最終更新日:2026年10月13日
執筆・監修:豊田優人(株式会社BEEM 代表取締役)
- TikTok広告の管理画面を開いたものの、ターゲティングをどこまで絞ればいいのか決められない中小企業のマーケ・販促担当者の方
- 設定項目の解説記事はもう何本も読んだのに、読んだあとも自社の配信先が決まらない方
- 年齢と興味関心を絞ってみたけれど、思っていた層に届いている実感が無い方
この記事は二段構えです。前半(2〜4章)で、管理画面で指定できるターゲティング項目を一覧と項目別の詳細で全部並べます。ここだけ読んでも初回の出稿設定は終わるように書いてあります。そのうえで後半(5〜8章)が本題です。弊社代表が企画を出す前に必ず確認している7項目の3番目は「誰のレコメンド欄に届くかを決める」——これは管理画面の話ではありません。音源・出演者・題材といったクリエイティブ側で、誰のレコメンド欄に出るかはほぼ決まっているというのが弊社の見方です。管理画面で絞る作業は、そのあとに来ます。なお本記事には「この設定にするとCPMが何円下がる」といった設定別の比較数値は1つも出てきません。弊社がその実測を持っていないためです。書ける範囲は2章の一覧表の中で、項目ごとにその都度お伝えします。
この記事の担当範囲|設定項目と、届け先の設計を1本で扱います
最初に、隣の記事との役割分担をはっきりさせておきます。
「TikTok広告 ターゲティング」で検索される方の多くは、すでに広告そのものの概要や費用感は別の記事で読んでいます。ですのでこの記事では、それらを繰り返しません。
| 記事 | 担当する問い | 中心にあるもの |
|---|---|---|
| TikTok広告とは?費用・始め方・効果を実数で全部話します | そもそも何ができて、いくらで、どう始めるのか | 広告の種類、始め方の6ステップ、入稿規定、審査、予算からリーチを逆算する換算表 |
| TikTok広告の費用 | お金をどう配分するか | 予算レンジ別にできること、学習期間、削ってはいけないもの |
| この記事 | 誰に配信するかを、どう決めるか | 設定項目の一覧と項目別の詳細、初回の触り方、そして設定の外側で先に決まっているもの |
親記事のほうには、設定できる項目の一覧が最小限だけ載っています。「初回はここだけ触ればいい」という判断ができれば出稿は始められるからです。この記事はその詳細版です。項目ごとに、それが配信に何をしているのか・どこで事故るのか・弊社はどう使っているのかまで下ろします。
この記事で使う整理:絞り込みは3層ある
読み進めるための地図として、ひとつ枠組みを置かせてください。TikTok広告で「誰に届くか」が決まる場所は、実は1箇所ではありません。3つの層に分かれています。
- 第1層:管理画面の絞り込み——年齢・地域・興味関心などで、配信していい範囲の枠を決める。この記事の2〜4章
- 第2層:機械の最適化——その枠の中で、TikTok側が「反応しそうな人」を探して配信していく。担当者が直接は触れない層
- 第3層:クリエイティブの絞り込み——枠の中に配信されたあと、実際に最後まで見て反応するのは誰か。音源・出演者・題材が決めている。この記事の5〜8章
この3層という整理そのものは、読者に説明するために弊社が本記事のために組んだもので、代表がこの言葉で語っているわけではありません。ただ、後半で扱う考え方を理解するには、この地図があったほうが早いはずです。
多くの解説記事が扱っているのは第1層だけです。そして相談を受けていて多いのが、第1層を必死に調整しているのに配信結果が動かないというケースです。理由は単純で、第3層のほうが効き方が大きいからです。とはいえ第1層を知らないまま出稿すると別の事故が起きるので、順番どおりに行きます。
【一覧】TikTok広告のターゲティングで指定できること
まず全体像です。管理画面を開く前に、何が指定できて、何は指定できないのかを1枚で押さえてください。真ん中の列は項目の名前の言い換えではなく、その項目が配信に対して何をしているかで書いています。右端の列には、弊社がその項目をどう使っているかを入れてあります。数字でお答えできない項目については、その旨もこの列に書いています。
| 指定できる項目 | その項目が配信に対して何をしているか | 弊社の使い方 |
|---|---|---|
| 年齢 | 配信先をあらかじめ決められた年齢の幅の内側に閉じ込める。幅は13〜17/18〜24/25〜34…という区切りで固定されていて、その内側(たとえば23歳前後)まで下りることはできない | 商材の対象から明らかに外れる区分だけ外します。区分を1つ外すとCPMがいくら動くかという実測は弊社に無いため、比較表は出していません。「狙いは23歳前後」のような細かい狙いは、この項目では作れません(6章で別の手を使います) |
| 地域 | 配信を国・都道府県(一部は市区町村)の内側に閉じる。指定した線の外側には1円分も出ない、という効き方をする | 商圏がある会社は絞ります。全国どこでも売れる/どこからでも応募が来る商材なら、日本全体のままにします。ここは絞ることに迷いが要らない、数少ない項目です |
| 性別 | 配信を男女どちらか一方に寄せる。「すべて」は指定していない状態ではなく、寄せないという指定だと考えてください | 原則「すべて」。商材が明確に片方向けのときだけ絞ります。「なんとなく女性のほうが反応しそう」で絞らないでください。その仮説はクリエイティブで検証したほうが速いです |
| 言語 | 端末の利用言語で配信対象を切り分ける。国内向けの配信では、地域の指定とほぼ同じ範囲を二重に切ることになりやすい | 触りません。日本国内向けの配信で、ここを触って良くなった経験が弊社にはありません |
| 興味関心(インタレスト) | TikTok側の分類でユーザーを束ね、その束の中だけに配信範囲を限定する。束ね方を決めているのは出稿側ではなくTikTok側なので、「うちが思う美容好き」と一致しているとは限らない | 初回は触りません。使うのは勝ちクリエイティブが決まってからです。「いくつ選ぶのが適正か」という推奨個数は、代表への確認が取れていないので数字を出しません。弊社の運用では、選ぶ数よりも選んだカテゴリの中で最後まで見られるかどうかのほうを見ています |
| 行動ターゲティング | 直近に何をしたかの足跡で配信対象を切る。属性ではなく行動で束ねるぶん対象は新しくなるが、そのぶん母数は狭くなる | 初回は触りません。興味関心が「その人がどんな人か」なら、こちらは「その人が最近何をしたか」です。3章で違いを説明します |
| カスタムオーディエンス | この項目だけ、配信の条件をTikTok側の情報ではなく自社側に溜まった接触履歴で作る。顧客リスト・サイト訪問・動画視聴・フォーム入力といった「自社との接点」が、そのまま配信対象になる | 初回は作れません。ピクセルにデータが溜まってからです。弊社が自社のカスタムオーディエンスでどれだけ成果を伸ばしたかというデータは、記事に出せる形で持っていませんので、効果の程度は書いていません |
| 類似(Lookalike)オーディエンス | 自社側で作った配信対象を種にして、TikTok側が「似ている」と判断した人まで範囲を押し広げる。絞る方向ではなく広げる方向に効く、数少ない項目 | 初回は作れません。元になるカスタムオーディエンスが必要です。類似度をどこまで広げるかの推奨値も、弊社の実測が無いため書いていません |
| デバイス・OS | 人ではなく端末の側の条件で配信を切る。OS・接続環境・端末の価格帯といった、その人が何に興味があるかとは無関係な軸で範囲が減る | 触りません。アプリのインストールを目的にする場合など、明確な理由があるときの例外だけです |
| 除外設定 | ほかの項目が配信の範囲を作るのに対し、この項目だけは作った範囲から人を引き算する。すでに買った人・すでに応募した人を、配信の対象から外す | リストがあるなら除外だけ入れます。絞り込みの中で、唯一「最初からやって損が無い」ものです |
表を通して読むと、弊社が初回に触っているのは「年齢」「地域」、あとはリストがあるなら「除外」だけだと分かると思います。残りは全部そのままです。
「そんなに広くて大丈夫なのか」と思われるかもしれませんが、TikTokの国内の月間アクティブユーザーは4,200万と発表されています※1。広く置いたところで配信対象が枯れる心配はありません。枠を広く取ることのリスクより、狭めて判断材料が集まらないことのリスクのほうが大きい——これが弊社の見方です。
3つだけというのは、物足りなく見えるかもしれません。ただ、この3つでやっているのは狙いを当てる作業ではなく、明らかな無駄を削る作業です。商圏の外に出さない、対象外の年齢に出さない、すでに応募した人に出さない。管理画面に用意されている項目でできるのは、そこまでです。残りの項目をどれだけ組み合わせても、削る側から当てる側へは回りません。
そしてもうひとつ。この表を見ながら、こう思った方もいるはずです。「うちが狙いたい人は、この項目の組み合わせでは表せない」と。それは正しい感覚です。その話を後半でします。
項目別の詳細|どこで効いて、どこで事故るか
ここからは、一覧表の各項目を個別に見ていきます。前章の表で判断がついた方は、4章まで飛ばしていただいて大丈夫です。
年齢:区分でしか指定できない、という前提を先に飲む
年齢は区分でしか指定できません。1歳刻みでも、5歳刻みでもありません。この仕様が、後半の話に直結します。
たとえば新卒採用の広告を出したいとします。狙いたいのは23歳前後です。ところが管理画面で選べるのは「18〜24」か「25〜34」で、23歳を中心にした指定はできません。「18〜24」を選べば18歳・19歳の高校卒業直後の層まで入りますし、「25〜34」を足せば30代前半まで入ります。どちらを選んでも、狙いからはズレます。
ここで多くの担当者が「じゃあ興味関心で補おう」と考えます。気持ちは分かるのですが、弊社はそうしません。年齢の細かい狙いは、管理画面ではなく音源で作ります。その具体的な方法は6章に書きました。
もうひとつ、年齢を絞る前に見ておいていただきたい数字があります。総務省の調査によれば、TikTokの利用率は全年代で33.2%、10代65.7%、20代58.7%です※2。つまり10代・20代に偏っているのは事実ですが、全年代の3人に1人が使っているのも事実です。「TikTokは若い人しかいないから、うちの40代向け商材には合わない」という理由で年齢区分を落とすのは、この数字を見てから決めてください。
なお、年齢区分の下限(13〜17歳の区分を選べるかどうか)は、国・アカウントの種別・業種によって扱いが変わることがあります。特に未成年に配信してはいけない商材を扱う場合は、公開時点の実画面で必ず確認してください。
地域:迷わず絞っていい、数少ない項目
地域は、この記事で唯一「迷わず絞ってください」と言える項目です。店舗がある、施工エリアが決まっている、通勤圏内からしか採用しない。こういう制約がある会社が全国配信をすると、届いた分がそのまま無駄になります。
逆に、通販でもオンライン完結のサービスでも、応募者が引っ越してでも来る仕事でもいい——そういう会社なら、日本全体のままにしてください。「とりあえず東京から」は、根拠がないなら第1層を無意味に狭めているだけです。
性別・言語:触らないほうが速い
性別を絞りたくなるのは、たいてい「うちの顧客は女性が多いから」という理由です。ただ、それは「これまでの顧客」の話であって、「これから広告で獲りに行く人」の話ではありません。
弊社は原則「すべて」にしています。理由は、性別の仮説は、管理画面で絞るよりクリエイティブで検証したほうが速くて正確だからです。女性向けの訴求の動画を出せば、絞らなくても反応するのは女性に寄ります。しかも「実は男性も反応した」という発見が残ります。先に絞ると、その発見は永久に手に入りません。
言語は、日本国内向けの配信であれば触る理由がほぼありません。
興味関心と行動ターゲティング:似ているようで、時間軸が違う
この2つは並んで表示されるので混同されがちですが、見ているものが違います。
- 興味関心(インタレスト)=その人がどういう人か。TikTok側が分類した「美容に関心がある人」「ビジネスに関心がある人」といった属性に近いもの
- 行動ターゲティング=その人が最近何をしたか。直近の視聴・いいね・コメント・シェアといった行動や、よく見ているクリエイターのカテゴリ
この違いは、効いてくるタイミングの違いとして現れます。行動のほうが直近の動きを拾うので反応は速く出やすい一方、対象は狭くなります。興味関心は広く取れる代わりに、その人がいま何を求めているかまでは分かりません。
どちらも、弊社は初回では触りません。触るのは、勝ちクリエイティブが1本決まってからです。順番が逆になると、負けている原因が「動画」なのか「絞り込み」なのか、永久に切り分けられなくなります。
なお「興味関心はいくつ選ぶべきか」という質問をよくいただきますが、弊社として推奨個数の数字は出していません。代表への確認が取れていない項目だからです。他社記事に出ている「3〜5個が目安」といった数値を借りて埋めることも、していません。
カスタムオーディエンスと類似オーディエンス:あとから効く2つ
この2つは、初回の出稿では作れません。順番があります。
この2つについて、弊社が「どれだけ成果が変わったか」という数字は本記事に出していません。自社の広告運用でカスタム/類似オーディエンスを使った成果を、記事に出せる形で整理できていないためです。効果があると言い切ることも、無いと言い切ることも、していません。手順と順番だけをお伝えしています。
デバイス・OSと除外設定
デバイス・OSは、アプリのインストールを目的にする場合など、明確な理由があるときだけ触ってください。それ以外で絞ると、単に配信量が減ります。
除外設定は逆で、リストがあるなら最初から入れて損がありません。すでに購入した人、すでに応募した人、すでに面談した人に、同じ広告を出し続ける必要はないからです。絞り込みの中で唯一、初回から積極的に使っていい項目です。
初回の触り方|順番と、触ったあとにやってはいけない変更
設定項目が分かったところで、実際の手順です。
触ったあとに何をすると、何が壊れるか
TikTok広告は配信しながら「誰に当たるか」を機械が探すタイプの媒体です(1章の第2層)。ですので、配信開始後にターゲティングを動かすと、機械が探し直しになります。
ここは費用の記事でも扱っていますが、あちらは予算の動かし方が主題でした。この記事はターゲティングに限って、何をすると何が起きるかを整理しておきます。
| やりたくなること | 何が起きるか | 代わりにどうするか |
|---|---|---|
| 配信開始から数日で、反応が悪いので年齢を絞る | 探索がやり直しになり、それまでのデータが判断に使えなくなる | クリエイティブを差し替える。数日で分かるのは動画の勝ち負けのほうです |
| クリエイティブとターゲティングを同時に変える | どちらが効いたのか永久に分からなくなる | 片方ずつ動かす。順番はクリエイティブが先です |
| 配信量が出ないので、興味関心を追加する | 「追加すると広がる」と思われがちですが、条件の組み方によっては逆に狭まります | まず絞り込みを外す方向で試す。追加するのは、外しても出ないと確認してから |
| コンバージョンが取れないので、ターゲティングを見直す | 届いていて・押されていて・入口まで来ているなら、原因は絞り込みではなくLPや商材側にあることが多い | どの段で落ちているかを先に特定する。絞り込みは、いちばん最後に疑う場所です |
ここまでが、管理画面の話です。ここから先が、この記事の本題になります。
【本題】管理画面で絞る前に、誰のレコメンド欄に出るかはほぼ決まっています
弊社代表の豊田は、企画を出す前に必ず確認している項目を7つ挙げています。その3番目と5番目が、この記事に直結します。
豊田優人
短い言葉ですが、ここには前提があります。「誰のレコメンド欄に届くか」は、決めるものだ——という前提です。
広告の管理画面を触っている感覚だと、これは違和感があるかもしれません。届け先を決めるのは管理画面の仕事のはずだからです。年齢を選び、地域を選び、興味関心を選ぶ。それが「決める」ということではないのか、と。
管理画面が決めているのは、届け先ではなく「枠」です
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
1章の3層で言うと、管理画面(第1層)が決めているのは「配信していい人の範囲」までです。その範囲の中で実際に誰へ配信されるかは機械が探し(第2層)、配信されたあと、実際に最後まで見て反応するのが誰かは、動画そのものが決めています(第3層)。
たとえば「18〜24歳・日本全体」という枠を作ったとします。この枠の中には、大学生も、新社会人も、専門学校生も、フリーターの方も、全員入っています。この枠のうち誰が最後まで見るかを決めているのは、管理画面ではありません。流れている音楽であり、映っている人であり、扱っている題材です。
そして、TikTokのレコメンドは反応した人の周辺へ広がっていく構造をしています。ですから第3層で誰が反応したかは、その後どこへ配信が伸びていくかにも効いてきます。クリエイティブは、配信の入口と出口の両方に触っているわけです。
だから「企画の前」に届け先を決める
代表が挙げている7項目は、企画を出す前のチェックリストです。動画を作り始める前の段階で確認する、という位置づけになっています。その3番目に「誰のレコメンド欄に届くかを決める」が入っている理由は、ここにあります。
届け先を決めてから企画を作れば、第3層が最初から狙いに合います。逆に企画を作ってから届け先を考えると、管理画面でどれだけ絞っても、動画が呼び込む層のほうが勝ちます。
これは、広告に予算を入れる前に効く話です。代表が本気で反対していることのひとつが、TikTokのオーガニック運用だけで採用や認知が完結するという考え方で、弊社は広告を使うことを前提に設計します。ただ、広告を使うからといって、届け先の設計を管理画面に丸投げしていいという話にはなりません。順番としては、届け先の設計が先で、管理画面はそのあとです。
音源は、管理画面の外にあるターゲティング設定です
ここから、具体的にどうやってクリエイティブ側で届け先を決めるのかに入ります。まず音源です。
音源は「ターゲットの年齢層と一致しているか」で選ぶ
音源について代表が企画の前に確認しているのは、5章で引いた「音源がターゲットの年齢層と一致しているか」です。
ここが、他の解説と決定的に違うところだと思います。世の中の「トレンド音源を使え」というアドバイスは、流行に乗ればアルゴリズムに拾われるという発想で語られます。代表の確認項目に入っているのは、流行っているかどうかではなく、年齢層と一致しているかどうかです。音源は、届け先を指定するための道具です。
『毒上司』で何をしたか
弊社の『毒上司』シリーズは、2025年3月26日から投稿が始まったシリーズです。代表はこの企画がバズった理由を3つに分解していますが、その3つ目が音源の話です。
豊田優人
ここで、3章の年齢の話に戻ってください。管理画面では23歳前後という指定はできません。選べるのは「18〜24」か「25〜34」です。
ところが音源は、アーティストのファン層という形で、区分よりも細かい年齢の輪郭を持っています。誰がそのアーティストを聴いているかは、年齢区分とは別の切り口で決まっているからです。管理画面の年齢区分で作れない狙いを、音源が作っている——これが、弊社が「音源はターゲティング設定だ」と言っている意味です。
自社の実測で言えること、言えないこと
では音源によって届き方が変わることを、弊社は数字で示せるのか。ここは正直にお伝えします。
弊社が動画ごとの数字を転記している記録シートには、136本分のデータが入っています。使用楽曲の内訳はこうなっています。
| 区分 | 本数 | 平均再生数 | 平均エンゲージメント率 |
|---|---|---|---|
| 自社オリジナル楽曲(その動画で撮った自分たちの声・音がそのまま音源になっているもの) | 116本 | 2,064,707回 | 3.93% |
| 外部の楽曲(既存曲・流行曲) | 20本 | 1,701,425回 | 3.54% |
この表から言えることは、実はほとんどありません。その理由を先に書きます。
- これはオーガニック投稿です。広告配信のデータではないので、「外部楽曲のほうが平均再生数が低いから広告でも使わないほうがいい」とはまったく言えません
- 無作為抽出ではありません。反響のあった順に転記されたシートなので、母集団が偏っています。全投稿の平均ではありません
- 時期が偏っています。再生数トップ15のうち12本が2021年の投稿で、当時と今では市場の状況が違います
そのうえで、この表を載せた理由はひとつだけです。弊社の投稿の大半(136本中116本)は、外部の流行曲に乗っていないという事実を示すためです。「トレンド音源に乗ればいい」という通説どおりに運用してきたわけではない、という記録として見てください。
代表が確定させているのは、音源は狙う層とアーティストのファン層を一致させるために選ぶという考え方と、『毒上司』での実際の選択です。「オリジナル音源と既存曲をどう使い分けるか」という方針そのものは、代表への確認が取れていませんので、この記事では書いていません。この表を使い分けの根拠として読まないでください。
音源以外の2つ:出演者と題材
弊社の見方では、届け先を決めているのは音源だけではありません。出演者と題材も同じ働きをします。出演者で届け先を決めた実例は、この記事ではまだお出しできないので、ここでは代表の説明が残っている題材のほうを見ます。
『毒上司』の場合、題材の設計はこうなっていました。代表の説明では、部下の側は「自分がやばい新人なのでは」と確認・共感するために見て、上司の側は「自分が抱えている部下はやばい新人では」「自分のむかつく上司は毒上司では」と重ねて見る。上司・部下のどちらも自分ごと化するという設計です。
これは、ターゲティングの言葉に翻訳すると「1本の動画で2つの層を同時に取りにいく設計」です。管理画面では、こういうことはできません。管理画面でできるのは、範囲を広げるか狭めるかだけです。「広いけれど、どちらの層にも刺さる」という状態は、題材の側でしか作れません。
では、こうした届け先を、代表は企画のどの段階で決めているのか。次の章で、代表自身の企画の作り方から確かめます。
【実例】届け先は、企画を探し始める前に決まっている
企画がどこから来るのかという質問に、代表はこう答えています。
豊田優人
ターゲティングに関わるのは、2つ目のパターンです。前提条件を先にセットしてから、レコメンドの中で企画を探す。『毒上司』の場合、その前提条件は「4月に仕掛ける」でした。
『毒上司』では、前提条件がそのまま届け先になっていた
代表がこの企画のバズった理由として挙げている3つのうち、1つ目は4月=新社会人という世の中のトレンドと退職代行という進行中のトレンドの二重取り、3つ目が6章で見た音源です。届け先に関わる部分だけを並べると、次の順番で決まっています。
- いつ・誰に:4月、新社会人に世の中の注目が集まる時期に仕掛ける
- 狙う年齢:新卒=23歳前後
- 何で届けるか:その年齢とファン層が一致する、Number_iの「稲妻」を音源に使う
管理画面の年齢区分(18〜24/25〜34)が出てくるのは、この順番のあとです。届け先は、企画を探し始める前の前提条件の時点で、もう決まっています。これが、この記事のタイトルにした「管理画面で絞る前に、誰のレコメンド欄に出るかはほぼ決まっている」の意味です。
代表は直近の実例としてキャバクラの採用企画も挙げていますが、この記事では業種の紹介にとどめ、企画の中身や数字には触れません。なお、クライアント事例は業種のみを掲載する運用にしているため、店名は伏せています。
管理画面は「リーチを取る道具」として、そのあとに開く
代表は、これからTikTokを始める会社への助言として、もう一段手前の順番も挙げています。撮る前に、どこで自社を知ってもらうのかのチャネル設計を先に決める。無名の会社なら、リーチは広告で取り、そこからホームページや求人媒体へ送る。
この順番に当てはめると、広告の管理画面が受け持つのは「リーチを取る」部分です。誰に届けるかは企画の前提条件で、どこへ送るかはチャネル設計で、それぞれ先に決まっています。ですから、届け先がクリエイティブ側で決まっているなら、管理画面のほうは広く置いておいて構わない。むしろ広いほうがいい、というのが弊社の考えです。狭めると、クリエイティブが届けようとしている相手を、管理画面が邪魔することがあるからです。
前半と後半をつなぐ|クリエイティブで絞れているなら、管理画面は広くていい
ここで、前半の管理画面の話と後半の話をつなぎます。
2章で「弊社が初回に触るのは年齢と地域だけ」と書きました。読んだ時点では、単に「機械の学習を邪魔しないため」という理由に見えたと思います。それも理由のひとつです。ただ、本当の理由はもうひとつあります。
絞る仕事は、すでにクリエイティブ側で終わっているからです。
音源で年齢の輪郭を作り、出演者で誰のレコメンド欄に出るかを決め、題材で誰が自分ごと化するかを決める。ここまでやってあれば、管理画面でもう一度同じことをする必要がありません。むしろ二重に絞ることになって、届くはずだった人を削ります。
逆に言えば——ここが厳しいところですが——クリエイティブ側で何も決めていない場合、管理画面をどう触っても状況は変わりません。枠を狭めても広げても、その枠の中で誰も最後まで見ないからです。
自社はどちらの状態か
| いまの状態 | 見分け方 | 管理画面をどうするか | 先にやること |
|---|---|---|---|
| クリエイティブ側で届け先が決まっている | 「この動画は誰のレコメンド欄に出したいのか」に、音源・出演者・題材の3つで答えられる | 広いまま。年齢と地域だけ触る | そのまま配信して、動画単位で勝ち負けを見る |
| 決まっていない | 同じ問いに「20代の女性」のような、管理画面の項目と同じ言葉でしか答えられない | 広いまま。絞っても解決しません | 企画に戻る。誰のレコメンド欄に届けるかを先に決めてから撮り直す |
| 過去に絞り込んで、配信量が出ていない | インプレッションが伸びず、2週間経っても判断材料が集まらない | 絞り込みを外す。年齢と地域以外を元に戻す | 外したうえで、クリエイティブを3〜5本入れ直す |
2行目の見分け方について補足します。「20代の女性」という答えが悪いわけではありません。それは管理画面に入力する言葉としては正しい。ただ、それだけしか出てこないなら、第3層の設計がまだ無いということです。そこを詰めずに管理画面の項目を増やしても、結果は動きません。
代表が「もう通用しなくなった」と挙げている手法のひとつに、既存の動画をもとにした焼き直しの運用があります。
焼き直された動画には、届け先の設計が入っていません。その状態で管理画面のターゲティングを工夫するのは、順番が逆です。
今週やることの一覧
ここまでの内容を、手順に落とします。
- 1. いまの広告アカウントの絞り込みを全部書き出す。2章の一覧表の10項目を上から見て、何を指定しているかをメモします
- 2. 年齢・地域・除外リスト以外の絞り込みを、いったん外す。配信中のものを触ると学習がやり直しになるので、外すなら次のキャンペーンからにしてください
- 3. 直近で配信した動画1本について、3つの問いに答える。「この音源は誰のファン層と重なっているか」「この出演者は誰のレコメンド欄に出るか」「この題材は誰が自分ごと化するか」
- 4. 3つとも答えられなかったら、管理画面を閉じて企画に戻る。これがこの記事でいちばんお伝えしたいことです
- 5. 次に撮る1本は、届け先を決めてから企画する。順番はこれだけです
3番の問いに答えられないまま管理画面を触り続けるのが、いちばん時間を使う道です。絞り込みの設定は、あとからいくらでも変えられます。変えられないのは、撮ってしまった動画のほうです。
TikTok広告のターゲティングについて、よくある質問
年齢(明らかに外れる区分を外すだけ)と地域、それと除外リストがあれば除外。この3つだけです。性別・言語・興味関心・行動・デバイスは触らないでください。絞るのは、勝ったクリエイティブが1本決まったあとです。
この質問に、弊社は数字でお答えしていません。推奨個数について代表への確認が取れていないためです。他社記事に出ている「3〜5個が目安」といった数値を借りて書くこともしていません。
代わりに手元で確認できることをお伝えします。いま選んでいるカテゴリを外した状態と比べて、配信量が出ているかどうかを見てください。外したほうが出るなら、そのカテゴリは絞りとして効きすぎています。個数の正解より、そちらのほうが実務的です。
この記事には、その比較数値を1つも出していません。弊社が設定別の実測データを持っていないためです。持っていないものを他社の平均値で埋めると、それを弊社が検証した数字のように見せてしまうので、していません。
一般論として、絞り込みを強めるとCPMは上がる方向に動きやすい、とは言えます。ただし業種・季節・クリエイティブの出来で大きく動くので、他社の数値を自社に当てても外れます。自社の広告アカウントで、絞った月と広げた月を比べるのがいちばん速いです。
できません。年齢は区分でしか指定できず、選べるのは「18〜24」か「25〜34」です。6章に書いたとおり、弊社はこの粒度の狙いを音源で作っています。狙う層とアーティストのファン層が重なる曲を選ぶ、という方法です。管理画面のほうは区分のまま広く置いておきます。
効果があるともないとも、この記事では書いていません。弊社がこの2つを使った成果を、記事に出せる形で整理できていないためです。
お伝えできるのは順番だけです。ピクセルを設置する→データが溜まる→カスタムオーディエンスを作れる→そこから類似を作れる。この順番は動かせないので、いま使えないとしても、ピクセルの設置だけは先に済ませておいてください。設置が遅れた分だけ、使えるようになる時期も遅れます。
変えると探索がやり直しになります。4章の表のとおり、配信開始から数日で反応が悪いときに触るべきなのはターゲティングではなくクリエイティブです。数日で判断がつくのは動画の勝ち負けのほうで、絞り込みの良し悪しではありません。
変えるなら、クリエイティブとターゲティングを同時に動かさないこと。同時に動かすと、どちらが効いたのか分からなくなります。
できます。カスタムオーディエンスを使う形になります。ただし弊社としては、TikTok広告の得意な役割は「まだ自社を知らない人への新規リーチ」だと考えています。すでに接点のある人への再訴求は、他の媒体のほうが精度で有利なことも多いです。
どちらが自社に合うかは、いまTikTokに何をさせたいかによります。TikTok単体で完結させようとしないこと——これは代表が繰り返し言っていることです。TikTokで知ってもらい、ホームページや求人媒体へ送る、という線で考えてください。
意味はあります。商圏の外に配信しない、対象外の年齢に配信しない、既存顧客に同じ広告を出し続けない——この3つは、管理画面でしかできません。無駄を削る役割としては確実に効きます。
この記事が言っているのは「管理画面は無意味だ」ではなく、狙いを当てにいく役割を管理画面に期待しないでください、ということです。当てにいく仕事は、クリエイティブ側にあります。
まとめ:届け先を決めてから、管理画面を開いてください
最後に要点をまとめます。
- TikTok広告の管理画面で指定できるのは年齢・地域・性別・言語・興味関心・行動・カスタムオーディエンス・類似オーディエンス・デバイス/OS・除外の10項目。2章に一覧、3章に項目別の詳細を置いた
- 弊社が初回に触るのは年齢(明らかに外れる区分を外すだけ)・地域・除外リストの3つだけ。残りは意図的に広く置く
- 配信先が決まる場所は3層ある。①管理画面の枠 ②機械の最適化 ③クリエイティブ。多くの解説記事が扱っているのは①だけで、効き方が大きいのは③
- この記事の芯は、代表が企画の前に必ず確認している7項目の3番目——「誰のレコメンド欄に届くかを決める」。これは管理画面の作業ではなく、企画の作業
- 音源は、管理画面の外にあるターゲティング設定。管理画面では作れない「23歳前後」という狙いを、『毒上司』ではNumber_iの「稲妻」で作った。狙う層とアーティストのファン層を一致させるという選び方
- 代表は企画を前提条件をセットしてから探す。7章のとおり『毒上司』では「4月=新社会人→23歳前後→稲妻」の順で届け先が決まっており、管理画面の年齢区分はそのあと。無名の会社なら、リーチは広告で取り、ホームページや求人媒体へ送る——管理画面はその「リーチを取る」部分を受け持つ
- したがってクリエイティブ側で絞れているなら、管理画面は広くていい。逆にクリエイティブ側で何も決めていないなら、管理画面をどう触っても結果は動かない
- 設定別のCPM・CTR・CVRの比較値、興味関心の推奨個数、カスタム/類似オーディエンスの効果の程度は、この記事に書いていない。弊社が実測を持っていない、または代表への確認が取れていないため。該当箇所ではその都度、代わりに手元で確認できることを添えた
今日からやることは、これだけです。
- いまの広告アカウントの絞り込みを、2章の10項目に沿って書き出す
- 年齢・地域・除外以外を、次のキャンペーンから外す
- 直近の1本について「音源は誰のファン層と重なるか」「出演者は誰のレコメンド欄に出るか」「題材は誰が自分ごと化するか」の3つに答えてみる
- 答えられなければ、管理画面ではなく企画に戻る
4番目が、この記事でいちばんお伝えしたいことです。管理画面の設定は、あとからいくらでも変えられます。変えられないのは、届け先を決めないまま撮ってしまった動画のほうです。
もし、届け先の設計そのものを一緒に決める相手が必要でしたら、弊社にご相談いただくこともできます。ご相談で最初にうかがうのは3点です。①どんな人材が欲しいのか ②どこで自社を知ってもらうのか——ホームページなのか、求人媒体なのか、SNSなのか ③リーチをオーガニックで取るのか、広告で取るのか。この3番目に「広告で取る」と答えた場合に、次に決めるのがこの記事の内容です。なお、この3点は採用を前提にした聞き方です。目的が集客の場合でも、②と③はそのまま使えます。
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この記事を書いた人

豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役
自社TikTokアカウント群を運用し、100万再生を超えた動画は137本、累計4.61億再生(2026年10月13日時点)。会社アカウントの企画を自ら担当。複数のメディアで取り上げられたほか、大学での登壇歴がある。株式会社BEEMはTikTokの運用支援・広告運用を提供している。
出典
- TikTok社発表「TikTok、日本国内のMAUが4,200万を突破」2025年11月27日(自社調べ。TikTokおよびTikTok Liteの月間アクティブユーザー数、重複を除く)。本記事では2章で「絞り込みを広く置いても配信対象が枯れない」という前提の裏づけとして参照しています。2026年7月25日に記事01・05でURLの実在と当該記載を確認済み https://newsroom.tiktok.com/tiktok-mau-4200?lang=ja-JP
- 総務省情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月公表)。TikTok利用率:全年代33.2%/10代65.7%/20代58.7%。本記事では3章の年齢ターゲティングの項で、年齢区分を絞ることの意味を考える際の外部データとして参照しています。2026年7月25日に記事01でURLの実在と当該記載を確認済み https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
公開中の投稿から数え直した実績(2026年10月13日時点)は100万再生超え137本・累計4.61億再生で、これは会社アカウント全体の数字です。本文で使っている136本は記録シートに入っている分で、その合計が2億7,353万回になります。会社アカウント全体(公開中の607本)とは集計の範囲が違うので、数字も一致しません。またエンゲージメント率の算出式はシートに記載がなく、いいね数とコメント数だけでは再現できないため、本文のER値は他社公表値やインサイト画面のERと定義が一致しない可能性があります。
このキーワードに関して、本記事は①ターゲティング設定別のCPM・CTR・CVRの比較値 ②興味関心カテゴリの推奨個数 ③類似オーディエンスの拡張度合いの推奨値 ④カスタム/類似オーディエンスを使った弊社の成果 ⑤オリジナル音源と既存曲の使い分け方針 ⑥7章で触れた採用企画の中身と数字 ⑦弊社の広告運用の料金を書いていません。①③④は弊社が記事に出せる形の実測を持っていないため、②⑤⑥は代表への確認が取れていないためです。該当する項目は2章の一覧表の「弊社の使い方」列と10章に、書けない理由と、代わりに手元で確認できることを個別に記載しています(⑥は7章)。他社記事の一般論を借りて埋めることはしていません。