最終更新日:2026年10月13日
執筆・監修:豊田優人(株式会社BEEM 代表取締役)
- 会社のTikTokを始めることになり、アカウントをビジネスアカウントにすべきか調べている中小企業のマーケ・販促担当者の方
- 「切り替えると流行っている曲が使えなくなる」と読んで、手が止まっている方
- 切り替えたあと元に戻せるのか、フォロワーや投稿が消えないかが不安な方
会社としてTikTokを運用するなら、ビジネスアカウントに切り替えて問題ありません。無料で、3分ほどで終わり、フォロワーも投稿も消えません。最大のデメリットとされる「流行曲が使えなくなる」については、弊社(株式会社BEEM)の公式TikTokで記録シートに記載のある136本を集計すると、116本が自社オリジナル楽曲(=自分たちの声や音)で平均206万回再生、外部の既存曲・流行曲を使った20本は平均170万回でした。再生数トップ15のうち14本も自社オリジナル楽曲です。流行曲が使えないことは、企業アカウントにとって致命傷になりません。ただし切り替えないほうがいい会社も実在するので、その分岐は7章に置きました。

この記事が答えるのは「切り替え方」ではなく「切り替えて損しないか」です
最初に、この記事の立場をはっきりさせておきます。
「TikTokビジネスアカウント」で検索すると、切り替え手順を書いた記事が大量に出てきます。手順そのものは公式のヘルプにもありますし、正直なところ、どの記事を読んでも同じことが書いてあります。あなたが本当に止まっているのは、たぶんそこではありません。
止まっているのは、こういう不安のはずです。
- 切り替えると流行っている曲が使えなくなるのか。それは実際どれくらい損なのか(4〜6章。ここが本記事の中心です)
- フォロワーや過去の投稿は消えないか。元に戻せるのか(3章)
- 無料なのか。法人でないと作れないのか。審査はあるのか(2章)
- そもそも自社は切り替えるべきなのか、切り替えないほうがいいのか(7章)
- 切り替えたあと、最初に何をすればいいのか(8章)
とくに1つ目については、他社の記事は「メリット・デメリット一覧」の一項目として1〜2行で流していることがほとんどです。ここに実測値で答えられるのが、この記事を書いている理由です。弊社は自社のTikTokを5年運用していて、動画ごとの数字を記録シートに残しています。そこに転記のある136本を使用楽曲で分けた数字を、4〜6章でそのまま公開します。
なお前提として配信面の規模に触れておくと、TikTokの日本国内MAU(月間アクティブユーザー数)は4,200万を突破しています※1。総務省の調査(令和6年度)でも利用率は全年代で33.2%あり※2、「若い子だけのアプリだから会社では使わない」という判断は、もう実態と合わなくなっています。
TikTokビジネスアカウントとは|個人・クリエイターとの違い
TikTokビジネスアカウントは、企業や店舗がTikTokを商業目的で使うためのアカウント種別です。個人アカウントからの切り替えでなれます。TikTok for Businessのヘルプでは、アカウントの種類として個人アカウント、ビジネスアカウント(一般)、認証済みビジネスアカウント、Blue-V認証済みビジネスアカウント、組織アカウント、TikTok for Businessアカウント、TikTok広告マネージャーアカウント、TikTokビジネスセンターアカウントの8つが挙げられており、ビジネスアカウント(一般)には「パフォーマンスデータ指標、オーディエンスインサイト、クリエイティブツール」が備わると記載されています※3。
なお、これを「プロアカウント」と呼んでいる記事や社内資料をよく見かけます。プロアカウントはInstagramの区分名で、上に挙げたTikTok公式の8区分に「プロアカウント」はありません※3。「TikTokのプロアカウント」と書かれていたら、この記事でいうビジネスアカウントのことだと読み替えて問題ありません。
※この章で出典番号の付いていない記述(費用・審査・画面の表示まわり)は、弊社の実機操作と運用経験に基づきます。仕様は改定されるので、実行の直前にアプリでご確認ください。以降、各項目では繰り返しません。
まず、いちばん多い3つの疑問に先に答えます。
無料です。切り替えに費用はかかりません。法人でなくても切り替えられます。登記簿や法人番号の提出を求められる場面は、通常の切り替えではありません(個人事業主でも、店舗でも切り替えられます)。審査もありません。業種カテゴリを選んで確定するだけで、その場で切り替わります。なお「企業認証(青いバッジ)」とは別物で、そちらは審査があります。混同されやすいので、この章の後半で分けて説明します。
個人・クリエイター・ビジネスの違い【比較表】
実務で効いてくる違いだけを並べます。
| 項目 | 個人アカウント | クリエイターアカウント | ビジネスアカウント |
|---|---|---|---|
| 想定している使い手 | 一般の利用者 | 個人の発信者・インフルエンサー | 企業・店舗・ブランド |
| 費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 分析機能 | 限定的 | あり | あり(パフォーマンスデータ指標・オーディエンスインサイト)※3 |
| 楽曲の扱い | 一般の楽曲ライブラリ | 一般の楽曲ライブラリ | 商用音楽ライブラリが前提※4 |
| プロフィールの業種表示 | なし | なし | 業種カテゴリを表示できる |
| 問い合わせ導線 | なし | なし | 連絡先・ビジネス向けの導線を設定できる |
| 広告との接続 | 制約がある | 制約がある | 広告アカウントと接続しやすい |
※出典番号を付けた「分析機能」「楽曲の扱い」の欄は公式ヘルプの記載に基づきます。クリエイターアカウントの列と下3行は、公式ヘルプに該当記載がなく(同ヘルプにはクリエイターアカウントという区分の説明自体がありません※3)、弊社の運用経験に基づきます。
要点だけ言うと、会社の宣伝・採用・集客のために使うならビジネスアカウント一択です。クリエイターアカウントは、社名ではなく「個人の名前で発信する人」向けの設計になっています。社長個人のアカウントを別で持つならクリエイターアカウント、という使い分けはあり得ます。
もう1つの「ビジネスアカウント」=認証済みビジネスアカウント(VBA)は別物です
ここ、多くの記事が混ぜて書いていて混乱の元になっているので分けます。TikTokには「ビジネスアカウント(無料・切り替えるだけ)」と「認証済みビジネスアカウント(VBA:Verified Business Account)」という、名前の似た別のものがあります。
TikTok for Businessのヘルプには「以下の表は、認証済みビジネスアカウントで利用可能な機能の概要です。」と明記されており、そこに並んでいる機能は認証を取ってはじめて使えるものとして書かれています※5。
| 比べる点 | ビジネスアカウント(無料) | 認証済みビジネスアカウント(VBA) | この記事での扱い |
|---|---|---|---|
| なり方 | アプリで切り替えるだけ | 申請・認証が必要 | 本記事は左(無料のほう)の話 |
| 費用・審査 | 無料・審査なし | 認証プロセスがある | まず左を済ませるのが先 |
| 使える機能 | パフォーマンスデータ指標・オーディエンスインサイト・クリエイティブツール※3 | コンバージョン分析、メッセージの自動リード収集、AIチャットボット、ビジネスプロフィールの公開表示などが「認証済みビジネスアカウントで利用可能な機能」として掲載※5 | 右の機能を左で期待しない |
| 向いている段階 | これから始める全社 | 投稿が回り、問い合わせ導線を設計する段階 | 右は当面あとまわしで可 |
この記事で扱うのは左側(無料のビジネスアカウント)です。ネット上で「ビジネスアカウントにするとチャットボットが使える」といった説明を見かけたら、それは右側の話なので、混同しないでください。まずやるべきは、無料で3分で終わる左側だけです。
豊田優人
【手順】ビジネスアカウントへの切り替え方と、元に戻す方法
切り替え自体は3分で終わります。順番に書きます。
※この章の手順・画面名称・切り替え後の挙動は、公式ヘルプに該当する記載を見つけられなかったため、弊社の実機操作に基づきます。以降、各項目では繰り返しません。大事なアカウントで実行する前に、ご自身でも一度なぞってご確認ください。
TikTokアプリを起動し、画面下部のメニューからプロフィールを開きます。ここは自分の投稿が並んでいる画面です。
画面の右上にある三本線のアイコンをタップします。メニューが下から出てきます。
出てきたメニューの中から「設定とプライバシー」を選びます。歯車のアイコンが付いていることが多いです。
設定画面のいちばん上のほうにある「アカウント」(アカウント管理系の項目)を開きます。
「ビジネスアカウントに切り替える」を選びます。次の画面で自社の業種カテゴリを選択します。飲食、小売、教育、建設、美容、専門サービスなど一覧から選ぶ形式です。迷ったら、いちばん近いものを選んでおけば大丈夫です。あとから変更できます。
そのあとメールアドレスやウェブサイトの入力を求められる場合がありますが、ここは後回しにして構いません。とりあえずスキップして切り替えを完了させ、8章の手順で整えるほうが効率的です。
所要は3分ほど。完了すると、プロフィールに業種カテゴリが表示され、メニューにインサイト(分析)系の項目が増えます。
切り替えても消えないもの・消えるもの
ここがいちばん多い不安なので、はっきり書きます。
| 項目 | 切り替え後どうなるか |
|---|---|
| フォロワー | 消えません。そのまま引き継がれます |
| 過去の投稿・いいね数・コメント | 消えません。そのまま残ります |
| ユーザー名(@ID) | 変わりません |
| プロフィール文・アイコン | そのまま。業種カテゴリの表示が加わります |
| 過去の投稿に使った楽曲 | 過去の投稿がその場でミュートになることは、弊社では起きていません。ただし楽曲の権利は別問題なので4章を読んでください |
| 非公開アカウント設定 | ビジネスアカウントは公開が前提の設計です。非公開で運用していた場合は公開に切り替わる想定で考えてください |
つまり失うものはほぼありません。多くの方が想像しているような「作り直し」は発生しないので、そこは安心してください。
元に戻す方法(個人アカウントに戻せます)
戻せます。手順は行きと同じ道です。プロフィール → 右上メニュー → 設定とプライバシー → アカウントと進み、「個人アカウントに切り替える」を選ぶだけです。
ただし、切り替えの頻度に制限が設けられている可能性は否定できません(短期間に何度も往復するような使い方は想定されていないはずです)。試しに切り替えてみて合わなければ戻す、という程度なら問題ありませんが、月に何度も往復する運用は避けてください。
豊田優人
最大のデメリット|「流行曲が使えなくなる」の正体
ここからが本題です。ビジネスアカウントのデメリットとして必ず挙がるのが、この楽曲の問題です。まず事実関係を、公式の記載どおりに整理します。
TikTok for Businessのヘルプセンターには、「Businesses cannot use the general music library for commercial usage.(企業は一般の楽曲ライブラリを商用目的で使用できない)」と明記されています※4。企業が使うために用意されているのが商用音楽ライブラリ(Commercial Music Library)で、同ページには100万曲(1 million songs)が無償で提供されると記載されています。適用範囲として挙げられているのはオーガニック投稿(デュエット・リアクション・つぎ足しを含む)/動画広告/ブランドコンテンツの3つです※4。
ここで、多くの記事が書いていない大事な点を1つ。
順番が逆です|「切り替えなければ流行曲が使える」わけではない
「ビジネスアカウントにすると流行曲が使えなくなる」という説明は、結果としては正しいのですが、原因の説明としては逆さまです。
もう一度、公式の文言を見てください。主語は「Businesses(企業)」であって、「ビジネスアカウント」ではありません※4。つまりこのルールはアカウントの種別に紐づいているのではなく、その利用が商用目的かどうかに紐づいていると読むのが自然です。
だとすると、次のことが言えます。
- 個人アカウントのまま会社の宣伝動画を投稿しても、それが商用目的である以上、このルールの外側には出られません
- つまり「切り替えないでおけば流行曲が使える」というのは、抜け道ではありません
- むしろ切り替えないほうが、権利の整理されていない曲を使い続けてしまうリスクが残ります
ここは自社の判断だけで走ると危ない領域なので、線引きを1つ置いておきます。権利の最終判断は、記事や代行会社ではなく自社の法務・顧問に確認してください。この記事は公式ヘルプに書かれている文言をそのままお伝えするところまでです。
実務上、投稿画面で何が起きるか
ビジネスアカウントで投稿画面を開くと、選べる楽曲が商用利用の許諾された楽曲を中心とした構成になります。表示のされ方(専用タブが出るのか、一覧そのものが差し替わるのか)はアプリのバージョンによって異なります。
そして正直に言うと、商用音楽ライブラリの中に「今まさに流行っている曲」が入っていることは多くありません。100万曲あっても、TikTokで今週バズっている音源とは重なりにくい。これが企業アカウントのハンデの正体です。
流行っているのが「一般ユーザーが作ったオリジナル音源」である場合もあります。この場合、権利関係は楽曲ライブラリの話とは別で、自社で使う許諾があるかを個別に判断する必要があります。判断に迷う場面が多いので、弊社では原則使いません。使う必要があるなら、事前に自社の法務・顧問に確認してください。
豊田優人
では、この制約はどれくらい痛いのか。次の章で数字を出します。
【一次データ】136本の楽曲内訳|オリジナル音声で平均206万回
ここから弊社の実測値を出します。弊社(株式会社BEEM)の公式TikTokで、記録シートに記載のある136本(2020年9月〜2025年5月投稿分)の集計です。シートの136本の合計は2億7,353万回再生、平均再生数は約201万回、平均エンゲージメント率は3.88%でした。この136本は反響の大きかった動画から順に転記されたもので無作為抽出ではなく、会社アカウント全体の数字とは範囲が違います。
この136本を使用楽曲で2つに分けたのが次の表です。シートには各動画の楽曲名が記録されているので、これは推測ではなく記録からの分類です。
| 区分 | 本数 | 平均再生数 | 平均エンゲージメント率 |
|---|---|---|---|
| 自社オリジナル楽曲 (オリジナル楽曲 – 株式会社BEEM / Original Sound) |
116本 | 2,064,707回 | 3.93% |
| 外部の楽曲(既存曲・流行曲) | 20本 | 1,701,425回 | 3.54% |
さらに、再生数トップ15のうち14本が自社オリジナル楽曲でした。15本中14本ですから、いちばん伸びている層は、ほぼ自分たちの声で占められていることになります。
「自社オリジナル楽曲」というのは、特別な音楽制作をしたという話ではまったくありません。その動画で撮った自分たちの声・会話・現場の音が、そのまま音源になっている状態です。つまり普通に撮って普通に投稿すると、この区分になります。
これはビジネスアカウントの判断にどう効くのか
4章で見たとおり、ビジネスアカウントの最大のデメリットは「流行曲が使いにくくなること」でした。ところが弊社の136本では、その流行曲を使わなかった側のほうが平均再生数もエンゲージメント率も高かったことになります。
つまり、切り替えによって失うとされているものは、少なくとも弊社のデータでは伸びの主因ではなかったということです。
この数字から言えることと、言えないこと
ここは慎重に扱いたいので、両側から書きます。
弊社の136本では、流行曲に乗らずに撮った動画のほうが平均再生数が高かった(206万回 対 170万回)。エンゲージメント率も自社オリジナル側が高い(3.93% 対 3.54%)。そして最も伸びた15本のうち14本が自社オリジナル楽曲でした。「ビジネスアカウントにすると流行曲が使えないから伸びない」は、弊社のデータでは成り立ちません。
差は約1.2倍で、圧勝ではありません。外部楽曲を使った20本も、平均170万回という水準は決して低くないのです。100万回を大きく超えています。だからこの表を「流行曲に乗るな」の根拠にはできません。言えるのは「乗らなくても伸びる」までです。
加えて、本数が116対20と大きく偏っています。20本側は母数が小さいぶん、平均が数本の結果に引っ張られます。それから、5章の冒頭に書いたとおり136本は無作為抽出ではなく、136本のうち84本が2021年の投稿に偏っています。絶対値ではなく、同じ条件下での相対差として読んでください。
なお、シートに記録されているのは各動画の楽曲名・投稿日・再生数・いいね・コメント・秒数・ジャンルラベルです。「どの1本が外部楽曲だったか」を特定できる形では記録されていませんので、トップ15の中の1本がどれだったかは、この記事では書けません。書いてある記事があったら、それは推測です。
ちなみに外部楽曲側の20本で、シートから曲名が確認できるものは次のとおりです。国内の流行曲というより、海外の既存曲が中心でした。
9 and Three Quarters (Run Away)/Celebrate the Good Times/El Pepe/FOLLOW ME d3vdadon/It’s Tricky/Kiss ft Supernatural Ver 1 – Remix/My Name Is/Rocky – Gonna Fly Now/Toca-Toca – Extended Mix/Treasure#1/gettoknowme/original sound – DADDY MING(シート記載のまま。同一曲を複数本で使っているものがあるため、本数と曲数は一致しません)
【一次データ】音源に頼らない型は「短い会話劇」だった
「流行曲が使えなくても伸びる」と言われても、じゃあ何で伸ばすのかが分からないと動けません。ここに答えられるデータが、同じシートにあります。動画の長さ別の平均です。
| 動画の長さ | 本数 | 平均再生数 | 全体平均(約201万回)との比較 |
|---|---|---|---|
| 0-15秒 | 61本 | 2,405,087回 | 約1.20倍(上回る) |
| 16-30秒 | 32本 | 1,669,566回 | 約0.83倍 |
| 31-60秒 | 33本 | 1,710,806回 | 約0.85倍 |
| 61秒以上 | 10本 | 1,694,150回 | 約0.84倍 |
いちばん本数が多く、いちばん平均が高いのが0-15秒の61本(平均240万回)でした。全体の半分弱がこの区分に入っています。再生数トップ15を見ても、15本中12本が15秒以内です。
音楽で場を持たせる必要がない代わりに、1秒目から意味が始まる短い会話で作る。これが弊社が5年やってきた形です。「昨日、部長がさ」から始まる10秒の動画は、曲を必要としません。
ただし「短ければ伸びる」ではありません
ここも両側を出します。61秒以上の10本も平均169万回出ています。全体平均は下回りますが、100万回はしっかり超えている水準です。「長い動画は伸びない」と読むのは行き過ぎです。
もう1つ、逆向きのデータがあります。エンゲージメント率が高かった上位10本を秒数で分けると、こうなります。
| 秒数の区分 | ERトップ10のうち何本か | 該当した秒数 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| 0-15秒 | 4本 | 9秒・10秒・9秒・10秒 | 短尺は再生数だけでなくERでも上位に入る |
| 16-30秒 | 2本 | 28秒・21秒 | — |
| 31-60秒 | 4本 | 37秒・37秒・45秒・34秒 | 反応の深さでは長めの尺も強い |
| 61秒以上 | 0本 | — | 母数が10本しかないため断定はできない |
再生数では0-15秒が突出していたのに、エンゲージメント率の上位では31-60秒が同数で並びます。つまり短尺は「広く届く」、長めの尺は「深く刺さる」という読み方ができます。認知を取りたいなら短く、共感や採用応募のような深い反応が欲しいなら長めを混ぜる。この使い分けのほうが、単純な「短くしろ」より実務に合います。
ただしERトップ10は母数が10本しかなく、136本全体の傾向とは別のものです。表の右端に書いたとおり、断定はできません。
ジャンルで見ても、伸びたのは「会社の日常」でした
シート上のジャンルラベル(diversificationlabel)で見ると、本数が集まっているのは以下です。
| ジャンルラベル | 本数 | 平均再生数 |
|---|---|---|
| Comedy | 71本 | 2,056,313回 |
| Diary & VLOG | 17本 | 1,975,929回 |
| Scripted Comedy | 11本 | 2,581,818回 |
| Finger Dance & Basic Dance | 10本 | 1,590,000回 |
| Pranks | 9本 | 1,644,444回 |
※上位5ラベルのみ抜粋。このラベルはシート上のジャンル分類の記録であり、企画の作り込み度合いや、トレンド楽曲に乗ったかどうかを表すものではありません。また、これは5章の楽曲区分(116本/20本)とは別の切り口の集計です。同じ136本を、楽曲で分けたのが5章、ジャンルラベルで分けたのがこの表です。
本数が集まっているのはComedy(71本・平均206万回)で、全体平均の約201万回と同水準。台本のあるScripted Comedy(11本)は平均258万回と、ラベルの中では高い数字が出ています。ただし11本は母数として小さいので、参考程度に見てください。
読み取れるのは、弊社の実績は特殊な当たりの集まりではなく「会社の日常を笑いにする」を71本続けた積み上げだったということです。そしてこの型は、流行曲をまったく必要としません。ビジネスアカウントに切り替えたあとでも、そのまま実行できます。企画の考え方はTikTok動画の作り方の記事に、型の選び方はTikTokトレンドの記事に詳しく書きました。
切り替えるべき会社/切り替えないほうがいい会社
ここまで「切り替えて問題ない」と書いてきましたが、片側だけを勧めるのは誠実ではないので、分岐を出します。
| 自社の状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 会社・店舗・ブランドの名義で運用する | 切り替える | 商用利用にあたる。楽曲の扱いも分析機能も、切り替えた前提のほうが整理される |
| 採用目的で運用する | 切り替える | どの動画がどの層に届いたかを見ないと改善できない。インサイトが要る |
| 広告出稿を考えている | 切り替える | 投稿を広告に転用する形式(Spark Ads)を使うなら、権利と接続を先に整理しておくほうが速い |
| まだ試験運用で、社内の合意もこれから | 切り替えてよい | 無料・審査なしで、戻すこともできる。試すコストがほぼゼロ |
| 社長個人の名前で、会社の宣伝はせず発信する | 切り替えない | 商用利用でないなら急ぐ必要はない。クリエイターアカウントのほうが設計として合う |
| 企画が完全に「流行曲ありき」で組まれていて、それ以外の型を持っていない | 切り替える前に企画を変える | 切り替えた瞬間に企画が成立しなくなる。先に音源に依存しない型を1つ作ってから切り替える |
| 音楽そのものが商材(レーベル・アーティスト・音楽教室など) | 要相談 | 楽曲の扱いが業種特有になるため、記事の一般論で判断しない。権利関係を自社の法務に確認する |
| 非公開(鍵付き)で運用する必要がある | 切り替える前に確認する | ビジネスアカウントは公開前提の設計と考えられる(3章)。非公開運用が必須なら、自社の用途と合うかをアプリで確かめてから決める |

切り替えた直後にやること5つ
切り替えて終わりにすると、何も変わりません。切り替えた当日から1週間でやることを、順番に置いておきます。
ビジネスアカウントに切り替えると業種カテゴリが表示されますが、それだけでは伝わりません。プロフィール文には「誰に・何を提供している会社か」を1行、そして「このアカウントで何が見られるか」を1行書いてください。会社の沿革や理念は、ここには要りません。
動画を見て興味を持った人がプロフィールに来るまでの時間は数秒です。その数秒で判断されます。
切り替え時にスキップしたメールアドレスやウェブサイトを、ここで設定します。設定画面から後追いで入力できます。
ここで大事なのは、リンク先を会社トップページにしないことです。採用が目的なら採用ページ、商品が目的なら商品ページ。トップページに落とすと、そこからもう一度探させることになり、ほとんどの人が離脱します。
弊社も、最初はトップページにつないでいました。動画を見て笑ってくれた人が、会社概要と事業内容を読まされたあとで採用情報を探しにいくことになる。そのころ届いていた問い合わせは、「御社は何をしている会社ですか」から始まるものばかりでした。リンク先を採用ページに変えてからは、最初の一文が「この職種は募集していますか」に変わりました。動画で伝わっているのは会社の空気であって、事業内容ではない。だからリンク先は、空気の次に読ませたいものにしてください。
切り替えるとパフォーマンスデータ指標とオーディエンスインサイトが使えるようになります※3。手順はプロフィール → 右上メニュー → クリエイターツール(またはビジネススイート)→ インサイト。
最初にやるのは、直近10本の再生数・シェア数・保存数を書き出すことだけで十分です。これが今後の基準線になります。基準線がないと、翌月に「増えたのか減ったのか」が判断できません。ほかにも見られる数字は増えますが、最初の1か月はこの3つだけで足ります。シェアと保存が動いている動画が、次に伸びる型です。
4章のとおり、企業アカウントは商用音楽ライブラリから選ぶのが原則です※4。撮影の前に「この企画は自分たちの声だけで成立するか、BGMが要るか」を決めてください。
会話が主役の動画なら、BGMは無しか、声が聞き取れる音量まで下げるほうが伸びます。弊社の136本のうち116本は、そもそもBGMを必要としない形(自社オリジナル楽曲)でした。
ハッシュタグは大(トレンド)・中(テーマ)・小(自社)を混ぜて3〜5個が弊社の基本形です。このうち小(自社枠)だけは、最初に決めて二度と変えないでください。過去動画への回遊と、ファンの定着に効きます。
弊社の自社枠は #beem と #株式会社beem の2つです。記録シートに残っている動画タイトルを見ると、2021年の投稿にも2025年の投稿にも #株式会社beem が入っています。5年間、同じ言葉を使い続けているということです。ほかに #ベンチャー #起業 #お笑いベンチャー といったテーマ枠のタグがシート上のタイトルから確認できます。
この5つで、だいたい初日に1時間、あとは投稿のたびに数分です。とくにやること3(基準線の書き出し)は、切り替えた意味そのものなので飛ばさないでください。切り替えたのに一度もインサイトを開かないのは、弊社が最初の数ヶ月にやっていた失敗の逆パターンです。
豊田優人
#株式会社beem をたどって2025年の動画まで来てくれる。当時はそこまで考えていなくて、ただ社名を入れていただけです。決めるのは切り替えた日の5分でできるので、これだけは先にやってしまってください。TikTokビジネスアカウントのよくある質問
無料です。切り替えにも維持にも費用はかかりません。有料になるのは広告を出稿する場合だけで、それはアカウントの種別とは別の話です。広告の費用についてはTikTok広告の記事に実際の数字を書いています。
切り替えられます。個人事業主でも店舗でも可能で、登記簿などの提出も審査もありません。業種カテゴリを選んで確定するだけで、その場で切り替わります。審査があるのは認証済みビジネスアカウント(VBA)のほうで、これは別物です※5。2章に対比表を置いたので、そちらを見てください。
消えません。フォロワー、過去の投稿、いいね数、コメント、ユーザー名(@ID)はそのまま引き継がれます(この挙動は弊社の実機操作に基づきます)。3章に一覧表があります。
戻せます。手順は行きと同じで、プロフィール → 右上メニュー → 設定とプライバシー → アカウント → 「個人アカウントに切り替える」です。ただし切り替えの頻度に制限が設けられている可能性は否定できないので、月に何度も往復する運用は避けてください。
投稿画面で選べる楽曲は、商用利用の許諾された楽曲を中心とした構成になります。ただし理解しておくべきなのは順番です。公式ヘルプの原文は「Businesses cannot use the general music library for commercial usage.(企業は一般の楽曲ライブラリを商用目的で使用できない)」であり、主語は「企業」です※4。個人アカウントのままにしておけば流行曲を商用で使える、という抜け道にはなりません。権利の最終判断は自社の法務・顧問にご確認ください。
弊社の実測では、そうなりませんでした。記録シートに記載のある136本のうち116本が自社オリジナル楽曲(自分たちの声や音)で平均206万回・エンゲージメント率3.93%、外部の既存曲・流行曲を使った20本は平均170万回・3.54%です。再生数トップ15のうち14本も自社オリジナル楽曲でした。ただし差は約1.2倍で、外部楽曲側の170万回も低い数字ではありません。言えるのは「乗らなくても伸びる」までで、「乗るな」ではありません。社内を説得する材料が必要なら、この段落ごと見せていただいて構いません。
弊社が使ってきたのは15秒以内の短い会話劇です。記録シートに記載のある136本を長さで分けると、0-15秒の61本が平均240万回で、全体平均の約201万回を約1.2倍上回っていました。ジャンルラベルで見ても、本数が集まっているのはComedy(71本・平均206万回。これはQ6の楽曲区分とは別の切り口の集計です)で、「会社の日常を笑いにする」型の積み上げです。一方で61秒以上の10本も平均169万回出ているので、短くしないと伸びないという話ではありません。エンゲージメント率トップ10では31-60秒が4本入っており、深い反応は長めの尺でも取れています。作り方の詳細はTikTok動画の作り方の記事にあります。
優先度は高くありません。まず無料のビジネスアカウントで投稿を回し、数字が見える状態を作るのが先です。TikTok for Businessのヘルプには「以下の表は、認証済みビジネスアカウントで利用可能な機能の概要です。」として、コンバージョン分析やメッセージの自動リード収集、AIチャットボットなどが掲載されています※5。これらが必要になるのは、問い合わせ導線を本格的に設計する段階です。順番としては、投稿が続く体制を作るほうが先だと考えています。
それぞれのアカウントで個別に切り替えることになります。会社として複数ブランドや複数店舗を運用する場合、アカウントごとに業種カテゴリとプロフィールを設計してください。運用が重くなるので、1つ目のアカウントで型ができるまでは増やさないことをおすすめしています。弊社も、136本のうち大半は1つの型を積み上げた結果です。
まとめ:3分の切り替えで、翌週から数字が見える
最後に要点をまとめます。
- 会社としてTikTokを運用するなら、ビジネスアカウントに切り替えて問題ありません。無料・審査なし・法人でなくても可で、3分で終わります
- 切り替えてもフォロワー・過去の投稿・いいね・ユーザー名は消えません。個人アカウントに戻すこともできます(3章)
- 切り替えるとパフォーマンスデータ指標・オーディエンスインサイト・クリエイティブツールが使えるようになります
- 名前の似た認証済みビジネスアカウント(VBA)は別物。コンバージョン分析やAIチャットボットはそちらの機能なので、無料のビジネスアカウントで期待しないこと(2章の対比表)
- 最大のデメリットは楽曲。公式ヘルプの原文は「Businesses cannot use the general music library for commercial usage.」で、主語は「企業」です。切り替えないでおけば流行曲が使える、という抜け道にはなりません
- 企業向けには商用音楽ライブラリ(100万曲)が用意されており、適用範囲はオーガニック投稿/動画広告/ブランドコンテンツの3つ
- 弊社の記録シートに記載のある136本では、自社オリジナル楽曲116本が平均206万回・ER3.93%、外部の既存曲・流行曲20本が平均170万回・ER3.54%。再生数トップ15のうち14本が自社オリジナル楽曲でした
- ただし差は約1.2倍で、外部楽曲側の平均170万回も低くありません。言えるのは「流行曲がなくても伸びる」までです
- 音源に頼らない型は15秒以内の短い会話劇。0-15秒の61本が平均240万回で全体平均の約1.2倍。トップ15のうち12本が15秒以内でした
- ただし61秒以上の10本も平均169万回あり、エンゲージメント率トップ10では31-60秒が4本。短尺は広く届き、長めの尺は深く刺さる、という使い分けで読んでください
- 切り替えないほうがいいのは、社長個人の名義で商用利用しない場合。非公開運用が必要な場合は、公開前提の設計と合うかを先に確かめてください。企画が流行曲ありきの会社は、切り替える前に音源に依存しない型を1本作る(7章の分岐表)
- 切り替えた直後にやることは5つ。プロフィール文/連絡先とリンク先/インサイトで基準線を書き出す/楽曲を撮影前に決める/自社枠のハッシュタグを2つ固定する
- 136本は無作為抽出ではなく、84本が2021年の投稿に偏っています。絶対値ではなく相対差として読んでください
今日からやることは、これだけです。
- アプリを開いて、ビジネスアカウントに切り替える(3章。3分で終わります)
- プロフィール文を「何屋か」が3秒で分かる形に書き直す(8章のやること1)
- インサイトを開いて、直近10本の再生数・シェア数・保存数を書き出す(8章のやること3)
- 自社枠のハッシュタグを2つ決めて、固定する(8章のやること5)
- 次の1本は、流行曲を使わない前提で企画する(6章の「短い会話劇」)
この順でやれば、来週には「自社の何が受けているのか」が数字で見える状態になります。切り替えは、その入り口にすぎません。
豊田優人
「うちの業種だと切り替えて大丈夫か」「切り替えたあと、何を撮ればいいのか」といった具体的な設計を詰めたい方は、お気軽にご相談ください。この記事で公開したデータをもとに、貴社の状況に合わせた形をご提案します。
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豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役
フォロワー約47万人の会社TikTokアカウントを運用し、100万再生を超えた動画は137本、累計4.61億再生。会社アカウントの企画を自ら担当。株式会社BEEMは、SNS採用のみで採用したメンバーで構成される「ショート動画の実践企業」として、TikTokの運用支援・広告運用を提供している。
出典
- TikTok社発表「TikTok、日本国内のMAUが4,200万を突破」2025年11月27日(自社調べ。「月間アクティブユーザー数(MAU)が4,200万を突破した」との記載、およびユーザー数がTikTokとTikTok Liteの合算(重複を除く)である旨を確認。2026年7月26日にURLの実在と当該記載を確認済み) https://newsroom.tiktok.com/tiktok-mau-4200?lang=ja-JP
- 総務省情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月27日公表)。TikTok利用率:全年代33.2%。2026年7月26日に報告書PDFと報道資料の実在、および当該数値を確認済み。なお令和7年度版が令和8年6月26日に公表されているため、公開前に新年度の数値を確認すること(冒頭コメント6に手順あり) https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf(報道資料:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000125.html)
- TikTok for Business ヘルプセンター「TikTokアカウントの種類」。アカウントの種類として個人アカウント/ビジネスアカウント(一般)/認証済みビジネスアカウント/Blue-V認証済みビジネスアカウント/組織アカウント/TikTok for Businessアカウント/TikTok広告マネージャーアカウント/TikTokビジネスセンターアカウントの8つが挙げられており、ビジネスアカウント(一般)に「パフォーマンスデータ指標、オーディエンスインサイト、クリエイティブツール」が備わる旨、および個人アカウントには提供されていない商業重視のツールを提供する旨の記載を参照。2026年7月26日にURLの実在と上記記載を確認済み。なお同ページにクリエイターアカウントの説明および楽曲利用に関する記述はありませんでした https://ads.tiktok.com/help/article/tiktok-and-tiktok-business-account-types?lang=ja
- TikTok for Business ヘルプセンター「About the Commercial Music Library(商用音楽ライブラリについて)」。同ページに「Businesses cannot use the general music library for commercial usage」(企業は一般の楽曲ライブラリを商用目的で使用できない)と明記されており、収録楽曲数として「1 million songs」(100万曲)、適用範囲としてオーガニック投稿(デュエット・リアクション・つぎ足しを含む)/動画広告/ブランドコンテンツの3つが挙げられている。2026年7月26日にURLの実在と上記記載を確認済み https://ads.tiktok.com/help/article/commercial-music-library
- TikTok for Business ヘルプセンター「TikTokアカウントの企業認証について」。同ページに「以下の表は、認証済みビジネスアカウントで利用可能な機能の概要です。」と明記され、コンバージョン分析、メッセージの自動リード収集、AIチャットボット、オーガニックコンバージョンアンカー、ビジネスプロフィールの公開表示などが認証済みビジネスアカウント(VBA:Verified Business Account)の機能として掲載されている。2026年7月26日にURLの実在と上記記載、および当該機能が認証済みビジネスアカウント限定として書かれていることを確認済み https://ads.tiktok.com/help/article/tiktok-business-account?lang=ja
シートに記録されているのは各動画の楽曲名・投稿日・再生数・いいね・コメント・秒数・ジャンルラベルです。「企画の作り込み度合い」「どの1本が外部楽曲だったか」は記録されていません。本文でそれらに触れている箇所は、すべて「記録がない」と明示しています。
アカウント種別・切替手順・楽曲の権利に関する記載のうち、公式ヘルプで確認できたものには出典番号を付けています。出典番号のない操作手順・画面名称・挙動(3章の切替手順、消えないものの表、元に戻す方法、8章の設定手順)は弊社の実機操作と運用経験に基づく記述です。仕様・ポリシー・画面名称は改定されるため、実行の直前に公式ヘルプとアプリで最新の内容をご確認ください。楽曲の権利に関する最終判断は、必ず自社の法務・顧問にご相談ください。