPVは一定秒数以上再生されたとき。oCPMだけは表示に対する課金ですが、コンバージョンしやすい人に寄せて配信されるので、評価は実質CPA(獲得単価)で行います。方式ごとの選び方と使いどころは親記事「TikTok広告とは?」に整理してあるので、ここでは単価の桁だけを置きます。
弊社の運用経験に基づく体感レンジで言うと、CPMは1,000回表示あたり300〜800円、CPCは1クリックあたり30〜150円、CPVは1再生あたり数円台です。この数字をこのまま自社に当てないでください。理由を次に書きます。
本記事の300〜800円は、それとは別物です。弊社が自社の広告アカウントを回してきた運用経験に基づく体感レンジを書いています。
レンジが狭いのは、精度が高いからではありません。条件が狭いからです。弊社の配信は「国内・採用オファー・広めのターゲティング・オリジナル音源の動画」にほぼ固定されていて、業種も季節も入札競争もばらついていません。外部相場の100〜1,000円は、そのばらつきを全部含んだ幅です。自社の条件が弊社と違うなら、外側の100〜1,000円のほうを見てください。
豊田優人
単価は「交渉」では下がりません
ここは費用の記事なので、期待を持たせないように先に書いておきます。TikTok広告の単価は、値引き交渉や設定のテクニックでは下がりません。運用型広告はオークションなので、単価は「同じ枠を狙っている他社の入札額」と「自社の広告がどれだけ見られるか」で決まります。
下げる手段は、実質1つだけです。クリエイティブを良くして、同じ表示回数からより多くのクリックとリードを引き出すこと。CTRが2倍になれば、CPCは半分になります。単価表とにらめっこする時間があるなら、動画をもう1本作ったほうが早い、というのが率直なところです。
ちなみに「代理店を通せば媒体費そのものが安くなるのか」という質問もよくいただきますが、答えはノーです。理由は6章に書きました。
月額は「1日予算 × 稼働日数」でしか決まらない|お金が漏れる3箇所
月額の決まり方そのものはシンプルで、掛け算1回です。1日予算 × 稼働日数 = 月額。そして管理画面上の下限は1日約3,100円(広告グループの1日予算20ドル・1ドル=155円換算)※1です。
この下限の内訳と、「TikTok広告は月3万円台から出せる」という言い回しの正体(=下限の金額を10日だけ回した場合の金額であって、毎日配信して月3万円台にはならない、という話)は、親記事「TikTok広告とは?」の費用の章に書いたのでそちらに譲ります。本記事が扱うのは、その先です。
その先というのは、これです。この式のとおりに予算表を作っても、月末の請求額は予算表と一致しません。弊社も最初の月に経理から確認が入りました。ズレる箇所は、だいたい次の3つです。
漏れ①:日予算は「上限」であって「消化額」ではない
1日予算を5,000円に設定しても、毎日きっちり5,000円使われるわけではありません。配信量が出ない日は下振れし、逆に配信が伸びる日は設定額を超えて消化されることがあります(週単位で均される設計になっているため)。
実務上は、月額は設定額の±20%程度は動くものと見て、予算表には幅を書いておくのが安全です。「1日5,000円 × 30日 = 15万円」ではなく「12万〜18万円」と書いて稟議を通しておくと、あとで説明に困りません。この幅を実際の請求書の金額まで落とすとどうなるかは、FAQのQ1に具体例で書きました。
漏れ②:学習期間中に触ると、そこまでの費用が捨て金になる
ここがいちばん大きい漏れです。そして費用の記事でこの話を書いているものが、ほとんどありません。
TikTok広告は配信しながら「誰に当たるか」を機械が探すタイプの媒体なので、配信開始からしばらくは学習期間になります。この期間中に日予算を大きく動かしたり、ターゲティングを変えたり、広告を作り直したりすると、学習がリセットされて振り出しに戻ります。
そこまでに使った金額は、成果にも学習にも残りません。純粋な捨て金です。月10万円の予算で5日目に触ってしまえば、約1.7万円が何にも化けずに消えたということになります。
- 配信開始から最低7日間は、何も触らない。数字が悪くても我慢する(ここでいちばん手が出ます)
- 日予算の変更は、1回あたり±20%以内・3日以上あけて。倍にしたいなら3回に分ける
- 予算を増やすときは、新しい広告グループを複製せず、既存の日予算を上げる。複製は学習ゼロからのやり直しになります
- 負けている広告を止めるのはOK。止めるのは学習を壊しません。壊すのは「設定を変えること」です
※上記の日数と%は、弊社の運用経験に基づく社内ルールです。媒体が公表している規定値ではありません。
漏れ③:稼働日数を分割すると、学習が回数ぶんリセットされる
「月15万円を、上旬に7日・下旬に7日」のように分けて出したくなる場面があります。予算管理としては合理的に見えますが、広告の効率としてはかなり損です。学習が2回発生するからです。
同じ金額なら、日予算を半分にして30日連続で回すほうが強い。これは弊社が実際にやって確かめました。参考までに、冒頭で出した20万円の配信は約40日を連続で回した設計で、1日あたり約5,000円。媒体の下限の1.6倍の水準です。
【本記事の核】月3万・10万・30万・100万円で、何本入れられるか
ここが本題です。相場の一覧表が役に立たないのは、金額と「その金額で何ができるか」が結びついていないからでした。4つのレンジで、実際に何が起きるかを順番に見ていきます。
その前に:予算の下限を決めるのは、媒体ではなく「クリエイティブの本数」です
結論から書きます。TikTok広告で必要な月額は、次の式で決まります。
1本あたりの配信費 × クリエイティブ本数 = 必要な月額
そして1本あたりの配信費の目安は、約1万円です。これは弊社の実績から出しています。予算20万円 ÷ クリエイティブ20本 = 1本あたり1万円。この規模を約40日回して、リード95件(CPL2,105円)という結果になりました。
なぜ本数から逆算するのか。TikTok広告は「どの動画が当たるか、事前には分からない」のが前提の媒体だからです。1本に予算を集中させても、その1本が外れなら全額が無駄になります。複数本を同時に入れて、機械に選ばせる。これがいちばん確実な使い方です。
ただし、ここには落とし穴があります。「入れられる本数」と「判断できる本数」は違うということです。
- 入れる本数:多いほうがいい。機械の選択肢が増えるので、当たりを引く確率が上がります。弊社は20万円に20本を入れました
- 判断できる本数:入れた全部ではありません。配信が寄るのは上位数本で、下位の動画には数字がほとんど付きません。「この動画は良かった/悪かった」と言えるのは、せいぜい上位5本までです
つまり「たくさん入れて、少数を評価する」のが正しい形です。「3本しか作れないから3本入れる」ではなく、「作れるだけ入れて、評価は上位に絞る」。ここを取り違えると、本数を絞りすぎて当たりを探せない設計になります。
本数だけでなく「ジャンルの配分」まで決める
ここからが、費用の記事としてもう一段踏み込むところです。「何本入れるか」が決まったら、次は「その本数の内訳」を決めてください。全部同じ型で作ると、当たりを探す意味が薄れます。
配分の根拠として、弊社のシートに記録のある136本をジャンル別に集計した数字を出します。
| ジャンル | 本数 | 平均再生数 | 1本あたりの制作の重さ |
|---|---|---|---|
| Comedy(社内あるあるを短く切り取る形) | 71本 | 約206万回 | 軽い(台本なし〜箇条書き程度/撮って出しに近い) |
| Scripted Comedy(台本のある寸劇) | 11本 | 約258万回 | 重い(台本・配役・リハが要る) |
| Diary & VLOG | 17本 | 約198万回 | 軽い |
| Pranks | 9本 | 約164万回 | 中 |
※シートに記録のある136本に限った集計値です(上位4ジャンルのみ抜粋)。弊社アカウント群の全投稿を対象にした数字ではありません。「制作の重さ」の列は集計値ではなく、弊社の内製体制での実感です。
面白いのは、いちばん平均再生数が高いScripted Comedyが、11本しか作られていないことです。理由は単純で、重いからです。台本を書き、配役を決め、リハをして撮る。同じ時間でComedyなら3本作れます。
これを費用の設計に翻訳すると、こうなります。本数を積む役はComedy、当たりの上限を上げる役はScripted Comedy。予算が小さいうちは前者だけでいい。予算が増えて本数に余裕が出てきたら、後者を少しずつ混ぜる。
そして本数が積めないことは、費用の観点でははっきり不利です。当たりは本数で探すものだからです。だから配分は軽い型を主力に、重い型を少数になります。
レンジ別|入れられる本数と、その内訳
| 月額 | 1日予算×稼働日数 | 入れられる本数 (1本1万円) |
内訳の目安(軽い型:重い型) | 判断できる本数 |
|---|---|---|---|---|
| 月3万円 | 約3,100円×10日 | 1〜3本 | 軽い型のみ。重い型は入れない | 0本 |
| 月10万円 | 約3,300円×30日 | 5〜10本 | 軽い型8:重い型2(重い型は1〜2本) | 上位3〜5本 |
| 月30万円 | 約1万円×30日 | 15〜30本 | 軽い型7:重い型2:その他1 | 上位5本 |
| 月100万円 | 約3.3万円×30日 | 50本〜 | 同比率+勝った型の派生を毎週追加 | 上位5本+派生の勝敗 |
※「内訳の目安」は集計値ではなく、上のジャンル別データを弊社の運用に当てはめた設計指針です。
レンジ別|稟議に書く金額と、合格ラインを超えるかどうか
「予算 → 表示回数 → クリック数 → リード件数」という換算は、親記事「TikTok広告とは?」にそのまま載せています。本記事で出すのは、その先です。予算を「稟議の紙に書く金額」と「その金額は合格ラインを超えるのか」に翻訳した表を置きます。4章で決める合格ラインのCPLを3,000円(リード1件の価値6,000円の50%まで、という例)と置いた場合の見え方です。
| 月額予算 (税抜) |
想定リード件数 (弊社CPL2,105円で単純換算) |
合格ラインCPL3,000円で見たときの判定 | 稟議に書く金額 (税込・±20%) |
|---|---|---|---|
| 月3万円 | 約14件 | 判定できない。件数が少なすぎて、実力なのか偶然なのか区別がつきません | 約2.6万〜4.0万円 |
| 月10万円 | 約48件 | 黒字(合格)。CPL2,105円は3,000円を余裕をもって下回ります | 約8.8万〜13.2万円 |
| 月30万円 | 約143件 (逓減込みなら約110件前後) |
黒字だが余裕は減る。CPLが1.4倍まで悪化すると合格ラインに触れます | 約26.4万〜39.6万円 |
| 月100万円 | 約475件 (逓減込みなら約240〜320件) |
赤字に転びうる。CPLが1.5倍(3,158円)を超えた時点で合格ラインを割ります | 約88万〜132万円 |
※リード件数は弊社のCPL2,105円(採用オファーの実績値)で割っただけの単純換算です。自社のCPLに置き換えて再計算してください。「稟議に書く金額」は税抜予算 × 1.1(税込) × 0.8〜1.2(2章の日予算の振れ幅)で出しています。CPL3,000円は4章の計算例の値です。
この表の使い方は2つです。1つは右端の列をそのまま稟議に転記すること。「月30万円」ではなく「26.4万〜39.6万円(税込・振れ幅込み)」と書いておけば、請求書が届いてから説明に呼ばれることがなくなります。もう1つは3列目を先に読むことです。月100万円の行が言っているのは、金額を上げるほど「合格ラインを割るリスク」のほうが先に増えるということで、これは予算の大小の話ではありません。
件数のほうは、置いた瞬間にほぼ嘘になります。弊社の20万円・95件を掛け算しただけで、予算を増やせば配信対象は関心の薄い層まで広がり、CPMは上がってCPLは悪化するからです(逓減)。それでも書いたのは、桁を掴むためです。月3万円なら十件台、月30万円なら百件台、月100万円でも千件には届かない。決裁の場で必要なのは小数点ではなく、この桁のほうです。
ここからが本題です。件数よりも、各レンジで「何が判断できるか」のほうが重要です。1つずつ見ていきます。
月3万円|これは予算ではなく「授業料」です
- できる:広告アカウントの開設、審査の通過、入稿から配信までの一連の流れを社内で経験する
- できる:すでにオーガニックで当たっている投稿を、Spark Adsで少しだけ押してみる
- できる:ピクセルが正しく発火しているか、リードがきちんと記録されるかの計測のテスト
- できない:CPLの良し悪しの判断。データ量が足りず、出てきた数字が実力なのか偶然なのか分かりません
- できない:クリエイティブの勝ち負けの比較。本数を入れられないうえ、1本あたりの配信量も足りません
- できない:30日連続の配信。媒体の下限で計算すると、3万円では10日ぶんしか回りません
厳しいことを書きますが、月3万円は「TikTok広告を試した」ことにはなりません。「TikTok広告の出し方を覚えた」ことにはなります。
それでも価値がゼロではないのは、計測の穴が3万円で見つかるからです。ピクセルが入っていない、フォームの完了ページが計測できていない、CRMと突き合わせられない——こういう事故は、月30万円を投じてから気づくと30万円が丸ごと無駄になります。3万円で気づけるなら安い。月3万円は「配信の練習」ではなく「計測の検品」に使ってください。
豊田優人
月10万円|「1本目の勝ち負け」を判断できる最小ライン
- できる:1日約3,300円で30日連続配信。学習が一通り回ります
- できる:クリエイティブを5〜10本入れて、上位3〜5本の勝ち負けを判断する
- できる:自社のCPL・CPAの初期値を確定させる。以降の判断基準がここで手に入ります
- できない:ターゲティングの検証。クリエイティブとターゲティングを同時に動かすと、どちらが効いたか分かりません
- できない:LPのA/Bテスト。同じ理由です。変数は月に1つが原則です
- できない:認知と獲得の二階建て。10万円を2つに割ると、どちらも判断できない量になります
弊社が「まずこの規模で」とお伝えしているのがこのラインです。月10万円 × 1〜2ヶ月。理由は単純で、これ以下だと「効かなかった」のか「判断できるだけのデータが出なかった」のかが区別できないからです。
そしてこのレンジでいちばん重要なのは、10万円を1つのことに使うと決めることです。クリエイティブの勝ち負けを見る月なら、ターゲティングもLPも動かさない。翌月にターゲティングを見る。この順番を守れると、2ヶ月目には自社の数字が2本立ちます。
月30万円|「勝ちパターンを増殖させる」フェーズ
ここから箱の代わりに、地の文で書きます。このレンジで起きることは箇条書きにしづらいからです。
月30万円になると、できることが一気に増えます。広告グループを2つに分けてターゲティングや配信面のA/Bが取れるようになり、勝った動画の派生を毎週作り足すサイクルが回せるようになり、リターゲティングを本体とは別枠で持てるようになる。クリエイティブの疲弊(同じ動画が飽きられて成績が落ちる現象)に、差し替えで対応できるようになるのもこのレンジからです。月10万円では差し替える弾がありません。
一方で、できないことも2つはっきりします。1つは、制作を全部外注でまかなうこと。15〜30本をすべて外注で作れば、6章に挙げる外注費の相場でも、制作費だけで配信費の30万円を軽く超えます。このレンジで初めて「配信費と制作費の配分」が現実の問題になるのはこのためです。もう1つは、CPLを月10万円のときと同じ水準に保つこと。配信対象が広がるぶん、悪化するのが普通です。
配分については、弊社にははっきりした立場があります。制作は内製に寄せて、浮いたぶんを配信費に回してください。根拠は5章で自社データを出して説明しますが、先に結論だけ書くと、お金をかけた動画が伸びるわけではないことと、尺を短くするだけで1本あたり約3時間ぶん(約6,000円台)の工数が浮くことが、弊社の実測と実務から出ているからです。
月100万円|逓減と正面から向き合うフェーズ
- できる:認知(リーチ目的)と獲得(CV目的)の二階建て。上から入れて下で刈る設計が組めます
- できる:類似(Lookalike)オーディエンスの活用。元になるデータ量が溜まっているのが前提です
- できる:月50本規模のクリエイティブ投入。制作の体制そのものが競争力になります
- できない:CPLを維持したままの線形の拡大。ここからは「CPLが悪化することを織り込んで、それでも合うか」の判断になります
- できない:担当者の片手間での運用。制作・入稿・分析で、実質1人ぶんの工数がかかります
このレンジでいちばん多い失敗は、「10万円でCPL2,000円だったから、100万円なら10倍取れる」と稟議を書いてしまうことです。稟議には「CPLが1.5〜2倍に悪化しても事業として合うか」を先に書いてください。合わないなら、拡大するのは予算ではなくクリエイティブの本数のほうです。
規模感を1つだけ添えておきます。CPM500円換算で月100万円なら約200万回の表示。仮に同じ人に平均2回表示されているとすると、届く人数はおよそ100万人。TikTokの国内MAUは4,200万※2なので、月100万円で国内ユーザーの2%強に触れるという計算になります。桁を掴むための概算ですが、「100万円ってどのくらいの規模なんだ」という感覚の助けにはなるはずです。
費用対効果の測り方|CPMから面談単価まで、一本の階段で降ろす
3章の表で「桁」は掴めたはずです。ただ、あれは弊社の数字を借りたものでした。ここからは、自社の数字を自分で出す方法です。ここができると、以降は相場記事を読む必要がなくなります。
階段は5段。上から順に、詰まっている段を探す
費用対効果を1つの数字で見ようとすると、必ず迷子になります。段を分けて、上から順に降ろしてください。
| 段 | 指標 | 計算式 | 弊社の実数(採用オファー) |
|---|---|---|---|
| ①届いたか | インプレッション/CPM | CPM = 費用 ÷ 表示回数 × 1,000 | —(弊社の運用経験に基づく体感レンジ300〜800円) |
| ②押されたか | クリック/CTR/CPC | CPC = 費用 ÷ クリック数 | —(自社の管理画面で確認) |
| ③申し込まれたか | リード/CVR/CPL | CPL = 費用 ÷ リード件数 | CPL 2,105円(20万円÷95件) |
| ④会えたか | 商談化率/面談単価 | 面談単価 = 費用 ÷ 商談件数 | 7,407円(20万円÷27件) |
| ⑤決まったか | 受注率/CPA | CPA = 費用 ÷ 受注件数 | —(自社の受注率を掛けてください) |
この階段の間にある「転換率」が、実は費用の記事でいちばん役に立つ数字です。弊社の実数を全部出します。
- リード → 面談:28.4%(面談27件 ÷ リード95件)
- 費用 → リード:CPL 2,105円(20万円 ÷ 95件)
- 費用 → 面談:面談単価 7,407円(20万円 ÷ 27件)
※これは採用(人材の応募獲得)を目的とした配信の実績です。商材やオファーの重さが違えば転換率は変わります。金額そのものより、「クリック→リード→面談」と段を分けて測る形を持ち帰ってください。
※予算・期間・本数・リード・面談の数字は、公開済みの【実データ公開】TikTok採用の効果・費用・事例に載せている実績です。
この階段の、正しい読み方
数字が悪かったとき、どの段が詰まっているかで打ち手がまったく変わります。ここを間違えると、直すべきでないものを直し続けることになります。
| 詰まっている段 | 症状 | 直すもの | 直してはいけないもの |
|---|---|---|---|
| ①届いていない | そもそも表示回数が伸びない | 予算・ターゲティングの幅 | クリエイティブ(まだ見られてすらいない) |
| ②押されない | 表示は出るがCTRが低い | 冒頭2秒とテロップ | ターゲティング(絞ると余計に悪化します) |
| ③申し込まれない | クリックは来るがCPLが高い | LPとオファー | 広告(動画は仕事をしています) |
| ④会えない | リードは来るが商談にならない | フォームの項目・追客の速度 | 広告費(増やしても質は上がりません) |
| ⑤決まらない | 商談は起きるが受注しない | ターゲティング・訴求の中身 | —(ここで初めて上流に戻ります) |
【自社診断】クリック→リードの転換率を、自社で測る
ここは本記事で唯一、読んだその日に電卓を叩けるところです。しかも出てくるのは「良い/悪い」ではなく、「改善にいくらまで払っていいか」という金額です。手順は3つだけです。
- 手順1:広告マネージャーからクリック数を、CRMやフォームの管理画面からリード件数を、同じ期間で拾う
- 手順2:リード件数 ÷ クリック数を計算する。これがあなたの会社のクリック→リード転換率です
- 手順3:その転換率を、次の金額換算に入れる。着地点(LP・フォーム・オファー)を直したら上がる分が、いくらに化けるかを出します
※転換率は商材・オファーの重さで大きく変わります。他社の数字を目標値として借りず、自社の数字を持っているかどうかを先に確かめてください。
そして、この差を金額に直します
診断で終わると、結局「LPを直したほうがいいらしい」という感想で終わります。費用の記事なので、その改修にいくら払っていいのかまで出します。
仮に、月10万円を出して約1,960クリックが来ていて、自社の転換率が1.2%だったとします(数字はすべて計算用の仮の値です)。計算はこうなります。
- 月10万円で約1,960クリック(仮の値)
- 現状:1,960 × 1.2% = リード約24件(CPL約4,200円)
- 転換率を倍の2.4%まで直せたら:1,960 × 2.4% = リード約47件(CPL約2,100円)
- 差は月23件。リード1件の価値を6,000円(下の逆算式の例)とすると、月13.8万円・年165.6万円の差
つまりこのケースでは、LPの改修に十数万円を一度払うのは、1ヶ月で回収できる計算になります。一方で、同じ十数万円を「動画をもう5本作る」に使っても、この23件は取り戻せません。詰まっているのが③の段だからです。どこにお金を置くかは、感覚ではなくこの計算で決まります。
豊田優人
合格ラインは、出稿前に決めておく
そして、費用の話でいちばん大事なのがこれです。「CPLがいくらなら続けて、いくらなら止めるか」を、出稿前に紙に書いてください。
計算の順序は逆向きです。広告から始めるのではなく、事業の数字から降ろします。
- 1. 1件の受注の粗利はいくらか(例:10万円)
- 2. 商談から受注になる率は何%か(例:20% → 商談1件の価値は2万円)
- 3. リードから商談になる率は何%か(例:30% → リード1件の価値は6,000円)
- 4. 広告費に何%まで使えるか(例:リード価値の50%まで → 合格ラインのCPLは3,000円)
この4行が埋まっていれば、月末に数字を見て慌てることはありません。CPLが3,000円を超えたら止める、下回ったら増やす。それだけです。逆に、この4行が埋まっていない状態で出稿すると、何が起きても判断できません。(3行目で出てくる「リード1件の価値」が、1つ上の金額換算でそのまま使う数字です)
豊田優人
予算が足りないとき、どこから削るか(削ってはいけないもの)
ここまで読んで、「うちの予算では足りない」と思われた方も多いはずです。現実的な話をします。削る順番には正解があります。
削る順番(上から順に削ってください)
| 順 | 削るもの | 削ると起きること | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 外注の制作費(内製に切り替える) | 成果はほぼ落ちない。浮いたぶんを配信費に回せる | 自社136本の実測(下記) |
| 2位 | 動画の尺(60秒 → 15秒) | 1本あたり約3時間ぶん(約6,000円台)の工数が浮く。リーチ効率も上がる方向 | 下記の工数換算+親記事の実測 |
| 3位 | 同時に走らせる広告グループの数(1つに絞る) | 検証できる項目は減るが、1つあたりの配信量は確保できる | 2章の学習の話 |
| 4位 | 稼働日数(30日 → 20日など) | 1日予算の下限を守れる。ただし学習期間の7日は絶対に割らない | 2章の学習の話 |
| × | クリエイティブの本数 | 当たりを探せなくなる。予算を削る意味そのものが消えます | 3章の逆算式 |
| × | 計測(ピクセル・フォーム計測) | 何が効いたか永久に分からなくなる。全額が無駄になります | 3章「月3万円」の項 |
| × | 判断期間(最低1ヶ月) | 「効かなかった」のか「分からなかった」のかが区別できません | 3章「月10万円」の項 |
1位「外注の制作費」の根拠:お金をかけた動画が伸びるわけではありません
ここが本章のいちばん大事な部分なので、自社の実測を出します。シートに記録のある136本を、使用した楽曲で2つに分けて集計しました。
| 使用楽曲の区分 | 本数 | 平均再生数 | 平均ER |
|---|---|---|---|
| 自社オリジナル楽曲(自分たちの音声・オリジナル音源) | 116本 | 約206万回 | 3.93% |
| 外部の楽曲(既存曲・流行曲) | 20本 | 約170万回 | 3.54% |
※シートに記録のある136本に限った集計値です。弊社アカウント群の全投稿を対象にした数字ではありません。
流行曲に乗せた20本より、自分たちの声でしゃべっている116本のほうが、平均再生数もERも上でした。さらに、シートに記録のある136本の再生数トップ15のうち14本は自社オリジナル楽曲です。
これは費用の話に直結します。楽曲のライセンス、凝った編集、タイアップ——そこにお金をかける根拠が、うちのデータからは出てこないということです。しかも広告配信では、オーガニック投稿で使えた外部楽曲が商用利用の条件で使えないことが多く、結局オリジナル音源に寄せることになります(楽曲の商用利用まわりは「TikTokビジネスアカウントに切り替えて損しないのか?」で詳しく扱っています。要点は「商用ライブラリ以外の楽曲は広告に使えないことが多い」の一点です)。
制作を内製に切り替える具体的な手順——スマホ+三脚+ピンマイクで何を撮るか、企画をどう出すか、編集をどこまでやるか——は「TikTok動画の作り方」に全工程を書きました。浮いた外注費をそのまま配信費に回すのが、いちばん筋のいい予算の圧縮です。
2位「尺」の根拠:15秒に寄せると、1本あたり約3時間ぶんの人件費が浮きます
尺の話は親記事「TikTok広告とは?」が実測で扱っています。シートに記録のある136本では、0〜15秒の61本の平均再生数が、16秒以上の各区分の約1.4倍でした。ここでは、その実測を費用側に翻訳します。翻訳先は、再生数ではなく制作にかかる人件費です。
時間単価は、6章で使うのと同じ約2,190円/時間(月給35万円・月稼働160時間)で計算します。
60秒版と15秒版で、制作工数はいくら違うのか。弊社の内製体制で実際にかかっている時間を、工程ごとに並べます。
| 工程 | 60秒版 | 15秒版 |
|---|---|---|
| 台本・構成 | 1.5時間 | 0.5時間 |
| 撮影(準備・撮り直し込み) | 1.5時間 | 0.5時間 |
| 編集・テロップ | 2.0時間 | 1.0時間 |
| 合計 | 5.0時間 | 2.0時間 |
| 金額(時間単価2,190円) | 約10,950円 | 約4,380円 |
※各工程の時間は、弊社の内製体制(スマホ撮影・社内編集)での目安であり、集計値ではありません。自社の実測に置き換えてください。
差は1本あたり3.0時間=約6,570円。これを本数に掛けると、こうなります。
- 月10本(=月10万円レンジ):約6.6万円/月が浮く
- 月20本(=月20万〜30万円レンジ):約13.1万円/月が浮く
- 月50本(=月100万円レンジ):約32.9万円/月が浮く
ここで、3章の「1本あたりの配信費は約1万円」と並べてみてください。60秒版は、制作の人件費(約10,950円)だけで配信費(約1万円)を超えます。15秒版なら約4,380円で、配信費の半分以下に収まる。尺を削るというのは、実質「制作費を配信費の半分以下に押し込む」作業だということです。
削る対象としてこれが優秀なのは、安くなるうえに、リーチ効率が上がる方向にも動く数少ない項目だからです。コストカットと成果改善が同じ方向を向いているのは、ここだけです。
ただし「短尺が全面的に強い」わけではありません
ここは正直に両面を書きます。同じ136本を、再生数ではなくエンゲージメント率(ER)で並べ替えると、景色が変わります。
- ER上位10本の秒数は、長いほうから 45秒・37秒・37秒・34秒・28秒・21秒・10秒・10秒・9秒・9秒
- つまりER上位10本のうち6本が21秒以上。最高ER(7.27%)の1本は37秒でした
- 一方、平均再生数がいちばん高いのは0〜15秒の区分(61本)で、16秒以上の各区分の約1.4倍
※上位10本という小さな集合の話です。「21秒以上のほうがERが高い」という一般則としては読まないでください。
読み方はこうです。短尺はリーチ(届く量)に効き、長尺はエンゲージメント(見た人の反応の濃さ)に効く。同じ136本のなかで、指標を変えると勝つ側が入れ替わります。
そのうえで、費用を削る文脈では短尺を選んでください。理由は単純で、広告でまず買っているのは①の段(表示・リーチ)だからです(4章の階段)。表示が出なければ、そのあとのエンゲージメントもクリックもリードも発生しません。予算に余裕がなく、階段の①から積み直す局面では短尺。逆に、コメントや保存といった反応の濃さ自体を買いたい局面(ブランド想起や指名検索を狙う設計)なら、20〜40秒を混ぜる判断はあり得ます。「短くすれば必ず得」ではなく、「何を買っているか次第」です。
※この136本はいずれもオーガニック投稿の実測で、広告配信のデータではありません。また社内で反響の大きかった投稿を優先して記録したもので無作為抽出ではないため、再生数の絶対値は再現しません。使えるのは相対差の向きだけです(詳しい限界は記事末の「本文中のデータについて」に書きました)。
やってはいけない削り方:ターゲティングを狭めて「安くする」
費用を抑えたいとき、真っ先に手が出るのがターゲティングです。「配信範囲を狭めれば、無駄打ちが減って安くなるはず」と考えるのは自然だと思います。
ところが、これは逆効果になることが多いです。
運用型広告はオークションなので、対象を狭めるとその狭い枠を狙う入札の競争が激しくなり、CPMはむしろ上がります。加えて、TikTokは配信しながら当たる人を探す媒体なので、最初から狭めると探せる範囲そのものを削ってしまう。安くしようとして、単価が上がり、学習も進まない。いちばんもったいない削り方です。
同じ理由で、「CPMが安い配信面(外部アプリ面など)に寄せて単価を下げる」のも勧めません。表示単価は下がりますが、その先の転換率が落ちるので、4章の階段を③まで降ろすと結局CPLは悪化します。安いのは①の段だけ、という買い物です。

代理店手数料の相場と、内製との損益分岐点
最後に、費用の記事で必ず聞かれるところです。運用を代理店に出すべきか、社内でやるべきか。弊社は運用支援を提供している側なので、都合の悪いことも含めて数字で書きます。
まず誤解を1つ潰します:代理店経由でも、媒体費は安くなりません
稟議を書く前に、ここだけは押さえてください。「代理店を通せば、まとめ買いで媒体費が安くなるのでは」という期待は成り立ちません。
理由は1章で書いたとおりです。運用型広告はオークションで、落札額は「入札額」と「広告の質」で決まります。誰が管理画面を触っているかは、値付けにいっさい関係しません。同じ動画・同じターゲティング・同じ入札なら、代理店経由でも自社運用でもCPMは同じです。
したがって手数料20%は、純粋な上乗せです。代行を入れると総額は必ず増えます。まれに「媒体費のディスカウントがあります」と説明されることがありますが、それはたいてい「代理店が媒体費を立て替えて一括請求する」という請求の建て方の話で、単価が下がっているわけではありません。契約前に「単価が下がるのか、請求がまとまるだけなのか」を必ず聞き分けてください。
では代理店に払う価値はどこにあるのか。単価ではなく、時間です。当たりの型を見つけるまでの期間が3ヶ月から1ヶ月に縮むなら、その2ヶ月ぶんの機会損失と手数料を天秤にかける——これが正しい比較の形です。
手数料の相場
- 広告費に対する手数料:20%前後がもっとも多い形です
- 最低運用費:月10万〜15万円程度を設定している会社が多い。広告費が少なくても、この金額は発生します
- 初期費用:0〜10万円程度。アカウント開設・計測設定込みで請求されることがあります
- クリエイティブ制作費:別建て。1本3万〜10万円程度が目安です
※上記は公表された統計ではなく、弊社が実際に見聞きしてきた範囲での体感レンジです。会社によって体系がまったく違うので、必ず個別に見積もりを取って確認してください。
内製のコストを、同じ土俵に乗せる
「内製は無料」と考えると、比較を間違えます。担当者の時間は、確実にコストです。ここを金額に直します。
- 運用にかかる時間:週5時間(数字の確認、入稿、差し替え、レポート)× 4週 = 月20時間
- 担当者の時間単価:月給35万円・月稼働160時間なら、約2,190円/時間
- 月あたりの人件費:20時間 × 2,190円 = 約4.4万円
- 加えて制作の工数:5章の換算どおりで、15秒版なら1本2.0時間=約4,380円。月10本なら約4.4万円、月20本なら約8.8万円
※月給・稼働時間は例です。自社の実数に置き換えて計算してください。ここで尺の話が効いてきます。同じ月10本でも60秒版で作れば制作工数は約11万円になり、内製の総コストが倍近くになります。
損益分岐点はどこか
この2つを並べると、分岐点が出ます。手数料20%と、内製の人件費(運用のみで月約4.4万円)が釣り合う広告費を求めると——
4.4万円 ÷ 20% = 広告費 月22万円
つまり、広告費が月22万円を超えると、代理店手数料のほうが内製の人件費より高くなるという計算になります。金額だけを見れば、それ以上は内製のほうが安い。
※制作まで含めて外注する場合は、内製側のコストも上がるので分岐点はもっと上(月35万〜50万円程度)に動きます。ただし15秒版に寄せて内製できているなら、分岐点は下がります(制作工数が半分以下になるため)。
ただし、これは金額だけを見た場合の分岐点です。実際の判断はもう少し複雑なので、条件で整理します。
| 状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 広告費が月10万円以下 | 内製一択 | 最低運用費(月10万〜15万円)が広告費と同額以上になり、明らかに割に合いません |
| 広告費が月10万〜30万円で、動画を作れる人が社内にいない | 制作込みで代行 | 運用より制作がボトルネック。ここを外注する価値はあります |
| 広告費が月10万〜30万円で、動画を作れる人が社内にいる | 内製 | 分岐点より下。かつ社内に運用ノウハウが残ります |
| 広告費が月30万円以上で、まだ勝ちパターンがない | 期間を区切って代行 | 金額は高くつきますが、勝ち筋を見つける速度を買う判断です(単価は下がりません) |
| 広告費が月30万円以上で、すでに勝ちパターンがある | 内製 | やることは差し替えの反復。手数料を払う理由が薄くなります |
豊田優人
代理店を選ぶときに、費用面で必ず確認すること
- 手数料は広告費に対して何%か、それとも固定額か。固定額の場合、広告費を増やしても手数料が変わらないので、拡大局面では有利になります
- 最低運用費はいくらか、いつから発生するか。初月から満額なのか、配信開始月からなのか
- 制作費は別建てか、含まれるか。「月◯本まで込み」の本数上限は必ず確認してください
- 「媒体費が安くなる」と言われたら、単価が下がるのか請求がまとまるだけなのかを聞く(前述のとおり、オークションなので単価は下がりません)
- 広告アカウントの所有者は誰か。代理店名義だと、契約終了時にそれまでの学習データと計測資産を持ち出せません。ここは費用以上に大きい論点です
- レポートに④⑤(商談・受注)まで含まれるか。表示回数と再生数だけのレポートなら、4章の階段を①②で止めているということです
運用代行の選び方そのもの(費用以外の観点を含む)は、別途1本にまとめる予定です(TikTok運用代行の費用相場と失敗しない選び方/近日公開)。本記事では費用面の論点だけを扱いました。
TikTok広告の費用に関するよくある質問
「最低いくらから出せるか」ではなく、実際に届く請求書の金額でお答えします。ここがズレると経理でもめるからです。
管理画面上の下限は広告グループの1日予算で20ドル(約3,100円/1ドル=155円換算)です※1。ただし2章で書いたとおり、日予算は上限であって消化額ではなく、実績は±20%程度は振れます。幅を込みで計算すると、こうなります。
| 設計 | 予算表に書く額 | 実際に届きうる請求額(±20%) |
|---|---|---|
| 1日3,100円 × 10日 | 約3.1万円 | 約2.5万〜3.7万円 |
| 1日3,100円 × 30日 | 約9.3万円 | 約7.4万〜11.2万円 |
| 1日3,300円 × 30日(検証ライン) | 約10万円 | 約8万〜12万円 |
稟議は、上振れ側の金額で通してください。「10万円」で通すと12万円の請求書で説明が要りますが、「8万〜12万円」で通しておけば何も起きません。さらにこの金額が税抜か税込かでもう10%動きます(Q5参照)。
なお「出せる金額」と「判断できる金額」は違います。下限で10日回しても良し悪しの判断はできません(3章)。判断できる最小ラインは月10万円 × 30日連続です。
止められます。運用型広告は実際に配信された分だけの課金なので、キャンペーンを停止すればそれ以降の費用は発生しません。設定した予算を使い切る義務もありません。
ただし止めるとそこまでの学習は失われます(2章)。再開時にはまた学習期間から始まるので、「今月は予算が厳しいから一時停止」を繰り返すと、その都度の学習コストを払い続けることになります。止めるより、日予算を下げて配信を続けるほうが安く済みます。
一般論だと「前払いと後払いがあります」で終わってしまうので、弊社の広告アカウントで実際にどう回っているかを書きます。
- 支払い方法:クレジットカードを登録した後払い。事前チャージはしていません
- 課金のタイミング:配信された分が積み上がっていく形。管理画面の消化額は日次で更新されます
- 請求のタイミング:月初に前月分が確定して請求。経理の締めは「前月分が確定してから」で回しています
- 実務上の注意:カードの利用可能枠を超えると配信が止まります。予算を上げる月は、枠のほうを先に確認してください(弊社は一度これで数日止めました)
※弊社アカウントでの運用実態です。支払い方式はアカウントの種別・国・与信の状況によって変わり、代理店経由の場合は代理店の請求サイクルに従います。自社の契約形態で必ず確認してください。
費用管理でもう1つ大事なのは、請求額は予算表と一致しないという点です(Q1の表)。予算表には金額を1点で書かず、±20%の幅を持たせて稟議を通しておいてください。
正直に書くと、相場の数字はあまり役に立ちません。業種・季節・ターゲティングの広さ・クリエイティブの出来で大きく動くので、他社の平均値を自社に当てても外れます。
そのうえで桁だけお伝えすると、CPMは1,000回表示あたり300〜800円、CPCは30〜150円あたりが弊社の運用経験に基づく体感レンジです。このレンジが狭いのは条件が狭いからで、精度が高いからではありません(1章)。条件が違う会社は、親記事で紹介している外部相場(CPM100〜1,000円)の側を見てください。
ただ、本当に使うべきなのは相場ではなく自社の合格ラインです。粗利 → 受注率 → 商談化率 → 使える広告費の順に降ろせば、自社のCPLの上限が出ます(4章)。それが唯一の判断基準です。
稟議の金額が10%ずれるので、ここは必ず先に確認してください。月30万円の予算なら3万円、月100万円なら10万円の差です。
まず前提として、広告マネージャーの管理画面に出ている消化額は税抜の数字として扱われるのが一般的です。「10万円使った」と画面に出ていても、経理に届く請求額はそれと同じとは限りません。そして消費税の課税・不課税やインボイス(適格請求書)の発行可否は、契約形態によって変わります。
- 契約先はどこか。TikTok側と直接契約か、国内代理店経由か。ここで税の扱いも請求書の出どころも変わります
- 請求額は税抜か税込か。予算表を税抜で作っていると、税込で10%はみ出します
- 適格請求書(インボイス)の登録番号が入った請求書が出るか。出ない場合、仕入税額控除の扱いを経理と詰める必要があります
- 請求書の宛名・発行元・発行タイミング。月次で自動発行されるのか、都度ダウンロードなのか
※税務の取り扱いは制度改正と契約形態で変わります。本記事は「何を確認すべきか」のチェックリストであって、税務判断ではありません。実際の処理は必ず自社の経理・顧問税理士にご確認ください。
実務上のおすすめは単純で、予算表も稟議も税込で書くことです。そのうえでQ1の±20%を乗せておけば、請求書が来てから慌てることはなくなります。
内製できるなら、外注費は0円で構いません。スマホ+三脚+ピンマイクがあれば足ります。ただし人件費は0円ではありません。
5章の換算どおり、15秒版なら1本あたり約2.0時間=約4,380円(時間単価2,190円)。配信費が1本1万円なので、制作:配信=およそ3:7が内製時の目安になります。60秒版で作ると制作費が約10,950円に膨らみ、比率が逆転します。
お金をかけた要素が伸ばしているわけではない、という根拠も出しておきます。弊社の記録シートに記載のある136本では、自社オリジナル楽曲(自分たちの音声)の116本が平均約206万回・ER3.93%で、外部の流行曲を使った20本(平均約170万回・ER3.54%)を上回っていました(詳しくは5章)。
外注する場合の相場は6章にまとめました。月30万円以上の予算で、社内に作れる人がいない場合に検討する順番です。
増えません。予算を上げるほど配信対象が関心の薄い層まで広がるので、CPMは上がりCPLは悪化します(逓減)。
3章で出した月100万円の換算値(約475件)も、単純比例で引き伸ばしたものなので、桁を掴む用途にとどめてください。稟議を書くときは「CPLが1.5〜2倍に悪化しても事業として合うか」を先に検算しておくと、拡大局面で慌てずに済みます。
比例して増やせるものが1つだけあります。クリエイティブの本数です。予算を倍にするより、本数を倍にするほうが、当たりを引く確率は素直に上がります。
配信されていない以上、費用は発生しません。ただしスケジュールの損失は発生します。審査は通常24時間以内が目安ですが、差し戻し→修正→再審査で1往復すると実質2日かかります。
費用管理の観点では、「月額 ÷ 30日」で日予算を組んでいると、審査で数日遅れたぶん月内に消化しきれません。配信開始日の3営業日前には入稿を済ませてください。審査の詳細と落ちやすい表現は親記事「TikTok広告とは?」の広告審査の章にまとめています(要点は「誇大表現と、効果を断定する言い回しで落ちる」です)。
予約型(純広告)は数百万円〜の規模で、中小企業が最初に触るものではありません。金額の桁が運用型と2つ違います。
先に運用型で4章の階段(CPM→CPC→CPL→CPA)を自社の数字で引けるようにして、それでも「認知の絶対量が足りない」となったときに初めて検討する順番です。階段が引けていない状態で予約型に行くと、効果があったのかどうかを誰も証明できません。
まとめ:予算は「本数 × 1本1万円」から逆算する
要点を「金額の決め方」「測り方」「削り方」の3つに分けて置きます。予算表を埋めていく順番でもあります。
金額は相場から降りてきません。本数から逆算して、税込・幅つきで書く。それだけです。
- 課金方式(CPM/CPC/CPV/oCPM)は選択肢ではなく、同じお金をどの深さで数えているかの違い。単価は交渉でも代理店経由でも下がらず、下げる手段はクリエイティブだけ
- 月額は「1日予算 × 稼働日数」。ただし①日予算は上限であって消化額ではない(±20%振れる)、②学習期間中に触ると費用が捨て金になる、③稼働日数を分割すると学習が回数ぶんリセットされる——の3箇所でお金が漏れる
- 必要月額 = 1本あたりの配信費(約1万円) × クリエイティブ本数。弊社は20万円に20本を入れました。「入れる本数」は多く、「判断する本数」は上位5本まで
- 本数が決まったらジャンルの配分まで決める。シートに記録のある136本ではComedy 71本が平均約206万回、Scripted Comedy 11本が平均約258万回。軽い型(Comedy)で本数を積み、重い型(台本もの)は少数だけ混ぜる
- 稟議に書くのは1点の金額ではなく、税抜予算 × 1.1(税込) × 0.8〜1.2(振れ幅)で出した幅。月30万円なら26.4万〜39.6万円です。消費税とインボイスの扱いは契約形態で変わるので、出稿前に経理と4項目を確認する
金額の妥当性は、その金額で何が判断できるかでしか測れません。1つの数字で見ようとせず、段を分けて上から降ろします。
- 月3万円は計測の検品/月10万円が勝ち負けを判断できる最小ライン/月30万円で勝ちパターンの増殖と制作費の配分問題/月100万円は逓減との勝負(CPLが1.5倍を超えると合格ラインCPL3,000円を割ります)
- 費用対効果はCPM→CPC→CPL→面談単価→CPAの5段で降ろす。弊社の実数はCPL2,105円・面談単価7,407円・リード→面談28.4%(いずれも採用オファーの配信)
- クリック→リードの転換率を自社で測る。そのうえで改善幅を金額に直せば、改修にいくらまで払っていいかが出る(仮に約1,960クリックで1.2%→2.4%なら月13.8万円ぶん)
- 合格ラインのCPLは出稿前に紙に書く。粗利 → 受注率 → 商談化率 → 使える広告費の順で降ろせば出ます
予算が足りないときは、順番を守って削る。順番を間違えると、削った意味そのものが消えます。
- 削る順番は①外注の制作費 ②尺 ③広告グループ数 ④稼働日数。クリエイティブ本数・計測・判断期間は削ってはいけない
- 尺を60秒から15秒に寄せると、1本あたり3.0時間ぶん(約6,000円台)の工数が浮く(時間単価2,190円)。月20本なら約13.1万円/月。60秒版は制作の人件費だけで配信費1万円を超えます
- ただし短尺が全面的に強いわけではない。同じ136本でも、再生数は0〜15秒が有利、ERは長尺が有利(ER上位10本のうち6本が21秒以上)。広告でまず買うのはリーチなので、費用を削る文脈では短尺という結論になります
- ターゲティングを狭めて安くしようとしない。CPMはむしろ上がり、学習も進みません
- 代行と内製の損益分岐は広告費 月22万円(手数料20%と内製人件費約4.4万円が釣り合う点)。ただし月10万円以下は内製一択、判断軸はお金より「作れる人がいるか」。代理店に払っているのは単価ではなく速度
最後に、今日から順番にやることを4つだけ置いておきます。
この4つが埋まれば、予算表の空欄はもう埋まっています。あとは広告マネージャーに入力するだけです。
豊田優人
「うちの商材なら、月いくらから・何本で・どんな内訳で始めるべきか」を具体的に詰めたい方は、お気軽にご相談ください。この記事で公開した数字をもとに、貴社の状況に合わせた予算設計をご提案します。
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この記事を書いた人

豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役
フォロワー約47万人の会社TikTokアカウントを運用し、100万再生を超えた動画は137本、累計4.61億再生。自社の採用募集で回したTikTok広告では、予算20万円・クリエイティブ20本でリード95件(CPL2,105円)・面談27件(面談単価7,407円)を獲得。株式会社BEEMは、SNS採用のみで採用したメンバーで構成される「ショート動画の実践企業」として、TikTokの運用支援・広告運用を提供している。
出典
- TikTok for Business ヘルプセンター「キャンペーン・広告グループの予算設定」記載のドル建て最低予算(広告グループの1日予算20ドル)。確認日:2026年7月25日。円換算は1ドル=155円で統一(同日時点のレートを丸めたもの)。https://ads.tiktok.com/help/
※ヘルプ側の改定と為替の両方で変動します。出稿直前に最新値をご確認ください。 - TikTok社発表「TikTok、日本国内のMAUが4,200万を突破」2025年11月27日(自社調べ。TikTokおよびTikTok Liteの月間アクティブユーザー数、重複を除く)。確認日:2026年7月25日。https://newsroom.tiktok.com/tiktok-mau-4200?lang=ja-JP
広告の実績値——予算20万円・配信期間約40日・クリエイティブ20本・リード95件・CPL2,105円・面談27件・面談単価7,407円——は、弊社(株式会社BEEM)が2025年11〜12月に自社の採用募集で実施したTikTok広告の実績です(4章に出所の記事へのリンクがあります)。採用(人材の応募獲得)を目的とした配信の数字であり、商材やオファーが異なれば単価・転換率は変わります。リード→面談28.4%はリード95件と面談27件からの計算値です。
TikTokの再生数・エンゲージメント率・尺別/楽曲別/ジャンル別の集計値、およびER上位10本の尺は、「記録シートに記載のある136本」(2020年9月〜2025年5月投稿分)に限った数字で、弊社アカウント群の全投稿を対象にしたものではありません。この136本は反響の大きかった動画から順に転記したもので、無作為抽出ではありません。会社アカウント全体の実績(公開中の607本で100万再生超え137本・累計4.61億再生、2026年10月13日時点)とは範囲が違う数字です。また数字を作っている中心は2021年の投稿であり、いずれもオーガニック投稿(広告費をかけていない通常投稿)の実測で広告配信のデータではありません。したがって再生数の絶対値は再現しません。使えるのは「自社オリジナル音源 vs 外部楽曲」「短尺 vs 長尺」「軽い型 vs 重い型」という相対差の向きのほうです。とくにScripted Comedy(11本)とER上位10本は、いずれも小さな集合なので、比率をそのまま持ち帰らないでください。
自社TikTokアカウント(@beem_official)は公開されているので、いつでも確かめていただけます。
【弊社の運用経験に基づく体感レンジ・社内の目安】
CPM(300〜800円)・CPC(30〜150円)・CPV(数円台)の単価レンジは弊社の運用経験に基づく体感レンジであり、公的統計ではありません(条件が狭いぶんレンジも狭くなっています)。代理店手数料(20%前後)・最低運用費(月10万〜15万円)・制作費(1本3万〜10万円)の相場、学習期間の日数と日予算の変更幅(7日・±20%)、制作工程の所要時間(60秒版5.0時間/15秒版2.0時間)、時間単価(2,190円)、ジャンルの配分比率は、いずれも公表された統計ではなく弊社の運用経験に基づく体感レンジ・社内ルール・計算例です。数値を社内資料に転記する際は、その旨を必ず併記してください。
【外部の出典】
最低出稿金額はTikTok for Business公式ヘルプ、国内MAUはTikTok Newsroomの発表に基づきます(上記出典欄)。消費税・インボイスの取り扱いについては、本記事は確認すべき項目を示したのみで、税務判断は行っていません。仕様・ポリシー・税制はいずれも改定されるため、出稿直前に公式ヘルプと自社の経理でご確認ください。