最終更新日:2026年10月13日
執筆・監修:豊田優人(株式会社BEEM 代表取締役)
- 求人媒体に出しても応募が集まらず、「SNSもやったほうがいいのか」を判断したい中小企業の採用担当者・経営者の方
- SNS採用という言葉は聞くけれど、実際に何をどこまでやるものなのかが分からない方
- 一度アカウントを作って投稿してみたものの、続かずに止まっている方
- 社内で「うちもSNSやろう」と言われて、やるべきかどうかの材料を集めている方
この記事はSNS採用の全体像を1本にまとめた親記事です。なぜ今SNSなのか、主要SNSをどう使い分けるのか、自社で始めるならどの順番なのか、デメリットは何か、失敗する会社は何を外しているのか、費用はどう組み立てるのか、外に出すならどこで判断するのか——ここまでを通しで扱います。各SNSごとの細かい運用手順や費用相場は、それぞれの記事に譲りますので、この記事は「自社はどう動くか」を決めるところまでを担当します。
そして先にお伝えしておくと、この記事の結論は「SNSを始めましょう」ではありません。弊社は自社アカウントで100万再生を超えた動画を137本、累計4.61億再生を出していますが、その経験から言えるのは撮る前に決めることを決めていない会社は、何本撮っても採用につながらないということです。その「決めること」を、この記事で全部お渡しします。
SNS採用とは?——求人媒体との一番の違いは「先に知ってもらう」こと
SNS採用とは、TikTok・Instagram・X・YouTubeといったSNSを使って、自社を知ってもらい、応募につなげる採用の進め方のことです。ソーシャルリクルーティングとも呼ばれます。
ただ、この定義だけだと「求人媒体をSNSに置き換えたもの」に聞こえてしまうので、そこを先に切り分けさせてください。求人媒体は、すでに転職しようと思っている人が来る場所です。だから媒体に載せた瞬間から、応募の可能性がある人の目に触れます。一方SNSは、転職しようと思っていない人にも届いてしまう場所です。ここが決定的に違います。
この違いは、そのまま向き不向きになります。「今すぐ人が欲しい」という状況で、SNSアカウントをゼロから作るのは、正直かなり遠回りです。逆に「毎年◯人採り続けなければいけない」「同じ職種を継続的に採っている」「媒体経由の応募の質が上がらない」——こういう会社にとっては、先に知ってもらっておく仕組みは効いてきます。
混同されやすい4つの言葉を、いったん整理します
SNS採用・採用広報・ダイレクトリクルーティング・リファラル採用は、似ていますが、やっていることもゴールも違います。呼び方の正解を決めたいわけではなく、自社が今どれをやろうとしているのかをはっきりさせるための整理です。
| 言葉 | やっていること | ゴール | この記事での扱い |
|---|---|---|---|
| SNS採用 | SNSで自社を知ってもらい、応募・面談まで持っていく | 採用 | この記事の主題 |
| 採用広報 | 社員インタビューや社内の様子を発信して、会社の中身を伝える | 理解・共感・辞退率の低下 | SNS採用の一部として扱う。媒体はSNSに限らない(関連記事: 採用広報のやり方 ※公開予定) |
| ダイレクトリクルーティング | 候補者を検索して個別にスカウトを送る | 接触 | この記事の担当外。SNSのDMを使う場合も攻め方が別物 |
| リファラル採用 | 社員の紹介で採る | 採用 | この記事の担当外。ただしSNSで会社の中身が伝わっていると、社員が紹介しやすくなる |
この表で言いたいのは、SNS採用と採用広報は重なるけれど同じではないということです。採用広報は「知ってもらったあとに、理解してもらう」仕事です。SNS採用は、その手前の「そもそも知ってもらう」ところから始まります。ここを混ぜたまま始めると、誰も知らない会社が社員インタビューを撮り続ける、という一番きつい状態になります。
SNS採用の使われ方は、大きく3つ
実際にSNSが採用のどこで働くかは、次の3つに分かれます。自社がどれを狙うのかで、撮るものが変わります。この記事では以降、この3つの言葉を何度も使います。
- 1. 知ってもらう(認知)——存在すら知らなかった人に、会社の名前と雰囲気を届ける。フォロワーが増える/再生数が伸びるのはここ
- 2. 信じてもらう(信頼)——名前を知ったあとに「ここは実在する、まともな会社だ」と思ってもらう。ここが抜けると、認知は応募に変わらない
- 3. 応募してもらう(行動)——ホームページや求人媒体へ移動して、実際に応募する。SNSの中だけでは完結しません
多くの会社が力を入れているのは1番だけです。そして1番だけをやっている限り、採用にはつながりません。なぜそう言い切れるのかは、6章で失敗パターンとして具体的に書きます。
SNS採用に効果はあるのか——「20代は入社前に会社のSNSを見ている」という前提から
結論から言うと、効果はあります。ただし「SNSをやれば採用できる」という意味ではありません。正確には、やっていない会社が不利になる場面が増えたという言い方が実態に近いです。
順番に説明します。弊社の代表が、直近1年で起きた変化としてこう言っています。
豊田優人
この2つは、実は同じ現象の裏表です。候補者は企業のSNSを見に来るようになった。でも同時に、SNS上の企業アカウントは増え続けている。つまり「見られる機会は増えたが、見つけてもらう難易度は上がった」——これがいまのSNS採用の前提条件です。
効果の正体は「応募が来ること」ではなく「調べられたときに何かあること」
ここが、SNS採用でいちばん誤解されているところだと思います。
採用担当者の方は、SNSに「応募を直接連れてくる役割」を期待します。求人媒体と同じ物差しで見るので当然です。ところが実際に効いているのは、その手前です。求人票を見た候補者が、会社名で検索して、SNSを見て、応募するかどうかを決めている。この工程が20代を中心に標準になった、という話です。
ここでSNSが何も出てこない会社と、動画がいくつも出てくる会社では、判断が変わります。SNS採用の一次的な効果は、応募の入口を増やすことよりも、応募直前の離脱を減らすことのほうにある——弊社はそう見ています。この見立て自体は本記事の整理であって、代表が数字で証明しているものではありません。ただ、次の数字は事実として持っています。
弊社の実数:100万再生超え137本、指名検索は月4,800
弊社(株式会社BEEM)は、自分たちの会社アカウントでSNSを運用してきた会社です。まず数字を先に出します。
- 100万再生を超えた動画:137本
- 累計再生数:4.61億再生
- 会社アカウントのフォロワー:約47万(代表の個人アカウントは別に12万)
- 指名検索:月4,800
この中で、採用の話として一番見ていただきたいのはいちばん下の指名検索4,800です。再生数やフォロワー数は、正直に言えば見栄えのする数字です。ただ、採用に効くかどうかで言えば、「株式会社BEEM」と会社名で検索している人が月に4,800いるという事実のほうが直接的です。
会社名で検索するのは、その会社をすでに知っていて、もっと知りたいと思った人だけです。ここが増えるということは、応募の手前の母数が増えているということになります。逆に言うと、再生数が伸びているのに指名検索が動いていないなら、動画は見られているけれど、会社としては認識されていないという状態です。これは6章で扱う失敗パターンそのものです。
代表が投稿後に見ている数字は、再生数ではありません
もう1つ、数字の見方の話をさせてください。ここを知っておくと、社内で「再生数が伸びました」という報告が上がってきたときの受け取り方が変わります。
豊田優人
これを採用担当者の立場に翻訳すると、こうなります。何人に表示されたかより、何秒見てもらえたか。10万回表示されて全員が1秒でスクロールした動画と、1万回表示されて最後まで見られた動画では、会社の名前と雰囲気が相手の中に残るのは後者です。4章以降で「どう届くか」を軸に媒体を選んでいくのも、同じ理由からです。この読み替え自体は本記事の整理で、代表が採用の文脈でこう説明しているわけではありません。
なお、ここまでに出した4つの実績数字は、いずれもTikTokを中心とした弊社自身のアカウント運用の実績です。この記事の後半では他のSNSにも触れますが、そちらに弊社の実測はありません。どこまでが自社の数字で、どこからが一般に言われている話なのかは、その都度はっきり書きます。
なぜ今さら?——3年前に効いていたやり方が、そのまま効かなくなっています
「SNS採用なんて、もう遅いのでは」——そう思われるかもしれません。半分正解で、半分間違いです。正確には、遅いのは「やり方」のほうです。
弊社代表が、もう通用しなくなった手法として3つ挙げています。ひとつめが会社アカウントのオーガニック投稿でバズらせて認知を取ること。昔はこれが最も費用対効果の良い認知獲得の手段でした。ふたつめがキャスティングして美女を出す差別化。もう新しくもなく、運用が入っていることも見透かされます。みっつめが既存の動画をもとにした焼き直しの運用です。
大事なのは、その理由です。コンテンツの質が落ちたからではありません。アカウント数・クリエイター数が増え続け、一方でユーザー数は成熟した——という構造の変化が原因だ、というのが代表の見方です。つまり自分たちが下手になったのではなく、椅子の数が変わったということです。この言い方(供給が増えて需要が成熟した、という整理)は本記事のもので、代表がこの言葉で語っているわけではありません。
代表が本気で反対している3つのこと
ここは、この記事でいちばん通説とぶつかる部分です。そのまま載せます。
豊田優人
3つとも、SNS採用を始めようとしている会社が最初に踏む場所です。順番に効いてきます。
ひとつめ。トレンドをアプリの中で探しにいくと、見つけた時点でもう流行の終盤です。でも「世の中の注目」として見れば、4月に新社会人の話題が集まることは、去年の時点で分かっていたことになります。採用の文脈だと、これは相当効きます。3月末から4月にかけて、入社・新人・上司という言葉に世の中の注目が集まるのは毎年確定しているからです。この話は5章で手順に落とします。
ふたつめ。「オーガニックだけで完結する」への反対は、そのまま「無料でやろうとするな」という意味になります。ここを飲めるかどうかで、SNS採用の設計は根本から変わります。費用の話としてどう効いてくるかは7章で扱います。
みっつめ。全員が同じ戦略を取っている、というのは中小企業の採用でも起きています。社員インタビュー、社内ランチ、1日のスケジュール——どの会社のアカウントを見ても同じ企画が並んでいます。同じことをやっている限り、選ばれる理由は生まれません。
ここまでが、Know(SNS採用とは何か・効果はあるのか)への回答です。SNS採用とは、知ってもらう・信じてもらう・応募してもらうの3つをSNSで担う進め方。効果はあるが、それは応募が直接来ることではなく、調べられたときに実体があること。そして3年前の勝ち方はもう再現できない。ここから先は、では自社はどうするか、の話に入ります。
主要SNSの使い分け——「誰のところに届くか」で選んでください
ここからは各SNSの話です。ただ、この章を機能の比較にはしません。フォロワー数の伸ばし方や投稿の最適な長さは、それぞれの記事に譲ります。この章で決めていただきたいのは1つだけ、「自社が採りたい人は、どこにいて、どういう流れでその人の画面に出るか」です。
この順番は、弊社代表が企画を出す前に必ず確認していることの1つと同じです。
豊田優人
媒体選びも、まったく同じ順番でやります。「TikTokは若い人が見ているらしい」から選ぶのではなく、採りたい人の画面に、自社の投稿がどういう経路で出るのかから逆算する。ここが決まると、媒体は自動的に絞られます。
SNSは、届き方が2種類に分かれます。フォローしていない人にも配られる(レコメンド型)か、基本はつながっている人に届く(フォロー型)か。この違いが、採用における役割をほぼ決めています。知名度がない会社ほど前者が要りますし、すでに知られている会社は後者で十分だったりします。
母数の心配は、基本的にしなくて大丈夫です。弊社が数字を持っているTikTokに限って言えば、国内の月間アクティブユーザーは4,200万と発表されています※1。届く場所が足りないのではなく、届け方が決まっていない——本記事はそう整理しています。
| SNS | どう届くか | 採用で担わせる工程(1章の3分類) | 弊社の実測 |
|---|---|---|---|
| TikTok | レコメンド型。フォロー0でも配られる | 知ってもらう(認知)。知名度がない会社が最初に名前を届けるのに向く。ここで採用の可否は決まらないので、送り先を必ず別に用意する | あり。自社アカウントで100万再生超え137本/累計4.61億再生/約47万フォロワー。この記事の一次データはすべてここ(関連記事: TikTok採用のやり方 ※公開予定) |
| フォロー型+レコメンド(リール・発見タブ)の混在 | 信じてもらう(信頼)。会社名で検索して見に来た人の「確認先」として使うのが、採用では素直な置き方。職場の空気・働く人の顔が伝わりやすいと一般に言われる。認知は別の媒体で取っている前提になる | ありません。弊社は採用文脈でのInstagram運用の数字を持っていないため、この行は一般的な使われ方の記載です(関連記事: Instagram採用のやり方 ※公開予定) | |
| X(旧Twitter) | フォロー型+拡散(リポスト) | 信じてもらう(+一部で認知)。経営者・現場社員の発信が本人の名前で残るため、「中の人が実在する」ことの確認に使われやすい。拡散は狙って起こせないので、認知の主役には置きにくい | ありません。上と同じく、一般的な使われ方の記載です(関連記事: X採用のやり方 ※公開予定) |
| YouTube | 検索+レコメンド。長尺が置ける | 信じてもらう(応募の直前)。長い尺で事業や仕事の中身まで説明できるので、応募を迷っている人が最後に見る場所になりやすい。ショートを切り出して他媒体に回す使い方もある | ありません。ショートの切り出し運用については、代表が知名度のある会社向けの選択肢として挙げています(5章) |
この表の右端の列を、わざわざ作った理由をお伝えします。弊社が数字で語れるのはTikTokだけだからです。SNS採用の記事は、どの媒体についても同じ熱量で「弊社の知見では」と書けてしまいますが、それをやると持っていない実績を持っているように見せることになります。ですのでこの記事では、実測のある行とない行を分けました。3列目の「担わせる工程」も、TikTok以外の3行については1章の3分類にどう割り当てるかという本記事の整理で、弊社の実測に基づくものではありません。
もうひとつ、この表に入れなかったものがあります。各SNSを横並びにした利用者数・利用率の比較です。SNSごとの年代別利用率は総務省の調査※2に載っていますが、本記事のために出典まで確認を取ったのはTikTokの3つの数値(全年代33.2%/10代65.7%/20代58.7%)だけです。自社のターゲット年代がどの媒体をどれだけ使っているかを調べるときは、出典※2のPDFを直接ご覧いただくのが確実です。1次資料を1回見ておくと、以降の媒体選びの議論が早くなります。
「どれか1つ」を選ぶ必要はありません
この手の記事は「あなたの会社にはこのSNS」で終わりがちなのですが、実務ではそうなりません。認知を取る媒体と、信頼を担保する媒体は、別でいいからです。
たとえばレコメンド型で名前を届けて、そこから会社名で検索してもらい、ホームページとフォロー型のアカウントで中身を確認してもらう。この形なら、それぞれの媒体に別の仕事をさせられます。1つのSNSに全部やらせようとするのが、いちばん失敗します。これは代表が「TikTok単体で完結させるな」と繰り返し言っていることと同じ話です。
SNS採用の始め方——撮る前に決めることが3つあります
ここからが手順です。ただ、ステップ1は撮影ではありません。カメラを持つ前に決めることがあります。代表の言葉をそのまま置きます。
豊田優人
「再生数は0でよい」という部分に驚かれるかもしれません。ただ、これは2章の話とつながっています。すでに名前を知られている会社にとって、SNSの仕事は「調べに来た人に見せるもの」を置いておくことだからです。誰にも知られていない会社が同じことをやると、置いただけで誰も来ない、という結果になります。同じ動画でも、知名度によって役割がまるで違います。
ステップ1〜3:撮る前に決める3つ
弊社が相談を受けたときに最初に確認するのも、この3つです。順番にも意味があります。
3つとも、撮影の話が1つも出てきません。それでいいんです。この3つが決まっていれば、何を撮るかは自動的に絞られます。逆にここが空欄のまま企画会議を始めると、「とりあえず社員インタビューから」に着地します。3章で書いた「全員が同じ戦略を取っている」は、こうして起きています。
ステップ4:送り先を先に作る
SNSで知ってもらったあと、その人はどこへ行くのか。ここを作ってから投稿を始めてください。
具体的には、会社名で検索されたときに出るホームページの採用ページと、実際に応募できる場所(求人媒体でも自社フォームでも構いません)の2つです。SNSの中で完結させないこと——これが弊社の基本方針です。TikTokで知ってもらい、ホームページを検索してもらい、求人媒体や応募につなげる。この線が引けていないアカウントは、数字が伸びても採用にはつながりません。
ステップ5:最初の1本を撮る
ここまで決まって、ようやく撮影です。ステップ3までの答えによって、撮るものが変わります。
- すでに知名度がある会社——再生数は0でいい。会社の中身が分かる動画を置く。インタビュー形式で構わない。YouTubeで長い動画を作り、切り抜きを短尺に回す形も選択肢
- 無名の会社——オーガニックでリーチを取ろうとしない。リーチは広告で取り、そこからホームページ・求人媒体へ送る。最初の1本は「広告で配ることを前提にした動画」になる
どちらの場合にも共通する「作り方の水準」が、もうひとつあります。代表が直近1年の変化として挙げているものです。2025年3月頃から、作り込みすぎない動画のほうが伸びるようになりました。具体的にはTikTokの完成した動画と、Instagramのストーリーズの中間くらいのリアルな空気感だと言っています。
これは中小企業にとっては追い風です。制作の予算が無いことが、そのまま不利にはならないということだからです。テロップを凝り、BGMを合わせ、カット割りを整えた1本より、社内で撮った少し崩れた1本のほうが、いまの空気には合っています。最初の1本のハードルは、思っているより低いところにあります。
そして金額の話ですが、いくらから始めるかは、ステップ3の答え(オーガニックか広告か)でほぼ決まります。その組み立て方は7章にまとめました。
プラスα:「いつ出すか」は、先に決められます
最後に、この記事で一番先回りできる話を置きます。3章の「トレンドは予測できる」を、採用の年間スケジュールに当てはめる方法です。
採用のコンテンツは、世の中の注目が集まる時期が読めます。4月に新社会人・入社・上司・部下という話題へ注目が集まることは、前年のうちに分かっています。つまり4月に出す動画は、3月のうちに撮り終えておけるということです。世の中の注目が集まってから企画を考え始めると、公開されるのは注目が引いたあとになります。
弊社が「毒上司」というシリーズを始めたのも、この考え方からです。1本目を投稿したのは2025年3月26日——4月に何か仕掛けると先に決めたうえで、その形を探していました。企画そのものの作り方は別の記事に譲りますが(関連記事: TikTok採用のやり方 ※公開予定)、「時期を先に取る」という順番だけは、どの会社でも今日から真似できます。
SNS採用のデメリットと、失敗する会社の共通点
ここまでの手順を読んで「うちでもできそうだ」と思われた方も、いったんこの章を読んでから始めてください。SNS採用には始める前に知っておいたほうがいいデメリットがあり、それとは別に、続けているのに何も起きない会社の共通点があります。順番に書きます。
先に、デメリットを4つ書きます
SNS採用の弱点は、大きく4つです。この4類型は本記事が組んだ整理で、代表がこの分類で語っているわけではありません。ただ、右端の列——5章の「撮る前に決める3つ」を先に決めておくと、そのデメリットが小さくなるかどうか——は、この記事の主張そのものです。
| デメリット | 具体的に何が起きるか | 撮る前の3つを決めると |
|---|---|---|
| 1. 工数が続かない | 最初の2〜3本は勢いで撮れる。止まるのはその後で、企画を出す人が兼任だと止まりやすい。止まったアカウントは、あるだけで「動いていない会社」に見える | 減ります。誰に届けるかが決まっていれば企画の出どころが決まるので、毎回ゼロから考えなくてよくなる(関連記事: SNS採用が続かない会社の直し方 ※公開予定) |
| 2. 成果まで時間がかかる | 求人媒体は掲載した日から応募の可能性があるが、SNSは知ってもらうところから始まる。「今すぐ人が欲しい」とは相性が悪い | 減りません。ここだけは設計では縮まない。だから7章の表では「期限が3ヶ月以内」を別扱いにしています |
| 3. 炎上・批判のリスク | 発信の内容に批判が集まる、退職した人の書き込みが並ぶ、といったことが起きうる。SNSは公開の場なので、社外の目に触れる | 減る方向に働きます。届け先を決めていない発信ほど、狙っていない層に届いて文脈が外れる。誰に向けて話すかが決まれば、話す内容の線引きも決まる |
| 4. 社員が顔を出したがらない | 出演を頼める人がいない。頼んだ人が辞めたあと、その動画をどうするかという問題も残る | 減ります。知名度のある会社なら再生数0でよく、大量に出演する必要がない。無名なら広告で配る前提なので、必要な本数の考え方が変わる |
この4つのうち、2番目(時間がかかる)だけは、設計をどれだけ丁寧にやっても縮みません。SNS採用に向いていない会社があるとしたら、いちばんの理由はここです。1章で「今すぐ人が欲しい状況で、SNSアカウントをゼロから作るのは遠回りだ」と書いたのは、この意味です。
逆に言うと、残り3つは、始める前の決め方でかなり小さくできる種類の問題です。「SNSは炎上が怖い」「うちの社員は顔を出したがらない」——この2つで議論が止まると、そこから先へは進めません。ですがこの2つはやるかやらないかの理由ではなく、設計の条件として扱ったほうが、話が前に進みます。
投稿は続いているのに、何も起きない会社
デメリットとは別に、この記事がいちばん紙幅を割きたいのはこちらです。投稿は続いている、再生数もそこそこ出ている、それなのに応募は1件も増えていない。この状態には、はっきりした共通点があります。代表の言葉から入ります。
豊田優人
原因は、この3つのどれかに寄ります。そしてどれも動画の作り方の問題ではありません。撮る前に決めるはずだったことが、決まっていないだけです。
失敗パターンと、代わりにやること
代表的な形を、対処とセットで並べます。左から2列目の「見分け方」は、自社がそうなっているかどうかを社内で確かめるために本記事が用意した目安で、代表の基準ではありません。
| 失敗パターン | 見分け方 | 何が起きているか | 代わりにやること |
|---|---|---|---|
| 何をしている会社か分からない | 動画を3本見せて、社外の人が事業内容を説明できるか試す | 再生数は伸びるが、会社としては認識されない。指名検索が動かない | プロフィールと固定動画で事業内容を明示する。おもしろさと自己紹介を1本に混ぜない |
| 信頼性を担保するものがない | 「この会社、実在するのかな」と思われる材料しか無い状態 | 認知は取れても、応募の直前で止まる | 経営陣が話す場を作る。下のライブ配信の項を参照 |
| チャネル設計がないまま、SNSだけで完結させようとする | 「SNSから応募が来ない」と言っているが、応募できる場所への導線が無い | 届いた人の行き先が無い。数字はただの数字で終わる | 5章のステップ2と4に戻る。受け皿を先に作る |
| 既存の動画をもとに運用し、同じコンテンツばかり増える | 直近10本の企画を並べて、パターンが3つ以下になっていないか | 市場の変化に対応できていない。自社運用でも運用代行でも起きる | 企画の出どころを、過去の自社動画から世の中の注目へ変える |
| 費用対効果が合わないと判断して、手を出さない | 「うちの業界では無理」で議論が止まっている | 認知・信頼・応募のどの工程を担わせるかを決めないまま、応募数だけで割り算している | 担わせる工程を1つに決めて、その工程の指標で測る(認知なら会社名での検索数)。費用の組み立て方は7章 |
下の2つは、代表が「続かない・伸びない会社の共通点」として挙げているものです。とくに4つめは、自社で運用していても運用代行に出していても同じように起きると言っています。外に出せば解決する話ではない、という意味でもあります。
この4つめについて、代表は直近1年の変化としてもう一段踏み込んだことを言っています。ユーザーが育ってしまい、少しでも見たようなスタイルだと、動画の後の展開を無意識に予測されてスクロールされる。つまり同じ形の動画は、飽きられるのではなく、最後まで見られなくなるということです。2章で書いた総再生時間の話が、ここで効いてきます。同じ企画を続けることのコストは、以前より上がっています。
もうひとつ、外注を検討している方に関係する変化もあります。「運用代行が入っているんだろうな」とステマ的に見る目線のユーザーが増えた、というものです。これは外注が悪いという話ではなく、「運用されている感」が以前より早く見抜かれるようになったという意味です。7章で外注の判断を扱いますが、外に出すかどうかより先に、誰の言葉として発信するのかを決めるほうが効きます。
信頼を担保する方法として、ライブ配信が効きました
2つめの失敗パターン——信頼性を担保するものがない——には、弊社に実際に効いた方法があります。
豊田優人
「コンテンツとのギャップ」というのが、この話の芯だと思っています。おもしろい動画で知ってもらった会社の経営者が、ライブで真面目に事業の話をする。このギャップが、実在する会社なんだという確認になります。編集された動画では、ここまでは担保できません。
ライブ配信は、機材も企画もほぼ不要で、経営者の時間だけで実施できます。撮影本数を増やすより先に、ここを1回やってみるほうが効く会社は多いはずです。
「信頼性が無い」の反対側は、コメント欄に出ます
信頼が担保されている状態が具体的にどう見えるのか、弊社で実際に起きたことを1つ書きます。毒上司シリーズでは、コメント欄がコミュニティになりました。
「うちにもこんなやつがおる」「うちにもこんなやつが来たよ」——自分の職場に置き換える共感のコメントが並び、自分だけが感じていたストレスや違和感が「特別じゃない、他にもいる」と確認できる場になっていました。ストレス発散として機能していた、という言い方を代表はしています。
採用の文脈でこれが何を意味するかというと、会社のアカウントが「会社の宣伝の場所」ではなく「人が集まっている場所」になったということです。何をしている会社か分からないアカウントの、ちょうど反対側にある状態です。動画の下にすでに人がいると、あとから来た人にとっての実在感が変わります。(採用への読み替えは本記事の整理です)
費用の組み立て方と、自社でやるか外に出すかの判断
ここまで読んで、「いくらかかるのか」「うちだけでは無理そうだ」と思われた方に向けた章です。先にお断りしておくと、この章に書いてあるのは代表の基準ではなく、本記事がここまでの内容——チャネル設計・受け皿・企画の出どころ——から組んだ判断の枠組みです。そのつもりでお使いください。
費用は「作る費用」ではなく「届ける費用」で決まります
金額の相場そのものは、この記事の担当ではありません(関連記事: SNS採用の費用と運用代行の相場)。この章に置くのは、自社の場合はどこにお金がかかるのかを決める順番です。ここが決まると、見積もりを取ったときに高いか安いかを自分で判断できるようになります。
①いちばん大きい分かれ目は、広告費が前提になるかどうか。5章の分岐が、そのまま費用の分岐になります。
- すでに知られている会社——リーチを買う必要がない。かかるのは撮影・編集の手間、つまり社内の時間が中心になる。「再生数は0でいい」というのは、費用の面ではこういう意味です
- 無名の会社——リーチは広告で取る前提になる。撮影の費用より先に、配信の費用が要ります。「無料で採用できる」という期待で予算を組むと、3章で代表が反対しているやり方(オーガニックだけで認知を取る)に着地します
つまりSNS採用の費用は、動画を作る費用ではなく、動画を届ける費用で大きく変わります。制作費だけを比べて安いほうを選ぶと、届ける段になって予算が残っていない、ということが起きます。相見積もりを取るときは、「この金額に、届けるためのお金は入っていますか」を必ず聞いてください。
②次に決めるのは、比べる相手です。SNS採用の費用対効果が判断できなくなる原因は、たいてい比較対象を決めていないことにあります。「SNSに月◯万は高い」という感覚は、何と比べての高いなのかが決まっていないと動きません。
本記事のおすすめは、いま出している求人媒体1媒体分の予算と同じ土俵に置くことです。理由は3つあります。
- すでに社内で決裁が通っている金額なので、稟議の物差しがすでにある
- 採用の予算から出す話になるので、広報・マーケの予算との取り合いにならない
- 「1媒体分を止めてSNSに回すのか、それとも追加するのか」という具体的な選択肢の形になる
そのうえで、6章の失敗パターンの5つめ——費用対効果が合わないと判断して手を出さない——を思い出してください。代表が挙げている共通点のひとつです。ここで起きているのは認知・信頼・応募のどの工程を担わせるかを決めないまま、応募数だけで割り算していることです。SNSに認知を担わせるなら、測るのは応募数ではなく、会社名で検索された数のほうです(2章)。工程を決めずに測ると、どんな金額でも「合わない」という結論しか出ません。
自社でやるか、外に出すか
次に、体制の話です。下の表も本記事が組んだ枠組みで、代表の線引きではありません。
| いまの状態 | 見分け方 | おすすめの進め方 |
|---|---|---|
| 撮る前の3つが決まっている | 5章のステップ1〜3に、自社の言葉で答えられる | 自社で始めていい。決まっているなら、あとは続けるだけ。外注は「手が足りない」ときの選択肢 |
| 3つのうち、2つ目(チャネル設計)で止まる | 「SNSで認知を取る」までは言えるが、そこから先の受け皿の話になると止まる | 設計だけ外に出す。撮影を頼む前に、どこで知ってもらいどこへ送るかを一緒に決める相手を探す |
| 一度始めて、続かなかった | 投稿が止まっている。または直近10本の企画が3パターン以下 | 本数を増やす前に企画の出どころを変える。そのまま外注しても、同じコンテンツが増えるだけになりやすい |
| 今すぐ人が欲しい | 採用の期限が3ヶ月以内に切られている | SNSアカウントの新設は間に合わない可能性が高い。広告と求人媒体を優先し、SNSは並行して仕込む |
4行目は、外注する会社にとっては言わないほうが得な話です。それでも書いているのは、期限が切られている採用にアカウント運用を提案されたら、それは提案側の都合だからです。判断の材料として持っておいてください。
外に相談するなら、最初に聞かれることは決まっています
もし外部に相談する場合、まともな相手なら最初に確認してくることがあります。弊社が無料でご相談を受けるときも、最初にうかがうのは次の3点だけです。
- 1. どんな人材が欲しいのか。ここに合わせてコンテンツを組まないと、必ず外します
- 2. どこで自社を知ってもらうのか。ホームページなのか、求人媒体なのか、SNSなのか——どれを前提に組むのか
- 3. リーチをオーガニックで取るのか、広告で取るのか。ここで設計が根本から変わります
お気づきかもしれませんが、5章の「撮る前に決める3つ」と同じです。相談の中身は、自社でやる場合の最初の3ステップとまったく同じもので、それを一緒に決めるだけです。逆に言うと、この3つを聞かずに「まず月◯本撮りましょう」と言ってくる相手は、避けたほうがいいと思います。
SNS採用について、よくある質問
最後に、本文で扱いきれなかった質問に答えます。
解決する部分と、しない部分があります。代表が挙げている「続かない・伸びない会社の共通点」のひとつに、既存の動画をもとに運用するので同じコンテンツばかり増えるというものがあり、これは自社で運用している場合でも、運用代行に出している場合でも起きると言っています。
加えて直近1年の変化として、「運用代行が入っているんだろうな」とステマ的に見る目線のユーザーが増えたとも言っています。外に出すこと自体が悪いのではなく、外に出しても企画の出どころが変わらないなら、結果も変わらないということです。7章の表を先に見てください。
「必須」とまでは言いません。ただ、信頼性を担保する方法として弊社に実際に効いたのは、役員・会社のトップがライブ配信で何を考えているかを話すことでした。編集された動画とのギャップで会社の中身が伝わる、という効き方です。
6章のデメリット4番目に書いたとおり、出演者の確保はSNS採用の弱点のひとつです。だからこそ「全社員に出てもらう」ではなく「経営者が1回話す」から始めるほうが、体制として持ちます。
まとめ:SNS採用は、撮影ではなく設計から始まります
長くなったので、最後は行動に落とします。この記事の主張はひとつだけです。SNS採用の勝負は、カメラを持つ前にほぼ決まっています。撮影の本数を増やす、編集を凝る、投稿時間を変える——どれも、決めるべきことが決まったあとの話です。順番を逆にすると、時間もお金も一番かかる道になります。
今週やることは、4つだけです。どれも撮影ではありません。紙とペンだけで終わります。
- 採りたい人を1文で書く。職種・年代・経験の有無まで入れる。「若い人が欲しい」では足りません
- その人にどこで知ってもらうかを書く。ホームページ・求人媒体・SNSのどれを入口にするのか。ここがチャネル設計です
- 受け皿を確認する。会社名で検索されたときに出るページと、実際に応募できる場所が両方あるか
- オーガニックか広告かを決める。無名なら広告が前提になります。ここで費用の桁が決まります
この4つが埋まってから、初めてカメラを持ってください。埋まっていないまま撮った動画は、何本あっても採用にはつながりません。逆に、埋まっているなら1本目から意味が出ます。5章で書いたとおり、その1本は作り込まなくて大丈夫です。
2番目と4番目で手が止まった方は、そこだけご相談いただくこともできます。冒頭でうかがうのは7章に書いた3点だけで、撮影の本数や契約の話は、そのあとです。
関連記事(この記事は親記事です。個別のテーマはそれぞれの記事で扱います)
- TikTok採用のやり方|レコメンド型で名前を届ける(企画の作り方・毒上司シリーズの設計 ※公開予定)
- Instagram採用のやり方|職場の空気をどう伝えるか(※公開予定)
- X採用のやり方|経営者と現場の発信をどう設計するか(※公開予定)
- 採用広報のやり方|知ってもらったあとに何を伝えるか(※公開予定)
- SNS採用の費用と運用代行の相場(予算の考え方・外注先の選び方)
- SNS採用が続かない会社の直し方(企画の出どころの変え方 ※公開予定)
関連記事
この記事を書いた人

豊田優人(とよだ・ゆうと)|株式会社BEEM 代表取締役
自社のSNSアカウント群を運用し、100万再生を超えた動画は137本、累計4.61億再生。会社アカウントのフォロワーは約47万(代表個人のアカウントは12万)、指名検索は月4,800。複数のメディアで取り上げられたほか、大学での登壇歴がある。株式会社BEEMは、企業のSNS運用支援・採用支援を提供している。
出典
- TikTok社発表「TikTok、日本国内のMAUが4,200万を突破」2025年11月27日(自社調べ。TikTokおよびTikTok Liteの月間アクティブユーザー数、重複を除く)。2026年7月25日に記事01・05でURLの実在と当該記載を確認済み https://newsroom.tiktok.com/tiktok-mau-4200?lang=ja-JP
- 総務省情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月公表)。TikTok利用率:全年代33.2%/10代65.7%/20代58.7%。本記事では4章で、自社のターゲット年代を調べるための一次資料として参照先を案内しています。2026年7月25日に記事01でURLの実在と当該記載を確認済み。なお令和7年度版が令和8年6月26日に公表されているため、公開前に新年度の数値を確認すること https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
また、本記事の一次データはすべてTikTokを中心とした弊社自身の運用から出たものです。4章のInstagram・X・YouTubeの行に、弊社の実測はありません。その旨は表の右端の列に明記しています。
そのうえで、次の6つは読者が判断できるように本記事が組んだ枠組みで、代表がこの言葉で語っているわけではありません。①3章の「供給が増えて需要が成熟した」という言い方 ②4章の比較表の列の立て方とTikTok以外の3行の役割 ③6章のデメリット4類型 ④6章の失敗パターン表の「見分け方」列 ⑤7章の費用の判断の枠組み ⑥7章の外注判断チャートと9章の「今週やる4つ」。該当箇所の本文でも、その都度開示しています。
このキーワードに関して、本記事は①効果が出るまでの期間の目安 ②SNS採用の費用相場・弊社の料金・広告費の下限 ③採用実績の人数 ④自社運用と外注の線引きについての代表としての基準 ⑤弊社自身の炎上・批判の経験 ⑥各SNSの利用率の媒体別数値を書いていません。①②③は弊社が記事に出せる形の実測を持っていないため、④⑤は代表への確認が取れていないため、⑥は本記事のために出典確認を取っていないためです。他社記事の一般論を借りて埋めることはしていません。